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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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発表フェイズ1:『15』空っぽの部屋

 ということで。

 バカ達は全員揃って、『15』の部屋へやってきた。バカはこの部屋が『15』番だということなどすっかり忘れていたが、そこは燕とデュオが頑張ればなんとかなるのがすごいところである。

 尚、流石に、エレベーターは分けた。ぎゅうぎゅう詰めになってしまうからである。2台のエレベーターで行けば、流石にそこまでぎゅうぎゅうということもない。バカ達は無事、全員揃って『15』の部屋に辿り着き、そこで丁度、リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴って発表フェイズに入ったところで……。

「わぁあー!すごい!すごいですねここ!すごい!」

「すごいねえ!キラッキラだー!」

 入室し、すぐタヌキと真理奈が筆頭に大喜びしているが……それもそのはず。この部屋はとにかく、宝物でいっぱいなのだから!

「あっら……すっごいじゃないのよ、ここぉ……」

 ということで、一番お金に困っているであろう五右衛門は、早速、金のインゴットを手にしている。

「ああ、それは金のインゴットじゃない。タングステンにメッキしてあるだけのやつ」

 が、そこで燕がそっと五右衛門を止めた!五右衛門は『えっ何よそれ』と驚いているが……燕は、『比重が金に似てるから偽物の金インゴットによく使われる』と解説して、それから、きょろ、と辺りを見回して……。

「……これとか」

 五右衛門の手の上に、金の指輪を、そっ、とのっけた。

「あと……これとか」

 続いて、五右衛門の手の上に、美しい青色の石を乗っけた。

「えっなにこれ」

「サファイア。見ると分かると思うけど、ベルヌーイ法で作った人工サファイアにありがちな結晶構造はしてないから天然サファイアで良いと思う。この色と透明度でこの大きさだったら、まあ、石だけど売れると思う。金の方が確実だろうけど」

「アンタ、そういうの詳しいの?」

「……真理奈が宝石図鑑見るの好きだったから、一緒に見て覚えた」

 五右衛門が『じゃあ真理奈ちゃんも詳しいの?』と真理奈の方を見ると、真理奈は首をぶんぶん横に振って、『私はきれーだなー、って眺めてただけなの!燕はなんかそこから勉強しちゃってたけど!私はそういうの全然!』と必死に主張していた!

「わあー!このエナメルのキャンディーポット、かわいいですねえ!この淡いピンクのバラの柄!アンティークなかんじでとってもかわいいですよ!七香さん、こちら、いかがですか!」

「……そうね」

 タヌキはタヌキで、審美眼に優れたタヌキらしく、七香にあれこれ勧めていた。そして七香は七香で、こちらもやはり審美眼に優れた七香らしく、口数少なくあれこれ見て回っては、そっ……とタヌキに色々と与えていた。王冠を被せてみたり、マントを着せてみたり……。


「ヤエちゃん、これ似合うんじゃないかなあ!」

「そ、そうかな……。ちょっと、私にはもったいない気がする……」

 そして、女子2人はきゃいきゃいとはしゃぎながらアクセサリーを見ていた。ヤエの手首にはキラキラした細いチェーンのブレスレットがくっついているし、真理奈の胸元にはお揃いのチェーンのネックレスがキラキラしている。

「……何か持っておくなら、このあたりがよろしいんじゃないかしら」

 と思っていたら、いつのまにやらタヌキを降ろしてきたらしい七香がそっとやってきて、むつとヤエのアクセサリーを選び始めた。一粒だけダイヤモンドがぶら下がったシンプルなネックレスがヤエの胸元に収まり、真理奈のセーターの上には真珠の長いネックレスが2連になって収まった。

「わあー……七香さん、頼りになる……」

「すごい……」

 七香はちょっと満足気であった!




「これ、金じゃねえか?ほらよ」

「あ、ありがと……」

「五右衛門!五右衛門!これも金かなあ!」

「おいバカ!それは全部真鍮だ!」

 ……そして一方の男性陣は、全く以て色気が無い。『金目の物!』と全員が頑張っている結果、五右衛門がどんどん重たげなことになってきた。

「あの、皆でそんな、アタシのために頑張らなくっても……ほら、皆、必要なものだってあるでしょうし……」

「つってもよ、一番物入りなのはお前なんだろうが。ほら、多分これプラチナだろ。刻印入ってるぞ」

 皆で『これ多分金!』『これはプラチナだな』『これは天然エメラルド推定3カラット』『あっ!見てくださいこれ!かわいい!すっごいかわいいですよこの黄金のタヌキ像!』……とやっているので、大変賑やかである。賑やかではあるが、『金目の物!』とやっている以上、なんとなく、華が無い!


「それで、僕が一切ものを持たずに出て、樺島が何か軽いもの1つだけ持って出て、他の全員が樺島よりも荷物を重くすればいい、ということか。となると、樺島が対応できるのは……ええと、樺島。お前、どれくらいの錘なら、降ってきても対応できる?」

「ん!?今なら200キロぐらいいける気がする!」

「そうか。100キロまでにしておこう。となると、1000倍になるから100gぐらいまでのものを樺島に持たせておくことになるか」

 ……と、そこでルールの確認もしていたのだが……。

「樺島君。君、『やり直し』の中で、ここのゲームを通ったこと、あるんだよね?」

「ん?うん!」

 デュオが、ふとそんなことをバカに聞いてきた。バカは元気に頷くと、デュオを見つめて頭の上に『?』マークを浮かべていたが……。

「1000倍の重さの錘って、具体的には、どういうものが降ってきた?本当に錘?それとも……」

「あっ!えっとな!俺、きらきらした石持って出たんだけど、それの1000倍のやつが降ってきた!」

 バカはにこにこ元気に答えた。あの時のきらきらの石は中々綺麗だったので、今回もアレを持って出るつもりである!

 ……だが。

「つまり、金を持って出たら金が1000倍になるっていうことかな」

 デュオは、そんなことを言ってちょっと考えて……。

「……タヌキ。君の『謎収納』って、どれくらいまで物をしまっておけるのかな」

「はい!大体、大型トラック一台分らしいです!」

「結構、積めるね」

 更に、タヌキの異能についても聞き始めた。

「はい!……アッ!?もしかして、この異能を使えばタヌさんマークの引越センターができます!?やってみようかなあ!」

「あなたはIT企業の社長よ」

「ああああああああん!そうだった!そうだったぁあ!ああーん!」

 ……タヌキがまたひっくり返って『ああーん!』となってしまったのを、何故か七香がちょっと満足気に見ている横で、デュオは苦笑しつつ……言った。

「だったら、タヌキに全部持ってもらおうか。異能分がカウントされないと困るから、後は、タヌキが自力で持てる限度いっぱい、荷物を持ってもらうとして……」

 デュオが言っている意味が分からず、バカは頭の上に『?』マークを1000倍に増やしていたが。

「それで、俺が金か何か持って、錘に潰される係、やるよ」

「ええええええええええ!?」

 デュオの言葉を聞いて、バカは頭の上の『?』マークが全部吹っ飛ばんばかりに驚いた!




「ほら、『無敵時間』を使えば、死なないから」

「えっ、あっ、そっかぁ……そうだったぁ……」

 が、驚いたバカは、『そういえばそうだった』と納得した。

 丁度、発表フェイズに入っちゃったことだし、もうじき、ゲームフェイズ2に突入するところでもあるし……デュオの『無敵時間』は各フェイズごとに1回しか使えないらしいので、だったら、今使っちゃっても問題無いのである。

「勿論、俺が無敵でいる間に、樺島君が俺の上に積まれた錘を除去してくれることが条件だけれど。できる?」

「うん!それはできる!」

 バカは、デュオが自分を信じてくれたことがとても嬉しい!……が、同時に、横から『ちょっと』と五右衛門が入ってきた。

「ね、ねえ。それって結局、リスクを負うことになるんじゃないの?」

「まあ、そうだね。樺島君が俺を裏切ったら俺は死ぬことになるかな」

 デュオはサラリとそう言うので、五右衛門は『そんなことしなくたって……』と心配そうな顔をしていたが……。

「……まあ、俺としては、このデスゲームを滅茶苦茶にしたいんだ」

 五右衛門の心配はさておき、デュオはそう言ってにやりと笑った。その笑い方は、陽よりは、天城のそれに近い。

「多分、つぐみは……俺の恋人は、そういう風にしたがると思うから」

「うん!だよなあ!たまならそういうこと、言うと思う!」

 実際、前回のデスゲームではそう言っていた。バカが壁だのなんだの破壊する度に、たまは楽しそうににこにこしていたものである!

「だから、まあ、気にしないで。俺は、俺の信念に従って、このデスゲームでできる限り、悪魔側に大損させてやろうとしてるだけだから」

 デュオがそう言えば、五右衛門は『そう……?アタシのためじゃないんなら、止めないけど……』と、申し訳なさそうに引き下がった。

「……悪魔側に大損、っていうのは、どういう魂胆だ?」

 一方、デュオの言葉がまた新たに気になったらしい燕がやってきた。が、デュオはそれに笑って、答える。

「単純だよ。1人、滅茶苦茶に大失敗した悪魔が居たら……燕が昇級する席が1つ、空くんじゃない?」

 悪辣である。実に、悪辣である。バカは意味が分かっていないので首を傾げているだけだが!

「……まあ、そんな気はしてる」

 燕は、ちら、と天井の方に視線をやった。勿論、そこに悪魔が居るわけではないが……多分、天井裏の更にその上あたりに居るのであろう悪魔達は、多分、今頃、頭を抱えていることであろう。

 しかし、これは仕方のないことである。デスゲームは弱肉強食。それは、主催側にとっても同じことだ。

 ……恐らく今日、1人の悪魔が破産し、その空いた座に、昇級した若い悪魔が収まることになるのであろう……。




 ということで。

「じゃあ、私はこれを持って行きますね!デュオさん、よろしくお願いします!」

「ああ、うん。ごめんね、タヌキ。結構重くない……?」

「いえ!お気になさらず!この働きの分は!秘書として!働いてもらいますからぁ!持ちつ持たれつぅ!」

 ……タヌキは、綺麗なスカーフに重いものをいっぱい包んだものをお腹に括りつけ、更に、七香がヤエと真理奈に選んだアクセサリーを華麗に身につけ、勇ましくぽてぽてと歩いていった。

 尚、タヌキの『謎収納』には、タヌキもデュオも持たなかったものが全て入っている。

 そう。『全て』である。

 ……悪魔の宝物庫は、見事にからっぽになった!タヌキは最早、大泥棒と言えよう!

「で、俺は……本物の金塊と、金の指輪。宝石の類……あと、樺島君が見つけたダイヤモンドだね」

 そしてデュオは、選び抜いた宝物をポケットに入れて笑う。バカがでっかくしたかったきらきらの石……つまりダイヤモンドも、無事、でっかくされる運びとなった!

「……これが1000倍の重さになったら、国宝レベルになっちゃうね。あははは……」

「えっ、そうなのか!」

「宝石は大きさが2倍になれば価値は10倍にもなりますから」

「すげえな宝石!」

 バカは『俺も宝石みたいに、でっかくなって価値10倍になるぞ!』とバカなことを考えて目を輝かせつつ、元気にゲートを出る。

 ……そして。

「じゃ、いこうか」

 全員がそれぞれ、電話ボックスみたいなところに入って、そして、判定は当然、タヌキの荷物が一番重くて、次がデュオ。そして残りは全員、誰も何も持っていない。

 ……という判定が下った瞬間、デュオの電話ボックスの中に、巨大な金塊やら宝石やらが降ってくる!

 が、デュオは当然、『無敵時間』で無事である。

「デュオーっ!今、助けるからなー!」

 なので、バカはそこへテケテケと走っていき、デュオの上に乗っかった100㎏ぐらいの金塊だのなんだのを退かしてはタヌキの『謎収納』に入れていく。

 ……そうして、デュオは無事、救助された。ちょっと安全をとって長めに『無敵時間』を取っていたらしいので、安心安全であった!




 それからちょっとして、リンゴン、リンゴン、とゲームフェイズ2の開始を知らせる鐘が鳴り、それと同時にデュオの『無敵時間』が効果切れとなった。

「ああ……上手くいったみたいだね。えーと、つまり、数100㎏の金が手に入った、っていうことかな」

「そういうことですよ!いやあー!私の『謎収納』も大分いっぱいになりましたねえ!この会場を出たら皆で山分けしましょう!」

「そうだね。じゃあ、会場を出るためにも、さっさと次のゲームに行こうか」

 ……そうして皆仲良く、『楽しい部屋だったねえ!』『本当に金が増えやがった……』『悪魔さん、大丈夫ですかねえ……』『駄目じゃないかしらねえ……』などと話しながらきゃいきゃいとエレベーターへ戻る。

 悪魔は、多分、もう駄目である!




 が、これでバカ達は終わらない。

「腹減ってきたなあ……」

「そうか?まあ、少し時間が経っているが……」

 そう。バカは、お腹が空いてきた。

 ……つまり!

「それなら、食べ物が出てくる部屋がある」

「食べる!」

 ご飯タイムである!

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― 新着の感想 ―
今回の主催ではない悪魔達は自分の時に馬鹿来たらどうしようと戦々恐々。 アクセサリはともかく金インゴットは換金めんどくさいらしいけど、贋金塊とかも…… 建設業があるなら金属関係の会社もあるか。
七香さん異能がパワータイプだから忘れそうになるけど上品なお嬢様なんだよな……タヌキをコーディネートしたり女子ズにアドバイスしたりいい奥さんになりそうですわ……逃がしちゃダメだぞタヌキ。いやたぶん逃げら…
お宝全回収の実績解除ですかね。 さすがはたぬきだ。
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