決勝 一戦目
場所は闘技場の控室。
緊迫した空気が流れる。選手たちは体をほぐしたり素振りをするなどして戦いに備えている。
中継テレビからも観客席の白熱した様子が伺える。
椅子に座りぼーっと周囲の様子を眺めていると、1人の戦士らしき姿の男が近づいてきた。
「よう、あんちゃん。あんた、死神だろ?昨日の試合見てたぜ。すごかったな!」
ニカッと歯を見せて笑う男。
隣へ座ったかと思うとバンバンと肩を叩き、昨日の試合について語る。
「いやぁ、否定的な意見を出すやつもいるらしいが、俺はあの戦いにシビレたね。やろうと思ってできるもんじゃあない!」
「はあ、どうも」
がっはっは、と豪快に笑う男を見る。
使い込まれた鎧に大きな盾。レオと同じ防御型の戦士なのだろう。戦うなら手ごわそうだ。
「ゲンさん、次出番ですのでこちらへお越しください」
「おう、もうそんな時間か。じゃ、お互い頑張ろうぜ!」
会場スタッフに呼ばれ、その男、ゲンは控室を出て行く。
その後も一人、また一人と控室から出て行き、ついに俺の番が来た。
スタッフの後を追い、舞台を見る。
第一ラウンドとは違い、場外は無いそうだ。他のルールは地区予選や県大会と同じで負けを認めさせるか戦闘不能にしたら勝ち。
前の試合後の整備が終わり、舞台へ促される。
視線が集中するのが分かる。
昨日よりも観客が多い。それもそうか、一番の見どころだろうしな。
周囲の確認もそこそこに所定の位置へつき、前を見る。
こいつは……見たところ魔法使いのようだが。
『両者、準備は良いですね?では……試合、開始!』
ブザーの音と共に始まる。
ふむ、思った通り魔法使いっぽいな、詠唱をしている。ならばそれより先に、ッ!
一歩を踏み出した所に風の矢が刺さる。
危なかった。とっさに避けられたが……何より早い!
詠唱が完成するまでの時間が短い。それに連射してくる。
『風の魔法でしょうか、物凄いスピードでセン選手を襲います!しかしセン選手には当たっていないようです!』
スピード勝負ってところか。ならばその速さを上回るまでだ。全部避けてたどり着く。
『セン選手、リューイ選手の元へ近づきます!これは速い、飛んでくる魔法を間一髪でよけ続けて進んでいる!』
相手が焦っているのが分かる。けれど遅い。
充分近づけた。鎌を横へ振る。
「こっ、降参です!」
刃が首を通る直前。震えた声で宣言する。
ブーーーッ
『リューイ選手、負けを認めました!勝者、セン選手!』
わあああああ……!
突然上がる歓声に目を瞬かせる。
鎌を下ろし、目の前でへたり込む相手、リューイへ手を出す。
「おい、大丈夫か」
「う、うん。あ、ありがとう……」
震えている手を引いて立たせる。……まさか泣きそうになっている?
緊張していたのかもしれない。まあこの大舞台だから無理もないか。
杖をにぎりしめて下をむいて歩く彼を見てそんなことを考える。
「勝利おめでとうございます。本日は一戦だけとなりますので、お席へお戻りください」
「わかった」
スタッフの案内で席へ向かう。
まあ今回は相手が良かったのかもな。しかしあそこまで速い魔法があるとは。ノアが研究しそうなやつだった。
「セン、おかー!相手ビビらせてんね!」
「早速やってるな。おめでとう」
「まあまあ、とにかくおめでとうございます」
「よくあの魔法を避けられたね。風の魔法なんて見えづらいことで有名なのに」
「ん、まあな」
改めて思い出す。そういえば魔力の流れや風の流れを読めるのは禍津蜘蛛の力を得てからだったか。
しかしビビらせるとはなんだ。そんなことはしていないはずだが。
まあいい。後は適当に観戦して次に備えるか。




