↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で目覚めた俺。スキルも魔法も使えなくて絶望する ~神羅 試神の転生召喚~  作者: ねすと
神羅 試神のダンジョン探索 ―― 第八章 ――

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/155

第101話 血液使い

 その瞬間、墓蒔の周りから―――鉄の棘が飛び出してきた。

 友情崩壊ダンジョンの土壁から、上から下から右から左から。

 細い太い様々な、けれど先端は鋭利に尖りきった棘が、墓蒔の体に向かっていく。


「お?」

 こりゃまるでアイアンメイドならぬ、アイアンメイデンだな。


 墓蒔が笑いながらそう思って。

 一歩もその場から動かなかった。


 無数の棘が墓蒔の全身を貫く―――はずだったが。

「ま、きかないんだけどな」

 その体に、棘は一本も通らなかった。


 極限まで研ぎ澄まされた棘は、皮膚の先で、すべて止まっている。

 服は突き刺さっても、それより先は、まったくの無傷だった。

「うはは」


 腕を振る。

 パンチ、などではない。そんな名前が付くような動作ではない。

 ただ、近くにあった『邪魔なもの』を腕を振るって―――棘を檻を、破壊していく。


「うはははははははは!」


 踏み出した足が棘の道を平らにしていく。

 頭を振れば、顔に当たった箇所から棘が割れていく。


 墓蒔が触れたもの、すべてをぶっ壊していく。


「いいね、いいね、いいねえ! うははははははははははは!」


 高笑いしていると、「お?」今度は触手が土の壁から飛び出してきた。

 一本だけだが、いままで見たどの触手より太い。

 それだけで墓蒔の腹回りほどありそうなほどの触手が、体に巻き付いていく。

 

 逃げる前は首回りだけだったが、今度は全身だ。

 腰に、胸に、足に。

 逃げるどころか身動きすら許さないように何重にも巻き付いたあと、墓蒔を絞め殺そうと一気に締めあげる。


 だが。

「無駄無駄ぁー!」

 墓蒔が力任せに両手と足を左右に押し広げて、拘束を解いたかと思と、そのまま力任せに触手を叩き折った。

「柔らかけえなあ、おい! 鉄ってもんはこんなに脆いのかよ!」

 

「……うるさいのです」


 心殺が言って。

 鉄の触手と棘が、溶けるように消えた。


「んん?」

 きょとんする墓蒔の前に、また一本、触手が生えてくる。

 腕くらいの細さの触手は。


 そのまま、墓蒔の口の中に飛び込んできた。


「―――ォガッ!!」


 喉を抜け、胃に到達し、内部から破壊しようと暴れ―――回ろうとして。

「―――ぉごぅ」

 うぜえ。

 と。

 墓蒔が笑いながら顎を閉じて、触手を食いちぎった。


 そして、シャツを捲し上げると、右手で、自らの腹を抉りだす。

 ぐちゅぐちゅと腹筋を、胃を破って、中に納まっていた触手を取り出す。

 

 食堂まで詰まっていた触手すべてを引きずり出して。

「さすがの俺様も、鉄を食ったのは初めてだな」


 血にまみれた右手が触手握りつぶした。


 その瞬間、触手は空気中に溶けて消えていく。

 墓蒔やった……のではない。

 自壊したのだ。


「……いくら鉄使いでも、鉄を消すなんてことは普通できんだろうさ」


 墓蒔の腹の穴は、いつの間にか治っていた。

 乱れた服装を直しつつ、穴だらけになった友情崩壊ダンジョンの壁を見る。


「創造根底館の職員だからって思ったが、これはあまりに規格外すぎる。鉄使いとしての範疇を超えている」


 ―――まるで別もんだ。

 墓蒔が言って。


「お前、鉄使いじゃないな?」

 心殺を指さす。


 心殺はなにも言わなかった。

 だから。

 墓蒔は、その先を継いだ。


「アイアンメイド、お前は―――磁(・)力(・)使(・)い(・)だ(・)」


 さらりと、墓蒔の頬を何かが撫でた。


 なにかされたかと思い、頬を触ってみるも切れてはいないようだった。触った指にもなにもついていない。


 気のせいか、とも思ったが。

(……風?)


 髪が揺れている。頬も、少し空気の流れを感じる。どうやら撫でられたと思ったのはそのせいらしい。


 洞窟の中で、風を感じるなんて。


 墓蒔の疑問は、すぐに解消された。


 キラキラとしたものが、心殺の周りに集まり出していた。

 反射でしか見えないくらい小さな塊が、墓蒔の周りから心殺に向かって飛んでいく。


 キラキラしたものの正体は、小さな鉄の塊だった。

 それが集まり、くっつき、大きくなっていく。


「……磁力使いだからこそできる芸当か?」

 確認するように墓蒔が言って。

「…………」

 心殺はなにも言わなかった。


「うはは。姉ちゃんが鉄じゃなくて磁力を自在に扱えるって考えると、いろいろ納得がいくんだよな。触手みたいなうねうねした動作も、鉄の塊をくっつけたり離したりの繰り返しでやっていただけだろうし。それになにより、俺様の体――まあ人形だけど、が破裂したのと、ガブッとラビットが破裂したのもなんとなく予想がつくんだよな。つまり」


「私、本当は血液使いになりたかったんです」

 唐突に、心殺が話し出す。


「漫画やアニメでよく見るような、自分の血液を自在に操って攻撃をするあれです。それを目指して固有魔法を作り上げようとしたのですが、うまくいかなかったのです」


 血液を操るイメージはあった。

 できる確信はあった―――のだが。


 一か所、躓いてしまったのだ。


「私には、どうやって血液を操作すればいいのか、それが、よくわからなかったのです」


 魔法で操作することは確かなのだが。

 どうやって自由に操ろうか。


 血液の周りの空気を操作してみようか。

 いや、一本支柱を用意して、それに這わせるようにして?

 それとも、本物の血液ではなく、単純にそれに似た赤い液体生み出せばもっと簡単に……。


「そもそも、どうして血液なんだろう。なんで、血液なんだろう」


 なんで血だと操作できるのだろう。

 単純に自分の体液だから操作できるからなのか、血に魔力を混ぜているだけに過ぎないのか。

 

 他人の血は操作できないのか。

 どこかに貯めている血は操作できないのか。

 そもそも、リンパ液などは操作できないのか。


 水(・)使(・)い(・)と(・)、(・)血(・)液(・)使(・)い(・)で(・)は(・)、(・)な(・)に(・)が(・)違(・)う(・)の(・)か(・)。


「ですがある日、気付いたのです」


 ――そっか、鉄分か。


「漫画やアニメのキャラクターは、きっと鉄分を操作しているんだ。血の中に入っている鉄分を磁力で操作して、自在に操っているんだ。そう思ったとき、私の固有魔法は完成しました」


「…………そういやあ、どっかの漫画じゃ、血液の鉄分からナイフとか作ってたなあ」


 うろ覚えだけど、墓蒔がそういうと、心殺は初めて心の底から出たような笑顔を見せて。

「……その漫画に」

 すぐに、真顔に戻った。


「その漫画にでてくるキャラクターは、暗殺者でしたか?」


「暗殺者? どうだったかな……いいや、違ったな。確か、運び屋って言ってた気がしたような」


「なるほどなのです。……確かにそれもありますが、少し違いますね」


「んあ?」


「それは血液の鉄分を使っているのではなく、単に自分の血を混ぜているだけなのです」


「そうなのか? ……まあ、どうでもいいよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。