変化
月曜日、出社する。
いつものように出勤のボタンを押し、すれ違う社員と挨拶をしてダンジョンへ向かう。
今日は1つ試そうと思っている。例の禍津蜘蛛の力だ。
「よし、丁度良い実験台がいるな」
目の前に現れた一匹の獣型の魔物。唸り声をあげこちらへ突っ込んでくる。
大鎌を構え、集中する。心の中で念じる。力を引き出せ。
「……え?」
気づけば戦闘は終わっていた。いや、これは戦闘と呼べるのだろうか。只の虐殺だった。
後ろを振り向けば魔物は細切れになっていた。
意識を失ったわけではない。むしろはっきりと覚えている。
今、俺は魔物を容赦なく切り刻んだ。
そこに効率なんてものはなかった。
そしてその間俺は笑っていた。
愉しかった。
それだけ。
禍津蜘蛛の特徴にあった、獲物を狩ることに悦びを覚えるってこのことか。
しかし俺には【不動心】がある。実際に今も存外冷静でいられる。
いや、まさか逆なのか?
【不動心】でふだん抑制されている感情の分、狩りの快楽が際限なく高まるのか?
わからない。
だがこれは人前では使えない。
少し疲れるし。
その後も探索は続く。弱い魔物はたまに俺を見て逃げるようになった。無意識に威圧でもしているのだろうか。
それともう一つ、体が軽い。一瞬なら壁も走れるほどだ。
「なかなか便利なところもあるじゃないか、禍津蜘蛛」
先週よりも多くの収穫を得てダンジョンを後にする。




