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「……ここは……バスの中……?」


ぼんやりと周りを見る。

少し、眠ってしまっていたみたい。

リュックを膝の上に乗せ、定期券を手に持つ。

駅に着いた。

バスを降り、坂道をのぼる。

少し涼しくなっては来たけど、まだちょっと暑さが残るな……

どうして坂の上にバス停を置いてくれなかったんだろう。

なんて考えながら歩く。


「先生、おはよう!」

「ああ、おはようございます」


すれ違う生徒へいつも通り挨拶をする。


職員室へ入り、自分の席へ座る。

今日は何かあったっけ。ああそうだ、確かホームルームでアンケートをお願いされていたんだった。あとは……

ふと机を見ると、ある程度まとめられてはいるが、書類であふれている。


「はあ……」


また時間を見つけて整理しなければ。でも今日は無理だな。

……いったいいつになることやら。


時間になり、職員朝礼が始まる。


「……じゃあ篠山先生、お願いね」

「はい。わかりました」


先日の件で何人か残して生徒指導しなければいけない。

……はあ、生徒指導、か。苦手なんだけどな。


ホームルーム開始のチャイムが鳴る前に急いで自分の教室へ向かう。


「もうすぐチャイムが鳴るよ。はい、席に座って」


ぱらぱらと席に戻り始める生徒たち。


キーンコーンカーンコーン……


なんだろう。

この光景を知っている。

当たり前だ。毎日見ている教室なのだから。

いつものことだ。


授業の始まりを告げるチャイムの音。

少し埃っぽい空気。

ずらりと並ぶ机。

そこに座る生徒たち。

教卓には私の書いた、伝えることをまとめたメモ。


いつも通り。変わらない。

そのはずなのに、なにか……


「先生?これ……」

「え、あ、うん。持ってきてくれたんだね。ありがとう」


はっとしてプリントを受け取る。

その子は最近休みがちだった女子生徒だ。

クラスのある……問題行動をよく起こす男子生徒にからかわれて学校に行きづらいとか。


教室を見渡す。

……一人足りない。

そういえば、その男子生徒の姿が無い……

ホームルームを終え、確認すると、今日は体調不良で休みだそうだ。

…………


「……ほんとに、自分が嫌になる」


少し、安心してしまった。

自己嫌悪で苦しくなる。自分のクラスの生徒をうまく導けないどころか、来ていないことに少しでも良かったと思う自分がいる。

そんな自分に耐えられない。

先生として相応しくない。人間として最低だ。

足元が崩れていくような感覚。どうすれば良いのかわからない。

私は……どうしていけば……?



sideアークマテリアル


「篠山桃さん。探索者名、セン。ですね。今スマホの見つかった所の周辺を調べています」

「ありがとうございます。なにかこちらから協力できることがあれば、是非おっしゃってください」

「ええ。ご協力感謝いたします。今のところですが、やはり篠山さんは何者かに連れ去られた可能性が高いですね」

「そうですか……」

「探索者の皆さんにも協力をお願いする可能性があります」


レオ達のパーティは全員C以上、レオはBランクだ。

国の機関への協力が通ることがある。


「恐らく、完全に一人のところを狙われたんだろうな……」

「じゃあやっぱり社長の複数人行動の命令は間違ってなかったんだ」

「しかしプライベートを狙われるとは。センのことを調べられていたんだろう」

「やはりセンさんの弱点を狙われたんでしょうかぁ……」


警察はセンのスマホがあった場所を調べている。

どうやら何かしらの戦闘の跡が発見されているみたいだ。


「……もどかしいな。俺たちは何もできない」

「……」

「セン……無事だよね……?モモも、大丈夫だよね……?」

「そう、祈るしかありませんね……」


ただ時間が過ぎていく。

アークマテリアルの誰もが、二人の無事を祈っていた。


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