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異世界で目覚めた俺。スキルも魔法も使えなくて絶望する ~神羅 試神の転生召喚~  作者: ねすと
神羅 試神のダンジョン探索 ―― 第九章 ――

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第125話 私が思う『魔法』と、試神さんが思う『魔法』

「すいません、少々席を外していました。試神さんから用事を頼まれまして」


 タタンがチャットを送ると、すぐに「いえ」と返信が来た。

 メッセージを送ると同時に既読になったところをみると、パソコンの前で待機していたのだろう。

 ここまで前のめりに返信をくれる心殺はかなり新鮮なため、待たせてしまったのは悪い気がしてくる。


 心殺がさらにチャットを続ける。

「こちらからの報告はほとんど終わっております。残りは雑談に近いただの独り言のようなものにすぎません。業務に必要なことでしたら、神羅さんのほうを優先してくださって構いません」


 業務に……必要な……。

 タタンは少し考え。

「問題ないですよ。頼み事は先ほど終わりましたし、しばらくはなにもないでしょう。今、試神さんは外出、というかダンジョンに向かっているので近くにいないんですよ」


 ややあってから。

「はい?」

 と来た。


 当然の反応だと思う。

 タタンは笑みを浮かべながら、今試神が杖の代わりとなる道具を見せてもらいに友情崩壊ダンジョンに向かっていること。どうやら無事に受け取れたらしく、性能を調べるために今から軽くダンジョンに潜りたいと言っていること。そして安全面から、試神の部屋にある折り畳み式のクマの絵がプリントされたヘルメットを魔法で送ってもらえないか頼んできたことをチャットする。


 かいつまんでの説明だったが、文章にするとかなり長くなってしまった。

 とくに最後―――クマのヘルメットのくだりは、自分でもなにを書いているのだろうと思ったほどである。


「なぜ、神羅さんはそんなヘルメットを持っているのですか? 所長からのプレゼントでしょうか?」

 そんなわけないだろう。

「安かったから買ったと言ってましたよ。本当は絶命洞窟で使うつもりでしたが、ロロロさんからもっといいやつをもらったので使わなくなったと。部屋に置いていたのは、災害時などで使えるかと思っていたらしいですよ」

 送るときにちらっと、本当はタタンにあげようかと思っていたんだけど、というつぶやきが聞こえてきたような気がしたが、聞かなかったことにした。

 変に追及して藪蛇にしたくはないし、逆に「やろうか」と言われても困る。


 ……というより。

「よくわからないのでお訊きしたいのですが、なぜクマのヘルメットを送ったと聞いたとき、試神さんが買ったのではなく、私があげたと思ったのか非常に気になるのですが」

「キャラ的に買うのは所長のほうでしょう」


 軽く意識が遠のく。

 心殺の中で、いったい自分はどんなキャラになっているのだろうか。


 タタンの手が止まっているからだろうか。心殺が続けてチャットを打つ。

「どんなヘルメットか私は見ていないのでわかりませんが、きっと所長も似合うと思いますよ。」

「これですが?」

 試神に送ったヘルメットを画像検索し、チャットに貼る。ちらっとしか見ていないが、おそらく正しいような気がした。

 既読マークがついて、すぐに返信がくる。


「これ、耳は絵だけで実際にはついていないのですね。そのヘルメットの材質はなんでしょうか? 鉄でよければ耳を作成し取り付けておきますが」


 取り付けたところでどうしろというのだ。

 とりあえず言えることはただ一つだ。

「つけませんよ」

「耳を?」


「耳もヘルメットも、両方です」


 残念です。

 

 心殺からつぶやきのようなチャットがきて、さらに文が続く。


「少し話しがそれました。所長が送ったというクマのヘルメットですが、それを今、彼は被ってダンジョンに入っているのですか?」

「おそらく」


 画像を検索したことで、はっきりイメージできるようになってしまったせいだろう。

 タタンの脳裏に、自分と同い年の男性が可愛いクマを被ってダンジョンに潜る姿が映し出されてしまっている。


 これが一人だったらまだマシだったのだが、今回は可哀そうなことに、ダンジョンに潜るのは試神だけではない。その隣にはおそらく営業の人がいるはずだ。

 試神の異様な拘りにより、おそらくヘルメットなしでダンジョンに潜ることはしないだろう。安全のためと言われてしまえば、営業の人もそこまで強くいえないのではないだろうか。


 ユミズ、と営業の人の名前しか知らないが、同情してしまう。


「杖に変わる道具を見に行っているということは、杖はもう不要ではないのでしょうか?」

 心殺からチャットが来る。

「所長より先ほどパンツの手直しがあるかも、とありましたが、まだ杖を使う予定が?」

「念のためですよ」


 タタンがメールを開き、ユミズという人が送ってきた本の写真をチャットに貼る。

「これが試神さんの要望の、本の形をした道具です。今これを見せてもらいにいっていますが、正直これを使うかどうか怪しいかなと思っていますね。試神さん、魔法についてこだわりが強い方なので、もしかしたらあまり使わず、結局杖に戻る可能性もあるかな、と」

「地球の方なのに、魔法のこだわりがあるんですか?」

「みたいですよ」

 鼻から息を吐きながら送る。


 魔法に憧れがあるのか、それとも理想のものがあるのかわからないが、最初から『こういうものがいい』という確固としたイメージがあった。


「私が思う『魔法』と、試神さんが思う『魔法』は、どうやら違うようです」


 タタンは生まれも育ちも異球だ。それゆえに、『魔法』と言えば異球で使えるものしか知らない。もちろんアニメや漫画などでそれ以外の異能に触れる機会はあるが、『魔法』といえば一つなのだ。


 だが、試神は地球の人ゆえにさまざまな『魔法』があるのだろう。


 呪文を唱えたり、陣のようなものを書いたり、魔法が名前を変えて別の異能になっていたり。地球の人が、魔法を知らないがゆえにいろいろアレンジを加えたものに触(・)れ(・)過(・)ぎ(・)て(・)いるために、イメージが広がりすぎてしまっている。


 杖ではなく本がいいというのも、その一つなのかもしれない


 試神の中で魔法は杖を使うものではなく、本を使うもの。

 なにに影響されたのかわからないが、それが枷になっているのだろう。


(……まあ、にしても少し拘り過ぎ……というか、イメージが固まりすぎている節がありますが)


 ―――魔法? ああ、あれでしょ。

 なんてものが地球にはないので、普通は見せたものを『魔法』として受け入れるはずなのだが。

 試神の中で、そこまで影響を受けるようなものがあったのだろうか。

 

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