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異世界で目覚めた俺。スキルも魔法も使えなくて絶望する ~神羅 試神の転生召喚~  作者: ねすと
神羅 試神のダンジョン探索 ―― 第九章 ――

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第121話 忌み名

「俺様、<ラストワン>発動前は魔法が一切使えない、試神と同じ状態と思ってくれてかまわないからな」


 友情崩壊ダンジョン入口の前で、ユミズにこっそりと耳打ちする。

「は?」とユミズは顔をしかめた。「どういうことですか?」

「どうもこうも、そのままの意味だよ」


 ダ(・)ン(・)ジ(・)ョ(・)ン(・)特(・)化(・)型(・)固有魔法。


 発動できたら敵なしだが。

 発動する前はまるで役に立たないことを滔々と説明する。


 最初は冗談ときいていたユミズであったが、次第に頬がピクピクとし始めた。

「ちょっとまってください、じゃあ僕は、魔法が使えない二人のお守をしなきゃいけないってことなんですか?」

「うはは、まあそういうこった」


 ちなみにだが、今この場に試神はいなかった。

 ダンジョンに入るということをタタンに連絡しにいったのだ。

 一昨日、ダンジョンに入ったときに電話ができなかったことを思い出してのことなのか、試神は友情崩壊ダンジョンがあるテントから出て、外で電話をしている。


「俺様の代名詞でもある『味方殺し』。それは別に趣味でも酔狂でもなく、俺様の固有魔法を発動させるために仕方なくやってることなんだよ」

「魔法を発動させる条件に『味方を殺す』というのを設定している時点で、十分狂人だと思いますけどね」

「いやー、あのころは血気盛んだったからなー。変人にみられたくてついつい変な固有魔法にしちまったなー。いやー、失敗失敗」

 ぺしぺしと墓蒔が額を叩くが、その顔に微塵も後悔は見られない。


 固有魔法といえども、固定魔法ではないのだから十分修正可能なのだ。

『味方を殺して一人になる』なんて制限も、取っ払うことだって今からでも十分できるはず。

 その場合は魔法そのものが根底から変わってしまうため、今までのような過剰までのバフは難しくなるかもしれないが、もっと使いやすい魔法になることは確実だろう。


 ―――なんてことを、今更墓蒔に言ったところできくわけないのだが。

 ユミズもそんなことをわかりきっているため、指摘もしない。ただ「そうですか」と受け流しただけだった。


「まあ、安心しろよ。ユミズくん……それともユミズちゃんか? もしかしたらタタンとかいう奴がワンチャン止めてくれるかもしんねえよ? 今は業務時間だから、速やかに戻ってきなさいとか言ってさ」

「ユミズ『さん』でお願いします。……そんなこと、ありえますかね」

「さあね。『ラストワン』と一緒に行くっていえば、止めてくれるかもしんねえけど」


 そんなこと、いうわけないだろうな、と二人とも思う。


 試神が連絡すると言いだしたのも、ユミズが行くとわかったからだ。

 もし二人で入るとなれば、そのまま連絡なしにしれっと潜っていたことだろう。


「はあ……。これも売上、ひいては魔石のために我慢するとしますか」

「そうそう、これで創造根底館の職員があの本を使ってくれるとなれば宣伝効果抜群じゃん。頑張れよ。それに、友情崩壊ダンジョンなんかただの散歩と変わらん。危険なことなんて起こるはずないし、危険な敵なんて出てくるわけねえじゃん」

「……そういいつつ、さっきあなた、異物の整理してませんでしたか?」


 墓蒔は一瞬真顔になり、それから「うはは」と笑った。

「よく見てんねー。ユミズくんちゃんさん。見直したわ。でも、異物整理はダンジョン入る前の儀式みたいなもんだから、難易度とか関係ないんだよね」


「…………。それで、その異物はちゃんと使ってくれるんでしょうね?」

「んあ?」

「難易度は関係ないといいながらもしっかりと準備をするということは、異物を使う予定があるかもしれないということでしょう? それは、自分の身を守るためだけに使わないか、という確認です」


「…………」

 墓蒔がさらに大きく笑う。

「さてね。その辺りは気分次第かな。『仲間殺し』の名が知れ渡ってるせいで、俺様はあんま人とダンジョンに潜ることはないんでね。自分の身を守ることには慣れてるが、他人まで気を回すなんてことをしたことがない。むしろ危険な目に合わせる側であって、助けるなんてしねえからな。連携なんてもんも漫画やアニメで見ただけだから、あんまアテにされても困るぜ。普通に魔法を使える、あんたのほうが何倍も優秀だ」


「褒めたところで、なにもでませんよ」

「まあいいじゃん、それにお前。ダンジョンが初めてじゃないんだろ?」


「…………」

「話しの種に潜るわけでも、趣味の一つとして嗜むというわけでもないな。けっこう危ないところまで入ったりしてんじゃねえの?」


 口を閉ざすユミズに、「どうしてわかったか教えてやろうか」と墓蒔が言った。


「俺様が『ラストワン』とわかったからだよ」


 試神と会い、いざ仕事の話しをするとなった際、ユミズは墓蒔を見るなり顔をしかめたのだ。

 初対面なのに。

 まだ、名乗ってすらいないのに。

 ユミズは墓蒔を知っていた。


 いや、それだけじゃない。

『ラストワン』であることを知っていた。


 ただ……『ラストワン』というだけなら、そういうあだ名なのかと思うだけかもしれない。

 試神と墓蒔が話していたとき、『ラストワン』というワードは出ていたのだ。遠巻きに聞いていたとき、その名前を耳にしただけかもしれない。


 だが、ユミズの反応が。

 墓蒔が同席するとわかったときの反応は、とてもそうじゃなかった。

 見知らぬ他人がいることを嫌がるものではなく、藤藤 墓蒔という人間がいることを嫌がっていた。


「『ラストワン』が忌み名と知っているのは、ダンジョン探索者だけだよ」


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