決勝 二戦目
次の日。控室。
相変わらず緊迫した空気感の中、中継のテレビ映像をぼーっと見る。
あ、次の人、昨日話しかけてきたおっさん。
ゲンとか言ってたか?
『ゲン選手、一切攻撃を通しません!まさに鉄壁、さすが城塞のゲンだー!』
「ふうん」
大きな盾を軽そうに振るい、安定した動きで攻撃を受け止めていく。
まるで生き物のように盾を扱う姿には熟練の戦士の風格があった。
時折混ざるカウンターも的確だ。相手を消耗させアドバンテージを取っていく。
『勝者、ゲン選手です!』
結局そのままゲンが押し切る形で試合は終了した。
「次、センさん?出番です」
そして俺の番。スタッフに連れられ廊下を歩いていると、向こうから来る試合を終えたばかりのゲンと目が合う。
「よう、また会ったな!お前も、頑張れよ!」
「ああ」
肩を叩き去って行くゲン。
……次は決勝二戦目。敵も弱くはないだろう。
「では中央までお進みください」
昨日と同じように所定の位置へ行く。今度の相手は……初日に見た水使いの魔法使いだ。ミナは水牢の魔女とか言ってたっけ。
彼女は客席やカメラに向かってアピールをしている。余裕のある表情だ。
『水牢の魔女リリナvs死神のセン、一体勝つのはどっちなんだ!?それでは、試合開始!』
ブザーが響く。
魔女か。昨日の風の魔法使いを思い出す。このタイプはできるだけ早く決着をつけるに限る。
警戒をしつつリリナへ近づく。
途端、違和感を感じる。咄嗟に後ろへ飛びのくと、目の前の地面から水弾が飛び出る。
「あら、勘が鋭いのね。残念。でもこれはどうかしら?」
「っ、これはっ」
リリナの持っているステッキがセンの方を向く。
細かい水の飛沫が飛んでくる。それも物凄い水圧付きで。
あのバトルロワイヤルで敵を場外に吹き飛ばしていたやつか……!
鎌を地面に叩きつけるようにして耐える。
ガガガガガッと音を立てセンの体は止まる。
「高圧洗浄機かよ……っ、今度は何だ」
周囲の様子がおかしい。大きな魔力反応がある。
なるほど、俺をこのトラップの範囲に入れるための攻撃か。
間に合わない。仕方ない、受けて立とう。
そこに現れたのは大量の水。センは大きな水の塊の中にいた。
(窒息死でも狙っているのか?いや、これは……)
『出たー!リリナ選手、出ました。水牢です!さあセン選手は完全に水へ閉じ込められてしまいました!』
(……徐々に圧が掛かっている。水圧でぺしゃんこにするつもりか)
空気も無い。それにだんだん動きづらくなってきている。
(一か八か、だな)
水の中で鎌を構える。
「ふふ、水は斬れないわよ?」
(それは、やってみなければわからない)
最大まで体をひねる。一瞬だけ、センの瞳孔が赤く光る。
(さあ、斬れなきゃ終わりだ。禍津蜘蛛!)
鎌を全力で薙ぐ。
「な……!」
びりびりと音が鳴る。観客席の障壁が震えて軋む。
『なんとセン選手、水を斬ったあ!?すごい威力です!さらに、リリナ選手へ詰め寄る!』
水牢が割れる。
リリナは後退し、再度詠唱を始める。
しかし。
目の前にはもうセンがいる。
「こ、降参よ……」
鎌を首元へ突きつけ、試合は終了する。
「ふう……」
服がびしゃびしゃだ。靴の中に水が入って気持ちが悪い。
深呼吸をして袖へ戻る。
「障壁、破れた?」
「まだ残ってるし傷は一部だけだ。すぐ戻る」
「補修急げ!」
舞台袖はあわただしく動いていた。
全力で放った一撃。観客席まで届かなくてよかった。
少し安心だ。
靴を脱いでひっくり返す。全身ずぶぬれの状態にため息をつく。
「あ、ねえ。その水は魔力で出したものだからそのうち消えるわ。安心して」
「ん、そうか。助かる」
対戦相手のリリナが声を掛けてくる。
「水牢を破られたのは初めてよ。あんな攻撃されるなんて」
「……運が良かっただけだ」
そう、と返し、リリナは控室へ戻っていく。
確か今日はこれで終わりのはず。観客席で見物でもするか。
衣服から水が無くなるのを待ちながら考える。
一瞬だけ本気を出した。さすがに手を抜いた状態で勝てるとは思っていないが、どこまで全力を出すか迷いどころだな。
観客席へ戻ると、丁度レオが戦っていた。
相手は……白い鎧の青年。見覚えがある。確か勇者とか言われていた。
『カナタ選手、攻める、攻める!レオ選手は防御で手一杯か!?』
珍しくレオが押されている。
見たところカナタはかなり正統派の剣士のようだ。しかしレオが防戦一方になるほどの力の持ち主とは。
『あーっと、ここで勝負が決まりました!勝利したのは勇者カナタだー!』
二人は握手をして舞台を降りていく。
会場の盛り上がりがいつもより激しい気がする。有名人なのか?
「はあー、負けちまった」
「ナイスファイト、レオ!すごかったよ!」
皆がレオの健闘を称えているのを尻目に考える。
それにしてもあの強さ。今後もしかしたら戦うことになるかもな。やっかいそうだ。




