vs勇者
会場の整備が終わる。
ぱらぱらと客も席へ座り始めた。
「ね、体調大丈夫そう?」
「大丈夫」
「こいつの大丈夫はいまいち信用ならねぇけどな」
「無理せず、頑張ってくださいねぇ」
「相手は……あの勇者か。レオを倒した……」
席を立ち、鎌を担ぐ。
「セン」
「ん」
「行ってこい」
「……ああ」
パシ、と軽く背を叩く社長。
緊張はしていない。体調も恐らく大丈夫。いつも通りただ目の前の相手を倒すだけ。
「行ってくる」
スタッフがあわただしく動く袖を通り、勇者の待つ舞台へ足を進める。
熱気立った会場。興奮は最高潮に達している。
照明がいつもよりまぶしい気がする。
「やあ、また会ったね、死神のセン」
正面を向き、じっとカナタを見る。
緊張など感じさせない堂々としたふるまいだ。
「僕の意思は変わらない。そして君と戦って判断する」
「……そうか」
「全力で、戦おうじゃないか」
そう言って剣を構える。
『さあ、両者とも準備が整ったようです!全国探索者選手権最後の戦い、優勝は一体どちらだ!?』
鎌を持ち直す。意識を集中させる。
『では、決勝戦、開始ィ!!!』
ブザーの音とともに両者飛び出す。
ガキィン、と鎌と剣がぶつかり合い火花が散る。
センが背後へ跳ぶもそれに対応して防ぐカナタ。
(攻撃の一つ一つが重い……当たったらただじゃすまなそうだ)
カナタが剣を振るう。それを最小限の動きで避けていくセン。
『互角の戦いです!どちらの攻撃も相手に届きません!』
(不毛だな。動きを読まれている)
一度距離を取り、考える。
やりづらい。
「君、本気じゃないだろう」
「……」
「これ以上は無駄だ、出し渋る必要は無い。全力で、戦おう。」
カナタは剣を突き立て、深呼吸をする。
「……聖獣、力を貸してくれ」
sideアークマテリアル
「なんか、まぶしいよ!?」
「なんだ、この威圧感は」
「あら、見間違いかしらぁ。髪と目の色が……」
「これは……まさか魔人化?」
舞台にいるカナタからは威圧感、恐怖ではなく、むしろ神々しさまで感じるほどの圧が出ていた。
髪と瞳を真っ白に変化させ、静かにセンへ剣を向ける。
『出たー!勇者が勇者と言われる所以、聖獣の魔人化だー!!!これにはセン選手、どう対応するか!?』
「魔人化……噂には聞いたことがあったが。これほどのものとは」
「あれ、社長も知ってたの?」
「ああ、噂程度にな。ランク上位の者は持っていることが多いらしいが」
唸る酒井。これはセンが本気を出してぶつかってしまうとどうなるか。
大丈夫なのか、セン?




