死神
「動画を撮影する?」
「ええ!広報担当として考えたんです。うちの会社の探索者の紹介をしたら面白いんじゃないかと思って!」
「うわー、いいじゃん!やろうやろう!」
「動画って、具体的に何を撮るんだ?」
ある日出社したらそんな話で盛り上がっていた。
「おはよ、うわ」
「ちょっと、センってば遅いじゃん!こっち来てよ!」
テンションの上がったミナに腕を引かれる。
ミナは桃と会ってから今まで以上に馴れ馴れしくなった。いや、ミナだけではないかもしれないが。
「それでは説明します。といっても大したことはありません。【新人探索者に密着してみた】という題で普段の皆さんの戦闘の様子をニューチューブへ投稿しようと思います。」
「そうか、たしかダンジョンのタグ付けをすれば戦闘シーンも映せるんだったか」
「その通りです。ということで、さっそく皆さんの探索に付き合わさせてください!」
なし崩し的にパーティ+広報担当と一緒にダンジョンへ行くことになった。
広報担当は探索者カードを持ってはいるが戦えるわけではないので後ろから撮影だけだ。
「よおーし、じゃあ最初はあたしたちパーティの連携技ね!カッコよく撮ってよ!」
「支援、頑張りますねぇ」
「おいリーダー、あんまり張り切らないでくれよ。僕の出番が無くなってしまう」
「はいはい、いつも通りやればいいんだろう?」
そう言って手慣れた様子でフォーメーションを組む。
鮮やかな連携が決まり、危なげなく敵を倒していく。
「さっすがBランク相当のパーティ。安定感が違いますね!素晴らしい戦いです」
「ふふん、どうよ。いい感じに編集してよね!」
「さ、次はセンの番か?」
「もうすぐボスにたどり着くけど、どうする?」
「ん、ああ」
いつも通りやってくれと声を掛けられる。ならば……
「……本当にボスに一人で挑むの?」
「無理しないでくださいねぇ」
「おまえが大丈夫ってんならいいんだが」
「じゃあカメラ回しますよ!」
「……行ってくる」
扉を開き、中へ入る。撮影のためか、皆も後ろから続いてきた。
「私、ボス、初めて見ます……」
広報さんのためにも早めに倒した方がよさそうだ。
魔法陣が輝き大きな人型の魔物が現れ咆哮をあげる。
いつも通り、背後へ回り込み、首を断ち切る。
「消えた!?いや、跳んだ!?」
「壁を蹴って上空へ跳んだんだ。なんて動きしてやがる……」
「あ、魔物が」
「首、飛びましたねぇ……」
ドォン、と地面を揺らし倒れた巨体が崩れていく。
危なげなく着地をし、パーティの方へ向かい声を掛ける。
「終わったぞ」
「え、速すぎません……?ボス、ですよね、これ」
「?長引かせた方がよかったか?」
「いいいいえいえいえ、大丈夫です。あ動画撮らせていただきありがとうございます、はい」
「……こいつ、前に見た時よりもさらにバケモンレベル上がってないか?」
「人間の動きではなかったな」
その後会社まで広報さんを送り、彼女は編集してくると言ってPCへ向かった。
数日後
「皆さん、先日の動画の件ですが、ものすごい反響です!特にセンさん!あのボス戦が大うけしてますよ!」
「そうか」
「そうか、ってお前、自分のことなのになんだよその素っ気ない態度」
「再生数はどれくらいだ?」
「すでに十万超えてます」
「は?」
「ねー、コメント見れる?なんか言われてる?」
「はい、沢山コメントもついてますよ!えっと、これです」
「ボス一撃とかヤバ」
「どうせ編集だろ?」
「いや、俺も疑ったがそういう痕跡はなさそう」
「人ってこんな跳べんの?」
「この黒ローブ、まるで死神じゃん!」
「敵からしたら死神に違いないよな」
「こいつがCランクとか嘘だろ」
「強すぎる」
「3次元的な動きやべえ」
「こんな奴見たことねえな」
……
「ええー、センのことばっかじゃん」
「まああの倒し方は無理もねえよ」
「センさんはいつもこんな倒し方なんですかぁ?」
「まあ大体同じだな」
「未だに信じられない」
この動画が、俺が今後「死神」と呼ばれる要因となる。
世に「死神のセン」が広まった瞬間だった。




