新幹線
選手権前日。東京の会場へ向かうために新幹線へ乗り込む。
鎌を抱えるようにして3人席の廊下側へ座る。
「はー、マジで全国大会か……!」
「なんだ、緊張してるのか、レオ」
隣のレオ、そして窓側の席の社長が話している。
「ねー!セン、今日の観光は絶対モモでって約束、忘れたとは言わせないよ!」
「まあまあ、今は武器を持っていますからぁ。センさんじゃないと運べませんよぉ」
「お前は応援じゃなくて東京観光に行きたいだけだろう……」
後ろの席でなにやら聞こえてくる。
レオと俺以外のメンバーは応援に来るらしい。ちなみに出場者の旅費は経費でおちるが他は自費で有給扱いだ。
「はあ」
「あ!ちょっと、今センため息ついたでしょ!?」
後ろから伸びてくる手を払いながらぼんやりとスマホを見る。
出発してしばらくした後、通路の向かいの席から声を掛けられる。
「あ、あの~」
「ん、なんだ」
「し、死神のセンさんですか?あ、ほら、動画に載ってた……」
若い女性二人がこちらを見ていた。
おもむろにスマホを出し気配切りの動画を見せる。
「まあ、そうだな」
「ヤバっ、本物だ……この動画のファンです!あの、サイン、とかって……お願いできますか?」
ちらちらと視線を感じると思っていたが、動画を知っている人だったか。
サイン……サインか。
「すまん、サインはない」
「あ、そ、そうですか……あ、じゃあ握手とか……」
「いいけど」
別に減るものでもない。差し出される手を取って握手する。
きゃあ、とテンションの上がった声を上げ、ヤバい、ヤバくない?と盛り上がっている。
「なんだ?センのファンか?」
「あっ、この人……」
レオが会話に入り、女性たちが顔を見合わせる。
「死神さんに気配切りで負けてた……」
「ああ、あの人!?」
「グッ……!ち、違う!違わないけど!!」
物凄く複雑な顔をしながら女性たちへ手を振るレオ。
「あの動画から俺、センに負けた人扱いされるんだが?」
「実際あのルールでは俺が勝った」
横から恨みのこもった視線が来る。それを受け流しながら目を閉じて眠る。
「クソ、大会で名誉挽回してやるからな……!」
固い決意を心に決め、拳を握りしめるレオ。そして一連の流れを見て爆笑しているミナ。
窓の外では見慣れない景色が流れていく。
東京まではもう遠くない。
もうすぐだ。全国大会は近い。




