ゲームフェイズ3:『10』広がる友好の輪
ということで。
ちょっとの間、骸骨の騎士と下半身蛇のあんちゃんはにこにこと話していた。
とはいえ、骸骨の騎士は特に言葉を発さないタイプの人なので、下半身蛇のあんちゃんが一方的に『ところで最近何してるんだお前。デスゲームのバイトに戻ってきたということは、放浪の旅は終わりか?』だの、『えっ!?牡蠣食べられるようになったのか!なら牡蠣を食らいに行くぞ!この前の夏に行った気仙沼の焼き岩牡蠣が美味かったのだ!』だの話しているだけである。
まあ、骸骨の騎士は骸骨の騎士で、身振り手振りが豊かなのである。あと多分、とても人が好い。なので、下半身蛇のあんちゃんもにこにこ、骸骨の騎士もにこにこで、両者の話は続き……さて。
「む?そちらは……ふむ。そうか。お前の好敵手とな」
そんな折、どうやらバカが紹介されたらしい。骸骨の騎士のご紹介に与ったバカが『こんちわ!』と元気に挨拶すると、下半身蛇のあんちゃんは『おお、元気のいい奴だ』とにこにこした。なのでバカもにこにこした!元気であることを評価してくれる人は、いい人!
「そうか。ふむ、ふむ……ほー、成程。向上心に溢れた者だな。我と戦いたいとは」
「えっ!?いいのか!?」
更に、下半身蛇のあんちゃんは骸骨の騎士から何か聞いたらしく、にこにこしながらバカの前に立った。
「ああ。死神がな、『この者が最強の者と一度戦ってみたい、先輩の胸を借りてみたいと言っていたのだが協力してくれないか』と」
「うん!そうなんだ!俺、やっぱり流石に、最強の生き物には勝てないかもしんないけど、でも、いっぺん、戦ってみたくってぇ……」
バカが目をキラキラさせて蛇のあんちゃんを見上げると、あんちゃんはなんだか嬉しそうに頷いた。
「よかろう。そういうことなら我が相手をしてやる。……とはいえ、今ここにあるのは、我が分身。『最強』である我の100分の1程度の力しか持たぬものだ。期待に副えるかは分からんぞ?」
「うん!それでもいい!わあー……!すっげえ、俺、最強のやつと戦えるんだぁ……!」
バカはもう、嬉しくて嬉しくて、天にも昇る気持ちで期待に胸を躍らせる。やはり、強者との闘いというものはよいものだ。自分の全力を尽くして尚、勝てない相手というものも存在しているが……そうした存在が、バカをより一層強くしてくれるのである!
が、ここで、バカは『あっ!』と思い出して……ちら、と、海斗達を振り返った。
「あ……俺、ちょっと戦ってきても、いい……?」
……バカは戦いたいが、海斗達は戦ってほしくないかもしれない。そもそも、お待たせしてしまうことは間違いない。バカは『いいかなあ、戦いたいけど、でも、駄目かなあ……』と、海斗達を見つめ……。
「好きにやってくれ。僕はそっちに居る」
「俺もそっちに居るから、終わったら教えてくれるかな」
「おい戦車。お前もこっち来てろ。巻き込まれたらあぶねえぞ」
……そして、無事に許可を得ることができた!バカは『ありがとう!』と満面の笑みで、下半身蛇のあんちゃんに『許可とれたぁ!』とにこにこで駆け寄るのだった!
骸骨の騎士は、『我、良い仕事を果たせり!』とにこにこであった!
……そうして。
バカと下半身蛇のあんちゃん……『テュポンの分身』は、相撲を取った。
骸骨の騎士が『のこった!のこった!』とやる中、両者はがっつりと組み合い、時々バカが投げ飛ばされたり、転がされたりして……そして。
「うおおおおおおおおお!勝てた!勝てたぁー!」
「おお、おめでとう!いやはや、見事な成長だ!」
なんと!バカは見事、テュポンの分身を転がすことに成功したのであった!これにはバカも、転がされたテュポンの分身も大喜びである!
「未来ある若者を見ているのは気分が良いなあ!そうは思わんか、死神!……うんうん、お前もそう思うよな!ははははは!」
テュポンの分身はにっこにこで骸骨の騎士の肩を叩き、骸骨の騎士も『おめでとう!』とばかり、にこにこで拍手してくれるのであった!
「……デュオ。すまない。こういうことは、デスゲームにはよくあることか?」
「うん。無いよ」
「天界ではたまにある……か……?」
「そっちにはあるんだ……」
……尚、置いてけぼりになっている3人の横では、戦車が『おめでとう!』と、くるくる旋回しているのであった!かわいい!
ということで。
「どうもありがとうございました!」
「よいよい。我も久々に、随分と楽しませてもらったぞ。さあ、持って行くがいい。『10』のカードだ。我からこのカードを受け取った者は、未だかつて居なかった。よくやったな」
「ほんとかぁ!やったあ!わあ、わああ……嬉しいなあ!嬉しいなあ!」
バカは綺麗に90度の角度でお辞儀をして、カードを受け取って……大満足の満面の笑みであった。
「おお、そうだ。ところで死神。今日はこの後、暇か?久々に飲みに行かんか?……ん?先約がある?ミニストップでソフトクリーム?そうか、なら仕方がないな……」
「あっ、そうなんだ。ごめんなあ、俺、もう骸骨の騎士、誘っちゃってて……あっ!だったら一緒に来るか!?このデスゲーム解体し終わって仕事上がりになったら、俺、皆でミニストップのソフトクリーム食いに行くんだけど!」
「ん?そうかそうか。なら折角だ。我もご一緒させてもらうとしよう」
……そうして仲間が増えた。
バカは『やったあ!』とにっこにこであったし、海斗は『まあ、前回同様……』と何とも言えない顔であったし、四郎は『天界仕様……』と頷いていたし、デュオは『人生初……!』と慄いていた!そういうかんじである!
そうしてバカ達は『10』の部屋を後にした。1人増えたエレベーターは若干狭かった。
……そして。
「ただいまー!」
「あっ、おかえりなさ……増えてる!?」
……戻ったバカは、タヌキを驚かせてしまったのであった!まあ、当然の反応である!
それから、テュポンの分身が皆に挨拶して、皆、『あ、どうもどうも』とやったところで……。
「じゃあ次は『14』の部屋か」
「あっ、これは分かる!えっとな、コップ外して、タンク外して、水の中に一気に沈没させるとクリアする部屋だ!」
「そうか。多分違うんだろうが、それでクリアできるならいいな。行ってこよう」
……バカは早速、海斗と一緒に『14』の部屋へ行くことにした。尚、『折角だから他の部屋も見てみたい』と言ったテュポンの分身と、あと骸骨の騎士も一緒である!つまり、デスゲーム会場が観光地か何かになってきてしまっている!やんぬるかな!
「おっ!着いた着いた!よーし、じゃあ早速カードとるぞー!えいっ!」
そして、『14』の部屋に入室するや否や、バカは早速、水の入ったタンクを『バキイ!』ともぎ取り、そして、固定されていた杯も『バキイ!』ともぎ取り、そして、それら杯を全て、水のタンクの中に『じゃぼん!』と突っ込んだ。
すると、ふぃーん、とカードが入ったケースが開くので、無事、カードを回収できる。
「……樺島。お前はこれを何回目で発見した?」
「ん!?……えーと、ここは最初っからこうだったなあ……」
「そ、そうか……」
「うん!海斗が指示出してくれてな!それでクリアしたんだ!」
バカは、『やっぱり海斗は頭がいい!』とにっこにこである。海斗は『……僕の発案だったのか』とちょっと慄いていたが、その横ではテュポンの分身と骸骨の騎士が、『素晴らしい!』と拍手してくれていた!おめでとう!ありがとう!
「ただいまー」
「早ッ!?樺島さん、ものすごくスピーディーじゃないですか!?」
「あ、うん。さっきの部屋、すごく早く終わる部屋だったんだよぉ……。バキッ!バキッ!ジャボン!で済むからぁ……」
「アーッ!今の絶対になんか変な効果音でしたよねえ!?絶対に正攻法じゃないやつですよねえ!?」
そうして大広間に戻ったバカは、タヌキを大いに驚かせてしまった。驚きに尻尾が『ぶわっ!』と膨らんでいるところを、七香が撫でて『いい毛皮ね』と微笑んでいる。タヌキは『毛皮は!毛皮はご遠慮ください!』ともだもだしているが、七香は腕からタヌキを放してやる気配が無い!
「ところでこっちは何の話、してたんだ?」
「うん?こっちは……『10』と『14』の部屋の攻略中は、女性陣が綺麗になってたみたいだね」
バカ達がスピーディーに色々解決している間、お留守番だった面々については……なんと。五右衛門が、手持ちの道具だけでヘアメイクなどやっていたようである。
今、ヤエと真理奈はちょっと凝った髪型になっていて、そこに桜の枝や、タヌキのポケットから出てきた髪飾りが飾られて、なんとも可愛らしい!
また、七香については、長い黒髪がカジュアルに結い上げられていた。こういう、少しくだけた印象の髪型は、七香には珍しい髪型なのではないだろうか。……実際、タヌキを撫でつつ、七香は時折落ち着かな気に、髪に手をやっている。新鮮なのだろう!バカもちょっぴり気持ちは分からないでもない!
……更に。
「わあ……私、こんなふうに髪型を変えること、初めてで……わあ……」
……女教皇も、被っていた帽子を外し、綺麗に編みこまれた髪を鏡で見て、うっとりしていた。五右衛門はすごい。
「ふむ……そこの男、名を五右衛門と言ったか?妾に仕えぬか?傍仕えとしてやってもよいのだぞ?」
更に、女帝も、その豊かな金髪を編んでまとめている。これも五右衛門がやったらしい。やはり五右衛門はすごい。
「あー、確かにねえ。アタシ、丁度失業したようなモンだしぃ……誰かの専属になっちゃうのも、アリっちゃアリなんだけどね。その点、女帝ちゃんなら相手にとって不足ナシ、ってかんじだし……」
そんな五右衛門は、女帝からのお誘いに『どうしよっかしら』と割と本気で悩んでいる様子であった。
……彼も、色々と大変な状況にある人だ。悪魔の専属メイクさんになっちゃうのも、悪くはないのだろう。
とはいえ。
「……まあ、悪魔の手など取らぬ方が良いだろうよ。真っ当な人間ならな」
女帝はそう言って、ふん、と笑った。
「だが、もし本気で悪魔の手を取ろうと思うのであれば……その時は、妾が直々に雇いあげてやろう。優秀な技術を持つ者は、嫌いではないぞ。望むなら、他の悪魔にも紹介してやってもよい」
女帝が『話は終わりだ』とばかり、手をひらひらさせると、五右衛門は『あら、そお?』とちょっと笑って……そして、さっきよりも真剣に、『女帝の専属もいいかもねえ……』と考え始めるのであった!
「じゃあ、次行く?」
さて。そうこうしていると、真理奈が元気にやってきた。彼女は髪型も新たに、うきうきるんるん、楽しげな生命力に満ち満ちている!
「次は……えーと、『19』だっけ?あと『20』と『0』が残ってるだけかあ。ラスト3つだね!行こ行こ!」
真理奈は元気に、『次は私も行く!』とやってきた。燕も引っ張られてやってきた。
……まあ、次の部屋は、全員で行くべきだろう。
何せ……。
「確か『19』の部屋って……ヒマワリいっぱいの部屋だよなあ!皆で行こうぜ!」
……春のお花見が終わって、次は夏のお花見をするタイミングだからである!




