アークマテリアルの探索者達
「本日は広報企画、動画の第二弾です!」
「またか」
「またですねぇ」
「僕もやるんですか……」
「いーねぇ、今度はセンに負けないんだから!」
「……」
ここは市営の体育館。
出勤したとたん連れていかれ、会社のロゴが入ったTシャツを着させられた。
ついでに何名か暇な社員も見物に来ている。
「今回は気配切りです。はい、このスポンジの剣を持ってください」
目隠しをした状態で気配だけを頼りに相手を切る。シンプルなゲームだ。
「よーし、じゃあミナ。俺と勝負だ」
「かかってこいってもんよ!シーフの感知力なめんじゃないわよ!」
さっそくレオとミナが勝負することになった。
前衛として敵と直接戦うことの多いレオと、シーフとして敵の気配をいち早く察知し、素早い動きを得意とするミナ。
「甘いなぁ!」
「くそー!今のどうやって分かったのよ!」
激しい攻防は長く続くが、結果はレオの勝ち。
「あー、負けたぁ!」
「ふう、ま、体力の差だな」
どちらが勝ってもおかしくはなかったが勝負が長引いたのが勝敗を決したな。なによりレオは間合いの取り方がうまい。恐らくなにか武道をたしなんでいるのだろう。
「じゃあ次は後衛同士の勝負ですね!」
ルナとノアが立ち上がる。二人とも魔法使いであり、近接武器など振ったことはほとんど無いそうだ。
「よぉし、頑張りますねぇ」
「う、うん。できるだけやってみよう」
レオとミナに対してこの二人はひどく穏やかな雰囲気だった。
「えーい!」
「こ、ここか?」
ブンッ、スカッ
お互い全く違う方向を向き、スポンジ剣は空を切る。
役割が違うとこうも雰囲気が変わるのか。周りの聴衆も皆あたたかな目で見ている。
結局ルナが適当に振り回した剣がたまたまノアの足先を掠めたところで勝負は決まった。
「やったぁ、勝ちましたぁ!」
「全くわからなかった……レオとミナはどうなっているんだ……」
そして俺の番。まずミナとの勝負だ。
「よろしく」
「体力はだいぶ回復したからね!いくら後輩といえど容赦しないわ!」
目隠しを付け相対する。やはり魔物の心を手に入れたからだろうか、視覚以外の感覚も澄み渡っている。
「先手必勝!」
最低限の動きで横へ避ける。そしてすれ違いざまに一閃。
パシッ
「あ、当たった……しょ、勝者、セン!」
「えー!今のまぐれじゃない!?もう一回!」
納得のいかない顔で審判へ詰め寄るミナ。
「もう一回、やるか?」
「っ、もちろんよ!」
再戦。同じようにミナの攻撃を避け、当てる。
「も、もう一回!」
何度も挑戦するが、俺に攻撃を当てることは叶わず息を切らしている。
「……なあ。センのやつ、攻撃の全部が首にあたってないか……?」
「僕も思っていた。的確に敵の急所を突いている」
「彼の戦い方、なんでしょうねぇ」
目隠しを外し、ミナを見る。
「もー!ぜんっぜん当てらん無いんだけど!レオ、交代!」
「……お前がここまでやられてるなら俺では無理だろ。そうだな……エキシビションマッチはどうだ?」
「エキシビション?」
「ああ。俺は目隠し無しでセンを攻撃する。で、センは目隠しありの武器無しでどれだけ攻撃をかわせるかってのを見る」
「それはさすがにセンが不利すぎではないか?」
どうだ、と提案される。俺も実際にどこまでできるか試してみるか。
「いいぞ。本気でやっていいんだな?」
「舐めたこというんじゃねえよ、後輩。俺も本気で当てるからな」
位置につく。俺は手ぶらで目隠しをしているだけ。制限時間は10分。
目の前から漂う威圧感。レオは本気だ。ならば俺も、少しだけ解放する。禍津蜘蛛、その力を見せてもらおう。
レオの剣が何度も空を切る。
そして一度もセンを捉えられないまま――
「完敗だ……!くそっ……!」
「これはさすがに……」
「圧巻、でしたねぇ」
「意味わかんない……」
ため息をついて目隠しを外す。さすがに俺も疲れた。
しかし思っていたより攻撃の筋が見えるものだな。それに普段しない体の動かし方をした気がする。明日は筋肉痛かもしれない。
「なんで地面と平行になって低い姿勢になった後に上空へ跳びあがれるんだ……?」
「無駄を感じさせない最低限の動きだったな」
聞かれてもできるからとしか答えられない。ノアはぶつぶつと分析をしている。
「皆さん、お疲れ様でした!またこちらの動画は編集でき次第公式アカウントから投稿しますね!」
「面白かったー!また何か楽しそうなこと考えたら呼んでよね!」
「ええ、もちろんです。ではみなさん、会社へ戻りましょうか」
後日
「レオの鉄壁感めちゃくちゃ好きだわ」
「ミナちゃん頑張れー!」
「魔法組のほんわか感いいな」
「このセンってやつ、前の動画の死神だろ?回避能力どうなってんだよ」
「レオvsミナもすごかったけど死神は別次元だな」
「レオすっごい悔しがっててウケるw」
「死神の動きがアニメなんだよな。合成疑うレベル」
「本気でやっていいんだな?って、すごい煽ってるなw」
「何食ったらそんな動きできんだよ」
「ヤバさのランク上がったな」
「お、あたしらのことも書いてくれてるよ!」
「うふふ、盛り上がってますねぇ」
「どうせ魔法使いの身体能力は一般人だよ……」
「なんで俺が死神に負けた人になってるんだ!」
第二弾の動画は大好評だった。
しかし本当に死神が定着してきている。そんなにヤバい動きしてたか?
「ねー、セン。エキシビションマッチの時さあ、今までよりさらに動きにギアが掛かったような感じがしたけど、なんかしたの?」
「ん、まあ。奥の手みたいな」
「ふぅーん、そっか」
魔物の心の力を引き出すこと。魔人化、というらしいが、あれは強い。だが同時に人ではない感覚……戦いを愉悦に変えることになる。
……別に化け物になりたいわけではない。それに、化け物になることを許容する人間になるのは嫌だしな。
あくまで人として、この力と付き合っていこうか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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