表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドの働き方が変わる5つの魔法 ~受付嬢アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/25

【アサーション】角を立てずに「NO」と言う技術 2/5

「ですので、一つご提案があります」


アリサは笑顔を作り、カウンターの下から一枚の木札を取り出してカウンターに置いた。

 それは、ギルド併設の酒場で使える『特製エール一杯無料券』だった。


「今ここでお待ちいただく場合、どうしても順番通りになりますので、三十分ほど立ちっぱなしになってしまいます。ですが、こちらの精算書類とお荷物だけを先にお預かりし、お客様には酒場でゆっくりと休んでいただくことは可能です」(S:提案)


「……酒場で待つ?」


「はい。三十分後に私が直接、酒場のお席まで精算金をお持ちいたします。これなら、お疲れのお客様を立たせたままお待たせすることなく、私たちも他のお客様の順番を守ることができます。いかがでしょうか?」(C:選択)


アリサの提案アサーションは、完璧だった。

 相手の「順番を抜け」という要求に対してはハッキリと「NO」を突きつけているが、相手の「疲れているから待つのが嫌だ」という隠れたニーズはしっかりと満たしているのだ。


ベテラン冒険者は、少しの間ぽかんとしていたが、やがてバツが悪そうに頭を掻いた。


「……ちっ。わざわざ酒場まで金を持ってきてくれるって言うなら、まあ、一杯飲みながら待っててやってもいいぜ」

「ありがとうございます! では、三十分後に酒場へ伺いますね。お疲れ様でした!」


アリサが満面の笑みで無料券を渡すと、男は乱暴にそれをひったくり、そそくさと酒場の方へと歩いていった。

 嵐が去ったカウンターに、ホッと安堵の空気が流れる。


「あ、ありがとうございます、アリサ先輩……! 私、どうしていいか分からなくて……」

 涙目になっていた後輩の受付嬢が、深々と頭を下げた。


「ううん、怪我がなくてよかったわ。あんな風に怒鳴られると、頭が真っ白になっちゃうわよね」

 アリサは後輩の肩を優しく叩きながら、心の中でシレーヌから教わった言葉を反芻していた。


(――『DESCデスク法』。客観的な事実を伝え、自分の気持ちを添え、代替案を出し、相手に選ばせる。これが、誰も傷つけずにNOと言う魔法)


この数ヶ月、アリサはこの魔法を使って、ギルド内の理不尽な要求やトラブルを次々と円滑に捌いてきた。その手腕が評価され、「筆頭受付嬢」という異例のスピード出世を果たしたのだ。


「さすがアリサちゃん! 今の対応、見事だったよ!」


拍手と共にカウンターの奥から顔を出したのは、情報管理部門に所属するカイルだった。彼は相変わらず書類の束を抱え、少し寝不足気味の目をしている。


「カイルさん、お疲れ様です。でも、こういうトラブルが最近ちょっと多い気がします。みんな、スタンピードを乗り越えて気が緩んでいるのかも……」

「そうなんだよ。実は、アリサちゃんに相談したいことがあってさ」


カイルは周囲を見回し、少し声を潜めて言った。


「最近、Bランクパーティーの『紅蓮の刃』の奴らが、ちょっと厄介なことになっててね。アリサちゃんのその『魔法』で、なんとか解決できないかと思ってさ」

「『紅蓮の刃』ですか? 確か、若手の中では一番勢いがある三人組ですよね」


アリサの脳裏に、派手な赤い装備に身を包んだ、少し血の気の多い若者たちの顔が浮かんだ。


「ああ。あいつら、実力はあるんだけど……最近、ギルドの依頼の『断り方』が酷くてね。他の冒険者や職員とトラブルになりかけてるんだ」

「断り方が、酷い……?」


カイルは困ったように眉を下げた。

 どうやら、アリサの『アサーション』の魔法を試す、本格的な試練がやってきたようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ