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異世界で目覚めた俺。スキルも魔法も使えなくて絶望する ~神羅 試神の転生召喚~  作者: ねすと
神羅 試神のダンジョン探索 ―― 第七章 ――
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第64話 召喚者なんで

「創造根底館に置いていくぐらいだから、向こうも覚えてないんじゃない?」

「かもしれませんが、一応、念のため。あとはまあ、お守り程度に持っておきます」

 歩きながら一度リュックを下し、一番外のポケットにその人形を入れる。


「ダンジョンって、それなりに危険な場所ってきくんで、怪我をしないように」

「……というか、怪我を気にするキミが、よく行く気になったね。ダンジョンなんて場所に」


「経験したいだけです。怪我しないように準備を怠る気はありません」

 ヘルメットを一度脱いで、額の汗を拭う。髪を少し直したあと、またヘルメットを被りなおした。


「ロロロさんてダンジョンってどんな場所か知ってます? 俺まったくわからないんで、もしなんか知ってれば教えて欲しいんですよ」

「所長とかは教えてくれなかったの?」

 もちろんいの一番にタタンに訊いたのだが、タタンもわからないと言われてしまったのだ。


「あいつ、ダンジョンに興味ないらしく、調べる気もないってことで」

「……キミは調べないの?」

 調べるツールがないのかと思ったが、顔合わせした日に携帯を渡している。それに、事務所にはパソコンがあるのだから、いくらでも調べようと思えば調べられるはず。書籍だって出ているのだから、探せばいくらでも情報は出てくるはずだが。


「まあ……さすがに、ちょっとは調べましたけどね」

 嘆息する試神。嘘をついているようには見えなかった。


「ですが、俺、この世界のことよく知らないんですよ。召喚者なんで」

「うん」

「なので、情報の選別ができないんですよね」


 ネットには嘘が紛れている。

 それは地球にいたときからわかっていたことだ。

 しかもその嘘が故意のものではなく、又聞きによる勘違いや思い違いなども含まれているのだから質が悪い。

 悪意に満ちたものなら判別がつくかもしれないが――。

 それを見分けるのは、やはり事前知識が必要なのだ。


「ダンジョンについてかかれていることについて、どれが本当かわからないんです。だから、信頼できる誰かに訊こうって思って」

「なるほど……」

 言いながら、ロロロは腕を組んだ。

 ひとつ、疑問が解消されたような気がした。


 試神がここにきて日が経つというのに、まだ創造根底館がどんな場所かわかっていないように見える理由。


 なんてことはない。

 ネットにある真実の大半を――嘘と思っているだけなのだ。


「……それが吉なのか、凶なのか」

「え?」

「いや、なんでも。ダンジョンのことだったよね」

 ロロロが組んでいた腕を解き、そしてそのまま、左右に広げた。


「ごめん、あたしだってよく知らないんだよね。もぐったことないからさ」

「……そうですか」

「まあ、基本知識ぐらいは教えてあげられると思うけど。で、調べて、どんなことがわかったの?」

 えっと、と試神が空を仰ぐ。


「まず、ダンジョンは一日ごとにその形を変える」

 視線を天からロロロへ。

 その真偽を疑っているようだったので、ロロロは頷いた。


「正解。毎日0時にリセットされる」


 試神がダンジョンというものを調べて、まず行きついたのがそれだった。

 そして『ネットはやっぱり信用ならないか?』と思ったひとつだった。


「なんで0時で……なんて日ごとに形を変えるんですか?」

「それがわかったらキミはこの世界に名を残すよ」


 わからない。

 それが答えなのだろう。

 納得できない。

 納得できないが――。


(まあ、『そういうもの』なのだろう)

 地球にだって解明できないことはあった。それなのに異球に謎ひとつあってはおかしいという考えは間違っている。

 不思議は不思議。

 それでいい。


「でも、どうして0時なんでしょうね。そこだけやけにぴったりというか。逆に設定されているというか」

「ああ、違う違う」

 逆よ逆、とロロロが手をくるくるさせる。


「逆?」

「0時になったらダンジョンの形が変わるんじゃなくて、ダンジョンの形が変わる時刻を0時って定めたの」


「……なるほど」

 それなら、納得できる。


「ダンジョンって友情崩壊ダンジョンだけじゃなくていくつもあるんだけど、ある時一斉に姿を変えるんじゃなくて、一定時間で変わっていくことがわかって、それを基準に、時間を決めたみたい」

「……異球はダンジョンと共に歩んできているわけですね」

 そうなのかな、とロロロは首を倒した。


「まあ、それなりに珍しいものも出るみたいだし、なくてはならないもの、なのかもしれないね」

「珍しいものって、『異物』ですか?」

 遺物ではなく、異物。異球のモノだということで、その字が使われているらしい。

 簡単に言えば特殊な力を持った道具――お宝、なのだろう。


「あたしは興味ないけど、異世界人くんは?」

「……どうでしょう。俺からしてみれば、この杖だってその異物ですからね」

 特殊な力は魔法全般に当てはまるので、これがそうなんだと言われてもピンと来ないかもしれない。


「みんな、その異物が欲しくてダンジョンに潜っているってことですか?」

「そういうことだね」

 そのモチベーションがよくわからないが、しかしそれで生活している人もいるらしいので馬鹿にできないのだろう。


「友情崩壊ダンジョンにも異物ってあるんですかね?」

「当然あるとは思う。異世界人くんもなにか見つけたら拾ってきな」

「泥棒になりません?」

「ならない。拾わなきゃ誰かが持っていくか、次の日に無くなっちゃうよ」


 一日ごとに形を変えるダンジョン。

 なかになにかあったとしても、無くなってしまうのだという。

 拾われなかった異物も、落とし物も。


 中で死んだ人間も、次の日にはまとめて無くなってしまう。


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