地区予選
ついにこの日が来た。
全国探索者選手権、地区予選。場所は最寄りの探索者協会。
今日はランクの近い何人かと数試合行い、勝ち点で決まるらしい。
「いよいよだな」
「正直地区予選なんてあんたたちは余裕でしょ?」
「さあ」
「私たちもできる限り頑張りましょうか」
「あー、おなかが痛い……」
テレビや動画の撮影もできるらしい。さっきも道にカメラを担いでいる人がいたな。
「おはようございます。参加者の方ですね?」
受付で探索者カードを提示する。
「はい、照会いたします……あら、センさん?」
「なんだ」
「ランクポイントが貯まっていますね。またお時間があるときに面接の予約を取りに来てください」
「そうか、わかった」
「まじか、ついに追いつかれた……」
「あたしは追い越されたんだけど」
「早かったですねぇ。もうBですか」
話しながら選手控室へ通される。
ランクに関しては、今日の相手はCの選手のままになるらしい。
「あ、おい……あそこにいる黒いあいつって死神じゃねえか?」
「まじかよ。人違いとかじゃねえの……?」
……視線を感じる。ちらりとそちらを向けば不自然に顔をそらされる。
「……はあ」
「人気者じゃーん、し・に・が・み・さん?」
「やめろ」
小突いてくるミナをあしらいながら出番を待つ。
何人かの選手が出入りした後。
「次ー、センさん?出番です」
鎌を担ぎなおし扉へ向かう。
「頑張って来いよ!」
口々に出る応援の言葉を受け取りながら舞台へ向かう。
「では、こちらの装置に立ってください」
よく分からない大きな機械に通される。どうやらこれが怪我をしないための特殊な措置だそうだ。
「これよりこの中の空間では死ぬことはありません。相手を戦闘不能にするか、降参を認めさせることができれば勝利となります」
鎌を握りなおし、目の前の相手を見る。
見たところ鎧を着た剣士だ。ふむ、体の防具は硬そうだな。ならばやることは1つ。
いつも通り、だ。
「いや~、分かっちゃいたけど、センとレオはすごいね。危なげなく全勝しちゃうんだもん」
「そういうお前も勝ち進んでるじゃないか」
「それにしてもセンは容赦なかったねー。いくら死なないとはいえ首をスパー、だもの」
「全くだ。僕と当たらなくて本当に良かった」
「いつも通りやっただけだ」
「観客もおどろいてましたねぇ」
帰り道、今日の結果を話しながらのんびりと歩く。
結果としては、ルナ以外は無事勝ち進むことができた。
「ルナ、惜しかったねー」
「ヒーラーですからねぇ。でも二人倒しましたよ?」
「ルナは何よりも魔法の制御がうまいからな。あそこまで多重詠唱できるとは僕も驚いたよ」
「いや、ヒーラーが二人もタイマンで倒せてる方がおかしいぞ?」
ルナの戦いはすごかった。光がとめどなく溢れ、美しい放物線を何重にも描きながら敵を襲っていた。最後まで凛とした立ち居振る舞いをしており、観客席にはファンがうちわを持ってルナを讃えていた。
「女神だって言われてなかった?」
「あら、そうなんですかぁ?困りましたねぇ」
「あー、なんかファンクラブがあるとか言ってたっけ」
あの戦い方を見ると少し納得はする。今回は相手が悪く負けてしまっていたが、実力としてはかなりのものなんじゃないだろうか。
「ま、いいや。次の県大会は2週間後だっけ?」
「うん、そうみたいだね。さらに強い人と当たるのか……」
「まあそんなに緊張するなよ、ノア。お前だって本気出したらすごいじゃないか」
2週間後か。ああ、その前にランクを更新しておかないと。
面接、面倒だな。
「じゃあ俺はここで」
「おう、また会社でな」
「またねー!」
「ええ、さようなら」
「また明日……」
4人と別れすっかり暗くなった道を進む。
選手権、手ごたえのある相手がいるといいんだが。




