全国大会 初日
探索者協会本部に隣接する大きなスタジアム。通称闘技場。
ざわざわと話し声がひっきりなしにささやかれるその観客席に俺たちはいた。
「全国大会の具体的なルールってわかんないの?」
「ああ、公平性を期すために直前まで分からない。前回はたしか即興のチーム戦だったか」
「チーム戦だとセンが少し不利かもね」
第一ラウンドでおよそ500人の選手が集まり、そこから数を削る。第二ラウンドはいつもトーナメントでタイマンをするらしい。
「やっぱSランクの人とかくるのかなあ!」
「いや、基本Sランク、あと一部のAランクは出ないらしいぞ。大会で探索者が減っているあいだの警備として忙しくしているそうだ」
「えー、じゃあツバキ様はいないのかー」
「月華のツバキか?」
「レオ知ってるの!?」
「そりゃ知ってるさ。探索者で知らないやつはいない。まあ大会にはいないだろうな」
レオとミナが大会の話で盛り上がる。
ん、もうそろそろ時間だ。
中央にホログラムが投影される。
高らかなファンファーレと共に協会のロゴがくるくると回っている。
それを見て観客席が徐々に静まり返っていく。
協会の制服に身を包んだ職員が映し出されて宣言する。
『大変長らくお待たせいたしました。これより、全国探索者選手権、全国大会を開催いたします!』
熱狂。熱い雄たけびが周囲から聞こえてくる。
耳が痛くなるほどだ。席の最前列ではテレビカメラがせわしなく動いている。
『……それでは早速、第一ラウンドのルール説明といたします。今回の形式は、約50人で一ブロックの計10ブロックに分かれていただき、それぞれのブロックでのバトルロワイヤルとなります。勝ち残った3名、合計30人で第二ラウンドのトーナメントへ進んでいただきます』
そういえば受付をした時にアルファベットの書かれたカードを渡されたな。これが何ブロックにあたるかってことなのだろう。
俺はHでレオはBだったか。
「バトルロワイヤルか……乱戦になるな」
「全部倒せばいいんだろ」
「バカ、適当に相手してたら漁夫の利を狙うやつらの格好の餌食だぞ」
「そうか」
そのまま注意事項や禁則項目を聞き、Aブロックの選手は呼ばれていった。
今日はEブロックまでを行うそうだ。俺の番は明日の3ブロック目だな。
『……さて、準備が整いました。記念すべき全国大会の1戦目、開幕です!』
ビー、と音が鳴り、各々距離を取っていた選手たちがぶつかり合う。
お、派手に魔法で攻撃しているやつもいるな。
『さあ、始まりました。Aブロックの戦いです。あ、早速炎の魔法を放ち周りに人を寄せ付けない!素晴らしい連射速度だ!おっと、改めて説明しますが、観客席には防護バリアを何重にも張ってあるので危害が及ぶことはありませんよ!』
魔法が炸裂するたびに空気が震える。炎を撒いて優勢だった魔法使いだったが、後方から飛来した矢が肩を貫いた。実況も盛り上がっている。なるほど、これが選手権か。
「見ているだけで痛いな……お前らの感覚としてはなんてことないんだろうが」
「まあ怪我は治りますしねぇ」
「あの魔法使い、やるな……あの反応速度は見習う所がある」
実際に一般人にはあまり好んで選手権は見ないという層もあるらしい。
こういうのを見て学生が探索者に憧れたりなんかもするのだろうか。
「よーし、じゃ、俺は次の試合に向けて体をあっためてくる」
「いってらっしゃーい」
「頑張ってくださいねぇ」
「レオの鉄壁ならいけるさ」
穏やかに手を上げ去っていくレオ。
緊張は見られない。それに絶対に勝ち進むという思いは誰よりも強そうだ。
『おっと、ここで背後から奇襲か!?なんと〇〇選手、倒れてしまう!これは予想外だ!……そしてここでストップ!3人の決勝進出者が決まりました!』
割れるような歓声、鳴りやまない拍手。
どうやらAブロックの試合が終わったようだな。次はレオの番だ。
十数分ほど会場のセッティングをしたあと、ついにレオ達が入場してくる。
「あ!あの人、水牢の魔女じゃない?配信で見たことある!」
「あら、本当ですねぇ」
「ああ、あのパワータイプの魔法を使う配信者か」
舞台を見ると、手を振ってアピールしている女性がいる。杖を持っているな、魔法使いか。
そして始まるBブロック戦。
レオは変わらずの要塞っぷりを見せ、全ての攻撃をいなしている。
例の魔法使いは水を使い、向かってくる選手たちを吹き飛ばして場外へ送り込む。
水圧なのだろうか、物凄い勢いで人が重なりながら飛ぶ。
気づけば半数以上が脱落していた。そして徐々に人は少なくなり勝負が決まる。
「んー、やっぱレオって地味よね。勝ち方が」
「本人には言うなよ?ああ見えて気にしてるんだから」
無事レオは勝ち進み、水使いの魔女も決勝へ進んだ。
「ねえ、レオ帰ってきたらお昼にしよ!」
「そうですねぇ、少し早いですが混まないうちに食事を取りましょうか」
ミナのアイデアでCブロック戦の時間を使い、昼食を済ませることになった。
実はその頃、Cブロックでは一人の男が圧倒的な強さで勝ち上がっていた。
白い鎧を身にまとった「勇者」と呼ばれる青年。
センはそのことを知る由もなかった。




