ショップにて
日曜日。今日は探索者ショップに行く約束をした日。
黒いパーカー、黒いズボン。真っ黒な男が壁にもたれ、スマホを見ている。
通りがかる人はちらとその人物を見てそのまま過ぎ去っていく。
そこに突進する勢いで駆け寄る人がいた。
「いた!セン、めちゃくちゃ分かりやすいね!てかやっぱ背、高くない?」
「おはようございます。ミナったら、急に走り出すんだから……」
「ああ、おはよう」
三人が集まり残りの人物はいないかと周りを見渡すと、男が二人、こちらに気が付いたように手を挙げて歩いてくる。
「ああ、そこにいたか。おはよう」
「おはよう……セン、普段着まで黒いのか?」
「おはよう。動きやすい服がたまたまこれだっただけだ」
「皆集まったね?じゃあ早速行こう!」
いつものメンバーが集まり、ミナが先頭を歩いて探索者御用達のショップへと向かう。
ここは探索者向けの装備品を主に扱っており、ダンジョンから出た物も数多くそろえられている。ものによっては値が張るものもそれなりにあるが。
「うーん、やっぱり対人戦となると難しいなー。あ、うちの商品置いてる」
「ええ、そうですねぇ。あ、補充品が安いですよ。一応買っておきますか」
「パーティでの戦闘ではないからな。自分の弱点を補うものがいいかもしれない」
「僕はあんまり重い装備は付けられないから……なにか良い触媒でもないかな」
俺は……どうしようか。今ある装備は鎌、ローブ、鞄か。
鞄はまあ置いておくとして、軽装すぎるか?ローブの中は普段着だしな。
「あー、俺的には一番装備が必要なのはセンだと思うがな。お、セン。これとかどうだ?耐衝撃機能のあるシャツだってよ」
「ん、ああ」
レオが指したのはなんだかゴージャスなフリルのついた派手なシャツだった。こんなものもあるのか……
「動きを阻害しそうだ」
「それもそうだな」
他のものも順番に見ていくと、ひとつ、ノースリーブのインナーがある。タートルネックで首元までカバーしているが腕の動きは邪魔しない。
「これ、いいな」
「え?なになに?うわ、また黒じゃん。マジで全身真っ黒になるよ」
「ふむ、性能は悪くなさそうだね。自動修復に、微小だが防刃機能もある」
「ダンジョン産か。ならサイズも気にしなくていいな」
「でもちょっと高いですねぇ」
確かに少し値段は高めだが、うん。気に入った。
インナーを手に持ったまま店内を見て回る。
「ね、ルナ!この杖めちゃくちゃきれいだよ!」
「うぅん、きれいですけど……これ値段すごいですよぉ?」
「うわ、ほんとじゃん、やばぁ」
女子は楽しそうに話に花を咲かせている。
ノアは……よく分からないアイテム、触媒?のコーナーで瓶を眺めている。
レオは会計中だ。どうやら防具の一部を新調するらしい。
俺も会計するか。と、これは……
みな満足そうな表情で店を出る。ノアは名残惜しそうに後ろを振り返っているが。
「じゃあ食事でもして今日は解散するか。それぞれ試したいこともあるだろうしな」
「さんせーい!」
近くのファミレスで食事を取る。自然と今日買ったものの話が始まる。
「あたしはー、ボウガンの調整剤とベスト!良いのが見つかったんだー」
「私は消耗品の補充だけ。急に色々変えても使いこなせそうにないですしねぇ」
「俺は篭手に少しガタが来てたんでな、新調した」
「僕は研究用の触媒と装飾品をひとつ」
「センは?」
「インナーと、あとブーツ」
「ブーツ?」
禍津蜘蛛の力を得てから顕著になったのだが、装備の中で一番消耗が激しかったのは靴だった。
移動の度にすり減るものだからすぐにボロボロになっていた。
「ダンジョン産の靴なら消耗を気にしなくていいと思った」
「なるほどねー。あんな動きしてるんなら納得かも」
「ちなみに何足ぐらいダメにしたか聞いてもいいか?」
「確か、3足は潰したな」
脱力する面々。自分でも驚くのだが、靴には相当無理をさせてきたのだろう。すり減る速度が尋常ではなかった。
「ならいい買い物だったんじゃない?」
「まったくだ。むしろもっと早く買うべきだったんじゃないか?」
「そうかもしれない」
その後各々帰路につく。
鞄以来の大きな買い物だったが、良いものが見つかって良かった。
新しい装備のタグを切り、ローブと共にしまう。
明日は装備の実力チェックだな。




