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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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ゲームフェイズ2:『17』皆でお花見

「あのなー、でっかい宇宙飛行士は、来ないってさあ……」

「でっかい宇宙飛行士?でっかい宇宙飛行士って、何です?えっ?」

 バカが『しょんぼり……』とやってきたのを見てタヌキが頭の上に『?』マークを大量生産し始めているが、バカは構わず、『あと、教皇?もまだ復活してなかったから誘わなかった……』としょんぼり報告して、タヌキを益々混乱させた。

「俺じゃない悪魔が作った部屋の内容だ。『月』の部屋だったと思う。『教皇』は、まあ……別にいいだろ、あいつは」

「そっかぁ?うん、まあ、そっかぁ……いじわる言う奴は誘わなくってもいいよなあ……」

 ということで、バカと燕は『これでいいこれでいい』と頷き合い、タヌキは『意地悪を言う……教皇?』とまた頭の上に『?』マークを増やしていくのであった!


「で、このおっさんと骸骨とおねーちゃんは誰よぉ」

「そこの男!頭が高いぞ!」

「あらッ、生きのいいおねーちゃんねえー……」

 さて。そうして、でっかい宇宙飛行士と教皇は呼べなかったが……皇帝と死神と女帝は呼んできたバカである。にっこにこの満面の笑みだが、女帝はかなりおかんむりであった!

「一体何なのだ!部屋のしきたりを無視して、ドアを破壊して脱出するなど!」

「まあ、樺島のことだから諦めてくれ」

 シーツぐるぐる巻きのまま、ぷんぷん怒っている女帝であるが……海斗には、ちょっと冷たい目で見られているばかりである。

「というより、僕としては、あの部屋は品性に欠けると言わざるを得ないぞ」

「なんだと!?伝統的な悪魔の罠を愚弄するか!」

「伝統的なのか……燕、そうなのか?アレは、その、『3』の部屋は……そういうものなのか?」

「そんなわけないだろ。俺はあんな部屋の設計はしてない」

 ……燕にも、ちょっと冷たい目で見られている。女帝は『ふざけるな!貴様、悪魔を裏切る気か!』などと燕に言っているが、燕は『そもそも悪魔ってそういうものだろ』とにべもない。

 そして。


「『女帝』にこのような無礼を働いてタダで済むと」

「賑やかなお方ね」

 尚も怒る女帝の前に、七香が立った。

 ……その途端、女帝は、口を噤んだ。それは、圧倒的な力の差を一瞬で……理性ではなく、本能で理解してしまったからである。

 だが、追い付かない理性は女帝を奮い立たせてしまう。即ち、『たかが人間1人に怯える必要は無い』と。

 よくよく見てみれば、自分を簀巻きにした人間(天使だが……)とそれを見ていた人間、悪魔の仲間であるはずの燕などの他に、如何にもか弱そうな女やタヌキまでもが居るのだから。

 ……そう。タヌキである。

「そこの女!そのタヌキはお前のものか?」

「ええ、そうよ」

「エエッ!?そうなんですか!?」

 タヌキは『私、七香さんのものなんですか……!?』と慄いていたが、七香は全く動じることが無い。微塵たりとも動じない。なのでタヌキも、『あっ……そう言われればそんな気がしてきた……』と流されている。なんと流されやすいタヌキであろうか!ぽんぶらこ!ぽんぶらこ!

「ならばそのタヌキを差し出せ」

 が、女帝がそんなことを言ったので。

「お黙り」

 七香の『見えざる手』の平手打ちが女帝を打ち据えたのであった!


「やっぱり女帝って、尻、叩かれちゃうんだなあ……」

「前にもこんなことが起きたのか……?」

「うん……。お尻叩かれて泣いてた……」

 そうして女帝は、憮然とした表情の七香に尻を叩かれて泣くことになった。よせばいいのに、よりによってタヌキに手を出そうとするからこうなるのである。一番安全そうに見えるやつは大体安全じゃないのである。女帝もこの世の真理を1つ学んだことであろう……。




「ま、まあ!七香さん!ここらへんにして、ご飯にしましょう!ね!ね!」

 が、そんな女帝に救いの手が差し伸べられる。それはタヌキのぽんぽこした手であるが……。

「……そうね」

 七香は最後に一発、すぱしん、といい音を立てて女帝の尻を叩くと、それで終いとしたらしい。タヌキが『行きましょ!行きましょ!』と一生懸命健気に七香を誘導し、七香は悠々とその場を後にした。取り残された女帝は、ぐすんぐすんと泣きながら、皇帝に何とも言えない顔で慰められていた!

「え、ええー、それでは会場の皆さま!本日はお集まりいただき、まことにありがとうございます!」

 そんな女帝と皇帝はさておき、タヌキは混乱しながら勝手に音頭をとり始めた。が、それをやっているのがタヌキなので、全員、『そういうものか……』と、なんとなく従ってしまうのであった。徳の高いタヌキである!

「本日はお日柄も良く、非常にお花見日和で……デスゲーム中とは思えない光景ですが!今はこのお花見を!存分に!楽しむこととしましょう!」

 タヌキの挨拶に、全員がいそいそと動く。五右衛門が『はい、どうぞ』と、グラスに入ったジュースを配り歩いているのを全員が受け取り……。

「お飲み物はお手元にございますでしょうか!……あ、ありますね!よろしい!それでは!かんぱーい!」

 ……タヌキの掛け声に合わせて、全員がグラスを高く掲げたのであった!乾杯!




「うめえ!これ、うめえ!海斗も食うか!?」

「なら僕も少し貰うかな」

 ……ということで、バカ達は元気にご飯タイムとなった。

 テーブルの上にはぽんぽんと沢山ご飯が出て来るので、皆で片っ端からそれを食べていく。

 こういう時、やはり、一番よく食べるのはバカである。いつも社食でエンジェルメガ盛りMAXを注文している奴の食事量は伊達じゃないのである。

 次点でよく食べるのは、四郎であった。彼も彼で、中々のムキムキである。あのムキムキの秘訣は、よく食べよく動くことなのだろう。バカは『やっぱりご飯は大事!』と納得した。

 また、タヌキは『貧乏人は食べられる時に食べておかなきゃなので!あと単純に、美味しいもの大好き!幸せーっ!』と大喜びで、体の割に大量のご飯を食べている!

 ……一方、あんまり食べないのは海斗と燕と七香、そしてヤエである。

 海斗は食が細い。社食で一緒に食事をしていても、そんなかんじである。食欲があんまり無い時は、キュ盛り(人間でいうところのSサイズ)を頼むことも多い。

 燕も同じようなものらしく、海斗と自分の皿を見ては、海斗にちょっと親しみを覚えている様子である。真理奈はその横で、『燕は相変わらずだねえ』と言いつつ、特にそれを責めるでもなく、もりもりと食べている!とても元気だ!

 七香は、元々食べないタイプであるらしい。……が、タヌキに『七香さん!これ美味しいですよ!お肉がとろけますよ!』と、幸せいっぱいの様子で勧められては、『なら頂こうかしら』と、ちょっとずつ色々食べている。

 タヌキはそんな七香のために、『いっとう美味しい選りすぐりを七香さんにお届けする係』と化していた。タヌキはそれはそれで楽しそうだったし、そんなタヌキを見つめながら待つ七香もまた、なんだか楽しそうに口元を綻ばせているのだった!


 そして、ヤエは……。

「ヤエちゃん、そんなちょっぴりでいいのぉ!?」

「あ……体重管理してた癖が、抜けなくて。その、長距離は、体重軽い方が有利だから……食べないように、コーチに言われてて、その癖、なんか、抜けなくて……」

「そう……」

 ……ヤエはヤエで、非常に小食であるようだった。だがそれは、本人が望んでそうなっているわけではないようである。バカもなんだか心配になって、ヤエのところへそっと、様子を見に行った。

「……ポテサラ、好きなんですけど。炭水化物だから、あんまり食べないようにしてて……」

 ヤエは、お皿の上にちょこんとだけ盛られたポテサラを見つめて、なんとも複雑そうな顔をしている。……そして。

「そっかあ!じゃあ今日はいっぱい食べられてよかったな!」

 バカは、『なんだぁ!じゃあ大丈夫だな!』とにっこにこの笑顔である。そんなバカを見て、ヤエはぽかんとしてしまった。

「……すまないヤエさん。こいつはこういう奴で……その、デリカシーというものが、驚くほど無いんだ。悪い奴じゃないんだが、驚くほど、バカなんだ……!」

 そこへすかさずやってきた海斗がバカをすぱしん、と叩きつつ、ヤエに謝った。なのでバカも、『えっ!?俺、なんかよくないこと言っちゃったんだな!?ごめん!』と謝った。この潔さがバカの美徳の1つである。

「え、あの、ええと……」

 ヤエはそんなバカと海斗を見て、ちょっと戸惑っていたが……。

「……しかし、まあ、その、樺島じゃあないが……食べてみても、いいんじゃないか。その、リハビリだと思って」

 海斗がそう言うと、ヤエは、意を決したように、ポテトサラダの大皿を見つめ……取り分け用のスプーンを取って、わしっ!と取り皿に盛り始めた!

「いっぱい……食べます。リハビリだと思って……ふふふ」

「うん。そうだな。それがいいと思う」

 ヤエは、ちょっと緊張気味であったが……いっぱい盛ったポテサラを、もく、と口に運んで、にこ、と笑った。

 ……かわいい!




 さて。

「ところで、皆、飯食うのかなあ……あ、食ってる。よかったぁー」

 骸骨の騎士はものを食べるのだろうか、とちょっと心配になったバカであったが……彼もまた、食べていた。黙々とミートローフを食べて、笑顔になっていた。美味しかったらしい!

 また、女教皇も皇帝も女帝も、『ここまで来ちゃったからにはもうしょうがない』とばかり、ご飯を食べている!

 ……尚、女帝は『あーもう、シーツでなんとかしたげるからちょっと立って!腕上げて!はい!あ、七香ちゃん!タヌちゃんからブローチ2個貰ってきて!』と五右衛門にやられて、上手にシーツを着ることができた。古代ギリシア風の衣装は、女帝にぼちぼち似合う。

 更に、皇帝が『流石に、悪魔とはいえ、女に薄着をさせておくのはな……』と、マントを貸してやったので、女帝はそれなりにぬくぬくの恰好で居られることとなったのであった!おめでとう!




 そうして思う存分、バカ達はお花見をした。

 ご飯はとっても美味しかったし……何より、花が美しかったのだ。

 青空の下、そよそよと風に揺れる桜の花の、なんと見事で美しいことか。食べるの大好き樺島剛ですらも食べることを忘れて見惚れてしまうほどの桜である。当然、この場の全員が桜に夢中であった!

「……来年もお花見、皆でしようなあ」

「いや、来年っていうか、もうあと4か月くらいで桜、咲きません?」

「あ、そっかぁ。今、12月だぁ……じゃあすぐにお花見できるな!」

 バカは『そうだった!』と気づいて、満面の笑みになる。

 お花見はよいものだ。花は綺麗で、食べ物は美味しくて……皆が一緒に居られるから!だからバカは、お花見が大好き!

 ……だが。

「どうだろうね。俺と七香さんとタヌキは、多分、樺島君達が居る時間から10年後ぐらいの人間だからな……」

「えっ、どういうことだ!?」

 デュオが何だか、不穏なことを言ったのでバカは慌ててデュオに聞く。

 ……すると、デュオは『あれ、これもしかして……?』と、なんだかちょっと考える様子を見せて……。

「……いや、やっぱりなんでもない。君が願えば、なんか、上手くいきそうな気がするよ。うん。よろしくね、樺島君」

「えっ!?うん!?あ、大丈夫だったか!?」

「うん。大丈夫だった。気にしないで」

「そっかぁ!うん、分かった!」

 ……バカは、『じゃあいっかぁ!』と、気にしないことにした。そしてすぐ、さっきの不穏な様子を忘れた。

 忘れちゃったので……なんだか上手いこといくのかもしれない。それはまだ、未来のことだが……。




「あー、お腹いっぱいになった!えへへ……」

 さて。そうしてバカもお腹いっぱいになり、『樺島、お前、あれだけ食べて動けるのか……?あ、動けるのか。そうか……』と海斗に何とも言えない顔をされ……。

「じゃ、食後の運動だな!次、どこの部屋行く!?」

 食べたら、次は運動だ。

 バカは元気に燕に尋ねに行くと……燕はちょっと考え始めた。

「……18番はもう、入ったんだったか」

「ん!?あ、でっかい宇宙飛行士のとこか!?うん、お花見しませんか、って誘いに行った!でもな、あいつ、消えちゃったんだよぉ……。あ、でもカードは貰って来たぞ!はい!」

「あ、うん……」

 バカがカードを渡すと、燕は何とも言えない顔をしていたが……やがて、『よし』と頷いた。

「じゃあ……8番を早めに攻略したい」


 ……バカは、覚えている。

『8』は、多くの人が死んでしまった部屋だ。怖い部屋だ。

 だが、だからこそ……。

「よし!分かった!やってやるぞー!」

 バカはあの部屋にも勝利し、このデスゲームへの完全勝利を収めたい。

 さあ……リベンジの時間だ!

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― 新着の感想 ―
この物語の主人公はたぬきだった!w そして、樺島の異能はもしかしてやり直しではなくて、認知したように世界を改変する異能なのでは?w 人間も悪魔も天使もたぬきも戦車もみんな友達!
たぬきの感性が豊かすぎて好きです 美味しいものだーいすき! たぬき厳選の美味いものカタログが欲しいです
七香さんの異能は感情の強さで威力が決まるんだったはず。 つまり女帝はお尻で、七香さんのタヌキへの想いの強さを感じ取っていたということか…………。 是非、女帝に感想を聞きたい!!!
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