帰還
――――――
ゆっくりと、意識が浮上する。
……頭が回らない。
顔を少し上げ、周囲の様子を確認する。
少し暗い、岩壁が続く空間。
ひんやりと湿った空気がセンの肌を撫でる。
「……ああ、ダンジョンか」
ぼんやりした顔で息をつく。
確か、会社のダンジョンに行って……
ああそうだ。
セーフゾーンで少し休むつもりだった。
壁にもたれて座り、そのまま眠ってしまったみたいだ。
抱えるように持っていた鎌を握りなおし、もう一方の手でスマホを確認する。
「もうそろそろ時間だな。帰るか」
時計を見る。
いつもなら丁度引き返している時間だった。
面倒そうに体を起こし、そばに置いていた鞄を背負う。
進むたびにコツ、コツと反響する足音。
(ダンジョンは、静かでいいな)
選手権では常に人々と歓声に包まれていた。
あの経験から改めて、自分には一人でダンジョンに潜っているのが合っていると思う。
途中、出合う魔物を倒しながら地上へと戻っていく。
「あ、センさん。おかえりなさい。ちょっと遅かったっすね」
「ああ、ただいま」
会社に着き、すれ違う社員と挨拶をしていく。
鞄から素材を取り出しつつ査定所へ足を向ける。
「……でさ、帰ってこないんだって!」
「え、失踪ってことですか……?Bランクの探索者が?」
「そうなのよぉ、怖くない!?」
カウンターへ素材を置く。
「今いいか」
なにやら世間話をしている査定所の職員達に話しかける。
「あっ、すみません。素材、お預かりしますね」
「あらセンくん。ゴメンね、おしゃべり盛り上がっちゃって……」
「いや、いい」
今日は寝てしまっていた分少し素材が少なかったな。
まあ、明日取り返せる範囲だろう。
「……はい、査定完了しました。今日はいつもより量が控えめでしたね」
「ん、まあ、そんなこともある」
「むしろいつもが多いくらいなんですけれどね……」
そんなやりとりをしてから退勤ボタンを押して会社を出る。
ローブと鎌は鞄に入れ、上着を着た状態だ。
数駅電車に揺られながら目を閉じて椅子に身を任せる。
数か月前、こうなるとは全く予想つかなかったな。
まさか探索者として会社に雇われの身となるなんて。
目を開き、窓の外をぼんやり眺める。
徐々に日が傾き、空はオレンジ色に染まっていった。




