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心の傷

休日、暇を持て余してダンジョンへ向かう。

休日だからかいつもより人が多い。何より学生がちらほら見える。

たしか16歳以上の未成年者は親の許可があれば探索者になれるんだったか。

バイト代わりに探索者になる者も多いと聞く。


学生……


「……もう俺には関係のないことだ」


なんとなく見ないようにしながら、逃げるようにダンジョンの奥へ進む。


体を動かしているうちに今朝のもやもやは無くなっていった。

腹が減ったな。携帯食でも食うか。

セーフゾーンまで行き、端の方で壁にもたれて座る。

セーフゾーンには数組のパーティがいて、中には学生らしき若い姿も見える。


「そういやあの面倒な白い鎧のやつもセーフゾーンで会ったな」


まさかいないだろうなと周囲を見回す。が、特にあの目立つ鎧は見つからない。

少し安心しながら立ち上がる。


「おい、お前」

「ん」


声を掛けられる。声の方を向くと高校生くらいだろうか、髪を染めた3人の少年がいた。


「なあお前、1人?w」

「えボッチなん?だっさw」

「なんか弱そうじゃね?」

「……」


どうしようか。正直桃の一番苦手とするタイプの学生だろう。


「……用が無いなら通してくれ」

「なあ、なんか換金できるもん持ってんじゃねえの?」

「ボッチのやつが戦えるわけねぇだろw」

「それもそうかw」


ぎゃはは、と笑う学生。

セーフゾーンには何かしらイベントが起きるものなのか……?とうんざりしながら横を通り抜けようとする。


「何、説教でもすんの?」

「おい、逃げてんのか?」

「俺らにビビってんじゃね?」



「テメェ舐めてんじゃねえぞ、この――――――!」



その言葉を聞いた途端、体の制御が一瞬きかなくなった。

過去の記憶と重なる。責任なく発せられる生徒の一言。

ああ、まずい。

だって今は、黙らせる手段がある。

ゆっくりと学生の方を向く。駄目だ、いけない。

今は先生でなくとも。

絶対に、禍津蜘蛛は出さない。


ガンッ


大鎌を地面へ叩きつけるようにしてこらえる。

殺気を出すな、戻れ。

冷や汗が止まらない。


ふと見ると学生は目に恐怖を浮かべ、膝を震わせていた。

そして一歩、二歩と後ずさり、後ろへ崩れる。


「……用は、無いな」


掠れる声で言う。首が取れそうなほどうなずく彼らを尻目に踵を返す。

一旦落ち着かなければ。

セーフゾーンから十分な距離を取った後。

体の力が抜け、膝をつく。気づけば桃になって泣いていた。

声を上げず、止まらない涙をぬぐう。

なんで、今。どうしても思い出す。


しばらくして少し収まったころ、再びセンへと変わり何度か戦闘をこなす。

が、どうも調子が出ない。


「……無理もないか。今日は終わりにしよう」


いつもより幾分早いが仕方ない。怪我をするのも嫌だしな。



side学生


センが去った後。


「なんだったんだ、あいつ。殺されるかと思った」

「もしかしてめちゃくちゃランク高い人だったんじゃね……?」

「……なあ、おれ、思い出したんだけど」


そう言って一人がスマホを取り出す。

画面にはアークマテリアルの新人紹介の動画があった。


「ほら、この、センって人。この人に似てないか?」

「え、そいつって死神とか言われてるヤバいやつなんじゃ」

「確かに鎌持ってた……」


3人は顔を見合わせる。


「な、なあ。俺たち呪われたりしないよなあ……?」

「に人間だろ?そそんなことできるわけ」

「かっけー……」

「「え?」」

「こんなかっけー動きできるやつがいるなんて……」

「正気か?」

「なあ、この人、どこの誰だ?おれこんなんできるようになりてぇ!」

「「……」」

「お前、すごいな」


センのあずかり知らぬところでファンが一人増える。

それも尋常じゃない熱量を持った大ファンになることを誰も知らなかった。


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