東京観光
選手権の出場者は指定の宿泊施設で泊まることになる。
チェックインを済ませたら荷物を置いて観光だそうだ。
はやく行かないとミナから鬼電が掛かってくるだろうな。
きちんと整えられた部屋へ荷物と鎌を置き、桃へ戻る。
オーバーサイズのパーカーに大きめのズボン。少しだらしなく見えるかもしれないが、センになった時に困らない服を選んだ。
部屋を出るとちょうどレオと会う。
「おお、モモか。一瞬分からなかった」
「久しぶりですからね。行きましょうか。ミナが待ちくたびれてそうです」
「もー、遅かったじゃん!何してたのさ!」
「ミナがはやく来すぎただけでしょう?」
「僕、東京でしか売ってない素材見に行きたいんだけど、いいかな?」
「あー、なんで俺まで観光に……」
待ち合わせ場所にはすでに4人が集まっていた。
ミナを先頭に店を冷やかしていく。
どうやら大会前日ということでマーケットができあがっているみたいだ。人も多い。
途中買ったフラペチーノを片手にのんびり歩いていると、それは起こった。
「……あっ!」
「どうした?」
「今の自転車に、鞄を盗られました……!」
「くそ、ひったくりか」
後ろを振り返ると人の間を縫うようにして危険な運転をしている自転車がいた。
きゃあ!危ないだろ!など道の先から聞こえてくる。
……センならば、いける。
「ミナ、これ持ってて」
「え?ちょ、ちょっと」
戸惑うミナへフラペを押し付け、センに変わる。
ダン、と地面を蹴り上空から標的をとらえる。人混みが一瞬小さく見えた。
街灯や看板を伝い、上から暴走する自転車の前へ急降下する。視界の端で悲鳴が上がる。
ザッと音を立て着地した後、自転車の前かごを掴み倒す。
「っ、くそっ!」
自転車から転げ落ちた犯人が立ち上がろうとして、足をもつれさせる
顔を引きつらせて、それでもなお逃げようとする標的に向かい、とっさに一言。
「おい」
いけない、思わず少し威圧してしまった。
しかしそのおかげか標的は止まり、ガタガタと震えだした。
「あ、あああ……ご、ごめんなさい!すみませんでした!」
「……返せ」
鞄を受け取ると同時に社長たちが追いつく。
自然と俺たちの周りは空間ができていた。スマホを持ってこちらに向けている者もいるな。
「どうしましたか?」
警備の人がただならぬ様子に顔を出した。丁度いい。
「あ、私の鞄がひったくられて……彼が取り返してくれたんですぅ」
「ひったくり?分かりました。申し訳ありませんが、少々お時間いただけますか?」
その後は軽く事情聴取を受け、ひったくり犯は後からやってきた警察が連れて行った。
そして夜。
寝ようとベッドへ寝転がった瞬間、ミナからメッセージが届く。
『昼間のやつ、SNSでめちゃバズってるよ!死神、空を跳ぶ、だってさ!』
ふう、とため息をつき、そのまま画面を閉じる。
前日だってのに災難だったな。




