行方
sideアークマテリアル
「おはよー!」
「おはようございますぅ」
「おはよう」
「おう、来たか。おはよう」
会社にミナの元気な声が響き渡る。
「あれ、センまだなんだ。」
きょろきょろとあたりを見渡し、まだ来ていない人物を探す。
「レオ、時間は伝えているよね?」
「ああ。返事は無かったが既読はついている」
「ふぅん、ギリギリになるなんて珍しいねー」
「そうですねぇ。いつも時間には余裕を持って行動する方ですのに」
いつもの様子を見るとセンは案外、時間はきっちり守る方なのだ。
もうすぐ約束の時間が来る。
「寝坊かな?前も一回あったよね」
「ああ、センが倒れた日の……」
「ありましたねぇ」
「休みの連絡とかも無いよな?」
「あたし、電話するね」
しばらく待ってみるがセンは一向に来ない。それどころか会社への連絡すらない。
「うーん、何回かかけてるけど……出ない」
「体調不良でしょうか……」
徐々に皆の心へ不安が募る。
「もっかいかけてみる。…………あ、繋がった!」
「え、マジか」
身を寄せて紡がれる言葉を待つ。
「〇〇警察署の〇〇です。恐れ入りますが、どちら様でしょうか?」
思わず目を合わせる。
「あ、はい。会社の同僚のミナっていいます……あの、どうして警察が……?」
「ありがとうございます。実はこの携帯電話が今朝届けられまして……」
センのスマホが警察に?
ますます不安感を募らせ、やりとりをする。
「おい、社長呼んできた。ミナ、変われ」
「あ、うん」
「借りるぞ。あ、お電話変わりました、株式会社アークマテリアルの代表取締役、酒井と申します……」
センのことを伝え、ついでに警察に通報をする。
まさか、もしかして。本当に失踪事件が?
言葉には出さないが、それぞれの心には紛れもなくその言葉が浮かんでいた。
「で、でも……あのセンだもん!あんなに強いんだよ!?」
「でもセンは無敵じゃない。それはここ数日で十分わかっただろう?」
「選手権で有名になったからね。何かしらターゲットにされた可能性もある」
「私達にできることは無いのでしょうか……」
社長が電話を終え、こちらに向く。
「皆、今日はいったん待機だ。会社にいろ。警察が来る」
社長の指示でここ数日のセンの様子や変わったことなど、洗い出して相談する。
しかし思い当たる異変は、本人ですら自覚していないことばかりだった。
「そういえば、昨日の夜の連絡はセンの既読がついているんだよね?」
「ああ。少なくともその時間までは大丈夫だったはずだ」
悩んでいても状況は変わらない。
ただただ時間が過ぎていくのを悔しく思う面々であった。
sideセン
目を覚ます。
頭の中に靄が残る。
顔を動かすと、飾り気のない白い部屋が目に入る。目の前には同じく白い扉があった。
視線を下げると、自分の手足が椅子に拘束されている。頑丈そうな金属でがっちりと固められていた。
意識を失う前はジャージにTシャツという適当な部屋着だったが、今は真っ白な実験着のようなものを着せられている。
誘拐、か。
失踪事件……
なんでまた俺なんだ?
なぜ高ランクの探索者ばかりを狙う?
ガチャリ
目の前の扉が開く。
出てきたのは、俺を襲ったのと同じ白装束の人物。顔に仮面をつけており、表情は窺えない。
「目覚めましたか、神の子よ」
「……お前は、なんだ」
「ええ、いろいろと疑問に思うこともあるでしょう。我々は真導の会。あなた様は神として生まれ変わるのです」
「宗教か。……生まれ変わる?」
「その通り、あなた様は神の子に相応しい。とても強い器でいらっしゃる」
「わけがわからん」
フフフフフ、と笑う仮面の人物。
よく分からないが、妙なことに巻き込まれたみたいだ。
「俺の前にも数人、誘拐しただろう」
「ああ……あの者たちは、結局、神の器として相応しくなかった。ただそれだけのことですよ。あなた様が気になさることではありません」
「……殺したのか」
「いえいえ、滅相もありません。……やはりあなた様は良い。しかし……」
「……」
「より神の子として相応しくなっていただきます。できる限り適応率を上げなければ……」
こちらの話を聞いているのか聞いていないのか、そう言い残して扉から出て行く。
それと同時に2人の白装束が入ってくる。先ほどとは柄の違う仮面をつけている。
「始めるぞ」
「ああ」
二人が近づいてくる。
嫌な予感がした。
「……何を――ガッ……!」
1人がセンに殴り掛かる。手足を拘束され、抵抗もできずにまともにくらう。
すかさずもう一人が回復魔法を掛け、傷はすぐさま治っていく。
繰り返し、その作業が続く。
監視カメラからセンをいたぶる様子を見ていた、先ほどの仮面の人物は楽しげに笑う。
「さあ、もうすぐです、神よ。もうすぐ、あなた様の器が完成する……!」




