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異世界で目覚めた俺。スキルも魔法も使えなくて絶望する ~神羅 試神の転生召喚~  作者: ねすと
神羅 試神のダンジョン探索 ―― 第九章 ――

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第120話 魔法使いなのでしょう?

「極論」

 と、タタンはチャットに文字を打って。

「………………」

 少しその手を止めたが、やがてまた、打ち進めた。

「極論、本気を出したラストワンは責慈さんを殺せていましたか?」


「もちろん、そうでしょう」


 迷いない返答だった。

 文字だけだが、表情ひとつ変えず言い切っている姿がありありと想像できる。


「私は何千回、何万回と彼を殺す必要がありますが、向こうは一回殺せばいいだけです。異物という不確定要素もありましたし、捨て身という戦法もあります。たった一回殺すくらい、わけないでしょう」

 改行。

「知っての通り、私はこれまで不死であるものたちを何人も殺してはきました。ですが、今回は時間制限がありました。殺(・)し(・)続(・)け(・)て(・)死(・)な(・)な(・)い(・)生(・)き(・)物(・)は(・)い(・)な(・)い(・)。それは当たり前で当然のことですが、日付が変わるまでという制限の中でそれだけの数を殺すことは不可能です」


 不死くらい殺せないで創造根底館の職員は名乗れない。

 そう心殺は墓蒔に言った。


 それはもちろん嘘ではないが。

 やはりそれなりに、骨が折れる作業なのである。


「それに、今回の相手は、私はあまり相性がよくありませんでした。体を直(・)す(・)というタイプの不死は、物理的にしか殺すことのできない私にとっては天敵です」


 壊しても壊しても直るのであるならば、何万回でも壊すまで。

 心殺の殺し方はシンプルだ。

 血液を磁化させて反発させる内部破壊か。

 鉄の塊で貫く、または押しつぶす外部破壊。


 本来ならそれで充分であるのだが。

 ダンジョン内という不慣れな場所で、かつどこかにいるはずの試神を巻き込まないようにと気を使いながらの戦闘は、どうしても時間がかかってしまう。


 それに加えて、壊した体が直る時間。

 僅かではあるものの、積み重なれば無視できない時間になる。

 時間制限がある中で、それは致命的だった。


 今回は試神を助けるという名目があったため、殺害対象をある程度絞ることができる固有魔法を持つガブリンか心殺の二人しか候補に上がらなかったが……もしこれがカブリンが行っていたとしたら、また結果は変わったかもしれない。

 

 墓蒔と試神と一緒にいないことがわかっていれば、花子やフクロウに行かせてもよかった。

 その場合は、不死すら関係なく、殺せていたことだろう。


(責慈さんの言葉を借りれば、相性がいい、ということになるのでしょうね)


 そう考えれば、創造根底館の中で唯一物理的に殺せる心殺を向かわせてしまったことは、なんとも運が悪かったのだろう。


「私が帰還できたのも、そして神羅さんがダンジョンから出て来れたのも、ラストワンの遊び相手に選ばれたからでしょう」


 心殺がメッセージを送る。


「でなければ、私はともかく、神羅さんを殺さない理由がありませんから」


 あの日、ダンジョン内で墓蒔と再び会ったとき、『試神とは別れた』と言ったのだ。

 別れて帰した。

 生きて帰した。

 殺さなかった。


 殺せなかったのではない、殺さなかったのだ。


 もし殺していれば、<ラストワン>が完全に発動できていたはずなのに。

 生きて別れたから『一人になる』という条件を中途半端にしか満たせず、<ラストワン>も中途半端に発動したまま心殺と対峙することになった。


 墓蒔はそれすらも楽しんでいたようではあったが、ひとつ疑問が残る。


 なぜ、試神を殺さなかったのか。

 

 試神を殺せば<ラストワン>が完全に発動する。そうなった場合、下手すれば心殺を殺してしまう可能性がある。

 それではつまらないと思いわざとデチューンをかけた可能性もあるが、一番の理由はやはり試神を殺すことで遊び相手が減ることを避けたかったところにあるのだろう。


 試神を殺さずにいれば、心殺も殺さずにすむ。

 遊び相手が二人残ったままになる。


『ラストワン』にとって、これ以上の結末はないに違いない。


「そうなると、逆に神羅さんは安全なのかもしれませんね。今後、ラストワンにあっても殺される心配はしなくてすむので。まあ、自ら進んで会いに行かない限り、もう二度と会うことはないでしょう。姿を見つけるだけでも、それは相当運が悪いと思いますが」


 チャットを打った後、

 そういえば。

 と、心殺がメッセージを続けた。


「すっかり忘れていましたが、神羅さんが持っていた|人生において必要な不幸《スパイク・スパイス》はどうなりましたか? ちゃんと回収してくれましたか?」


「それでしたら、ラストワンにあげたと言っていましたよ」


「あげた?」


 ええ、とタタンが送る。「欲しがっていたのであげた、と」


 ダンジョンから帰ったとき、無事を確かめるとともに真っ先に確認したのがそれだった。処理の手配までしっかり準備してのことだったが、試神が「あげちゃったよ」と言って拍子抜けしたのを覚えている。


 あんなものを欲しがる人がいるとは思えないが、それはあの人形がどんなものか知ってるがゆえにそう見えるだけなのかもしれない。


「渡して、大丈夫なんでしょうか?」


「問題ないと思いますよ。少なくともラストワンは固有魔法があるということは、魔法使いなのでしょう?」


 そもそも、あれは魔法使いの試験のためのものだ。それを魔法が使えない、地球人の試神が持ってしまったために、必要以上の不幸が訪れてしまったように見えただけである。


 条件があるとはいえ固有魔法があるラストワンは普通の魔法使いのはず。とすれば|人生において必要な不幸《スパイク・スパイス》の不幸も、そこまで強くないはずだ。


「まあ、普段はまったく魔法を使えない、試神さんと同じような状態とかでもない限り、大丈夫ですよ」



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