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異世界で目覚めた俺。スキルも魔法も使えなくて絶望する ~神羅 試神の転生召喚~  作者: ねすと
神羅 試神のダンジョン探索 ―― 第八章 ――

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第92話 初めて

 真ん中の辺りで折れているらしく、ポケットの中でふたつに別れている。落ちた衝撃にどこかにぶつけでもしたのだろうか。


「これって、半分に折れてても使えるのか……?」


 タタンの言う通り魔力を貯めるだけなら半分でもいいのだろうが。


 普通に考えて、真ん中から折れたバッテリーを使って充電はしないだろう。

 そんなものを使おうとすれば、発火や爆発などが起こってもおかしくない。


 杖は自動で魔力を蓄えるとのことなので、今はおそらくフルに魔力を蓄えているかか、それとも壊れて全く蓄えられていないかのどちらかであると思うが、さすがに魔法を使って試そうとは思わなかった。


 なにもしない魔力がいきなり熱を発したりするとは思えないので、杖が発火したり爆発したりはないと思うが、使わないのは当然として刺激もあまり与えないほうがいいかもしれない。


(……これは、さすがに、許されるよな)


 試神がポケットから杖を出し、自分の足元に転がす。リセットというのが本当なら、明日にはこれもなくなっていることだろう。


 墓蒔に指摘したポイ捨てになってしまうが、幸いにも、周りは真っ暗だ。

 今(・)捨(・)て(・)た(・)こ(・)と(・)さ(・)え(・)、(・)試(・)神(・)の(・)目(・)に(・)は(・)な(・)に(・)も(・)見(・)え(・)や(・)し(・)な(・)い(・)。


 これならまあ……言い訳も立つだろう。

 一度手を離れた杖は、もうどこにあるのかわからなくなってしまった。

「杖がないとなると、灯りはどうしよっかな」


 ポケットの中の携帯か――もしくは。


「……癪だけど、仕方ない」


 ヘルメットを脱いで、中にしまっていた携行灯を取り出す。光が漏れてこないところを見ると、傷はついていないらしい。


 流石ヘルメット。しっかりと中にあるものを守ってくれていたようだ。


「これがリュックの中だったら、割れてたかもな」


 ピッと、小さく破くように傷をつける。じんわりと光が漏れて、あたりを照らした。


 暗闇にいたせいか、墓蒔と同じぐらいの傷をつけても十分すぎるくらい明るく感じる。


 ヘルメットの中に戻すとさすがに暗くなってしまうので、ジャケットのポケットにそれを入れる。圧迫感があるのかさっきよりも漏れ出す光が多く、さきほどより少し明るさが増したほうな気がするが、最初が暗いかと思ったほどだったので結果的にちょうどいいくらいになった。


 試神が落ちたのは、どこかの一本道だった。


 前にも後ろにも、同じ太さの道が続いている。道幅は狭く、二人並んで歩くのは難しそうだった。見上げると、今しがた落ちてきた穴が見える。まっすぐ、垂直に伸びているそれは煙突を見上げているようだった。


 さすがに携行灯の光では上まで照らしきることができず、どのくらいの深さ落ちてきたのかわからないが、このまま穴を伝って上に、というのはどう頑張っても無理だろう。


 浮遊魔法があれば別だったかもしれないが。

 そんなもの試神には使えないし、そもそも杖はない。

 

 足を引っかけて上に、なんて芸当も、当然ながらできるわけがない。


 そうなると。

「……どっちに進むか」


 上から来たため、どっちが地上に続いているのかわからない。


 いや、そもそも地上に続いているのかすらわからない。


 墓蒔と一緒にきたときは戻らないように進んでいけばいいと言っていたが、ここまその法則に従っているかはわからないのだ。もしかしたら長い長い一本道で、先は行き止まりになっているかもしれない。勾配も、風も感じない道では、足をどっちに向けたらいいかわからなかった


「右手を当てて迷路の壁を進めばいずれ出口に進むっていうやつも、絶対じゃないみたいだしなあ」


 ロロロは友情崩壊ダンジョンは迷子になりにくい、戻りやすいと言っていたが、さすがに穴に落ちることは想定していないだろう。簡単なつくりだったらいいが、もしそうじゃなかったら……。


「迷子になったときは、むやみやたらに動いてはいけません」


 少し大きな声で言って、自分で自分に言いきかす。


「その場にとどまって、救助を待ちましょう」


 そして、さっきポケットに入れた携帯をまた取り出した。


 時間を確認し、まだまだリセットには十分な余裕があることを確かめてから。

「ごめんなさい、ロロロさん。すまん、タタン。緊急事態だから、見逃してくれ」


 助けを呼ぶつもりはなかった。


 試神は今日、半休をとってこのダンジョンにきているが、向こうはまだ仕事中だ。言ってしまえば遊びにきている最中だとのに「悪いけど迷ったから迎えにきて」なんてするわけないと思っていた。


 だが。

 この状況で四の五の言っていられない。


 お説教なら後で受けます。

 そう心に誓って、電話をかけようとして。


「………………あれ」


 つながらなかった。


 タタンに。

 ロロロに。


 どちらにかけてもつながらない。


 しばし葛藤の末に、携帯に登録されているほかの従業員全員にも電話をかけてみたが、どれも繋がることはなかった。


 もう一度タタンに電話をかけてもつながらない。何度かけても繋がらない。


 大事な会議中で全員出れない状況なのか、それとも携帯が壊れたかのと思ったが、違った。


 圏外。


 久々に、その表示を見た気がした。


「はあああああああああああああ!!?」


 今(・)更(・)な(・)が(・)ら(・)、(・)初(・)め(・)て(・)。

 ここにきて、初めて試神は、焦りを感じた。


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