疑問
ダンジョンから帰還し、素材を査定に回す。
休憩室の方を見ると、レオ達のパーティはすでに帰ってきているようだ。
「セン、おかえり。ちょっといいかい?」
休憩室を離れようとしたところでノアが声を掛けてくる。
「なんだ」
「あのさ、選手権の決勝戦のことなんだけれど……」
そう言ってスマホの画面を見せてくる。選手権の配信アーカイブだ。
「これ。ここのシーンで君の鎌と勇者の剣がぶつかっただろう?」
「ああ。障壁が壊れたやつか」
配信にも障壁が徐々にひび割れる様子がばっちりと映っていた。
「この瞬間、君は魔人化して武器を振っていた。そして相手も魔人化していて、さらに剣には魔力が沢山籠った状態だった」
「そうだな」
「僕は勇者の方が勝つと予想したんだ。センは魔力を使っていなかったし、パワー負けすると思って」
「ふむ」
確かにそういわれてみればそうかもしれない。しかし実際は違った。
俺の鎌とカナタの剣は拮抗していた。
「それに、ああ、ルナ。丁度よかった。選手権のあの件なんだけど」
「あらぁ?何か話していたんですねぇ」
「ルナとミナ、何か言っていただろう?モモの歌がどうとか」
「ああ、そのことですかぁ」
ルナはえーと、と話し始めた。
「以前ミナとモモさんでカラオケに行ったでしょう?そこでモモさんが歌った時、空気が震えて、それになんだか強いイメージのようなものが浮かんだんです。それがとても泣けたのですけれど……」
「ああ、あったな」
「センさんが大会で鎌を振った時、同じような感覚があったんです。空気が震え、強いイメージが……すこし怖かったですけれど」
桃が歌った時と同じ……【響鳴】か?だが……
「恐らく桃の【響鳴】のスキルだな」
「【響鳴】というのか。聞いたことはないが……だが少しわかったかもしれない」
「なんだ?」
「まず、あの時君はモモではなくセンだった。それなのに【響鳴】らしき現象が起きている」
そう、俺は戦闘で一切桃に変わっていない。それにあのスキルは感情を伝えやすくする程度のものだと認識している。
「仮説としては、あの瞬間2つのことが起こったんだ」
「ん、続けろ」
「一つ。センとモモの魂が同化した。」
「同化、ですかぁ?」
「うん。調べたんだけど、分化した魂は一時的になら再び一つになることもあるらしい」
そうなのか、知らなかった。
「そしてもう一つ。同化した結果、センが【響鳴】を使った。それも魔人化に」
「魔人化に……なるほどぉ」
「【響鳴】にそんな大層なことできるのか?」
「僕が思うに、【響鳴】には感情を伝えることに加え、増幅する効果もあるんじゃないかな。勇者と拮抗した事実からのこじつけかもしれないけれどね」
増幅か。考えたことも無かったな。
しかしこれが本当なら検証することもできない。魂の同化のさせ方なんて分からないし。
あの時はたまたま、運が良かったんだろう。
「……だから、あれほどのエネルギーを生み出した。魔人化の力を増幅させたから」
「うぅん、それが本当なら、物凄いことが起こってたんですねぇ」
「……ああ、なるほどな」
あまり覚えちゃいないが……
あの瞬間、確かに俺と桃は少し、怒っていたかもしれない。
その感情の重なりが魂を同化させたのか?
「と、いうのが僕の意見だ。どう思う?もちろん証拠はないんだけど……」
「いや、よく分かった。少し納得した」
「さすがノア。ずっと考えていましたからねぇ」
もしあの時の力が制御でき、いつでも出せたら。
まあ、考えても仕方ないか。
どうせ同じことが起こる保証もない。
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