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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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ゲームフェイズ1:『2』勝手知ったる他人の部屋

「ここ!ソファあるし!果物とか飲み物とかあるし!お喋りするには丁度いいよな!」

 ということで、勝手知ったる他人の家。否、他人のデスゲーム会場。

 バカは、気絶してしまった『女教皇』をベッドに寝かせてやってから、ソファを運んできたり、ローテーブルをいいかんじに置いたり、果物籠を持ってきたり飲み物を持ってきたり、と、どんどん居心地の良い談話室を作り上げていく。

 キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部にはあまり来ない依頼ではあるが、一応、インテリアを担当することもある。バカは、先輩達の仕事を思い出しながら、『こういうのも楽しいなあ……』と、家具を上手に配置していくのであった!

「……これ、いいのかなあ……」

 真理奈はちょっと申し訳なさそうにしているが、いいのである。この世は弱肉強食!そしてここは悪魔のデスゲーム会場!基本的に、何をやってもよいのである!

「わあー!ここの果物美味しいですよ!すっごく美味しいですよ!見てくださいこの苺!高級苺ですよ!うわあー!おいしい!おいしい!うわああー!」

 ということで、もしかしたらバカの次にこの状況に適応してしまっているかもしれないタヌキであるが……タヌキは、デュオと七香と一緒にローテーブルを囲みつつ、テーブルの上、切子硝子の大皿の上にこんもりと盛られた苺を、結構な勢いで食べている!遠慮が無い!

「……あなた、苺がお好きなの?」

 そんなタヌキを見て、七香は『どう声を掛けたものか』というような顔をしながらも声を掛ける。するとタヌキは、はた、と気づいたように顔を上げた。尚、顔は上げても、その手はしっかり苺を抱えている。……がめつい!

「えっ!?ええ、まあ、苺、好きですよ!というか、果物全般、大好きです!まあ、貧乏人には果物はね、ちょっと高級すぎますから、あんまり食べる機会は無かったですけどもぉ……」

「そう……」

 七香は、声を掛けた割に、タヌキをどう扱っていいものやら決めあぐねている様子であった。

 ……七香はもう、デュオが誰で、タヌキが誰なのかは、聞いている。聞いているが、整理はつかないし、タヌキやデュオの本心の見極めもできていないのだろう。

「あ、七香さんも苺、いかがです?ものすごく美味しいですよ?」

 そんな七香を気遣ってか、タヌキはそっと、小さな前脚で苺の大皿を、すす……と七香の方へずらした。

「……結構よ。あなたが召し上がればいいわ」

「あ、そうですか……?七香さんは苺、あんまりお好きではない……?」

 七香のすげない返事に、タヌキはちょっとしょんぼりしながら、また苺を食べ始めた。すると……。

「……苺を頂いているあなたを見ている方が、楽しそうだわ」

 七香はそう言って、タヌキをじっと見つめ始めた。

「そうですか!?エッ!?何故!?」

 七香は特に何も言わない!ただ、タヌキを見つめている!

 そしてタヌキは、その間もしっかり苺を食べ続けている!がめつい!

 ……バカは、こんな2人を見て、『うん!仲良しだな!ヨシ!』とにこにこするのだった!




 一方、五右衛門とヤエと海斗のテーブルも、気まずげであった。

 ……一応、海斗に『それで、あの2人、何があったんだ?』と聞かれたので、簡単に『五右衛門がヤエを轢いちゃって、五右衛門はそれを気にしてるんだけど、ヤエは脚が無くなっちゃって長距離続けられなくなったことはあんまり気にしてないんだよ』と教えておいた。海斗は『そ、そうか……』と気まずげな顔であった!

 まあ、海斗のことだ、きっと上手くやってくれることだろう。何より、五右衛門が自分で頑張って話をしようとしているところだし、ヤエだって、なんとなく、何の話なのかは分かっているようなかんじだし……。




「ところで、お前らどうやって大広間に戻るんだ?」

 こちらも1人、勝手にソファでくつろぎつつお茶を飲んでいた四郎がそう聞いてきたので……バカは、『アレッ!?』と思う。

「ん!?あれっ!?燕と真理奈はエレベーター動かせるんじゃなかったっけぇ!?」

「……『巻き戻し』の異能を下手に使うと、それ以前に戻れなくなるからあまり使いたくない」

「えっ!?そうなのかぁ!?そっかぁ!」

 バカは『燕と真理奈は便利な異能を使える!』と思っていたのだが……やっぱりそうでもないらしい。バカは、『俺にはよくわかんねえけど……』と頷き、真理奈も『私にはよくわかんないけど……』と頷いた。燕は何とも言えない顔をしている!

「ここは『2』のアルカナルームだから、『2』の腕輪1つを持ってくる以外にエレベーターを動かす方法は無い。俺達もここでしばらく待機だな」

 ……が、燕がそんなことを言うので、バカは『えええー、俺、タックルでゲーム攻略したいのにぃ……』とちょっとしょんぼりし……そこで、ふと、閃いた。閃いてしまった。

「そっか……エレベーター、2個、あるんだもんな……?」

「おい、樺島。何かとんでもないことを考えていないだろうな……?」

 横の方から『樺島が何かやりそうな気がする』と察知してやってきた海斗が、なんとも心配そうな顔をして覗き込んできたが……。


「反対側のエレベーターの傍の床、ちょっと壊れるけどいいかなぁ!」

「ああ!やっぱりとんでもないことを考えているらしいな樺島!いいか!?そういうのはキッチリ説明してからやれ!」

 燕と真理奈がぽかんとし、海斗が大いに嘆いた!




 ということで。

 チャンと説明したバカは、海斗に『よし、分かった。やれ』と許可を得られたので……まず、『デュオー!適当なモンバットにしてくれー』『は?』というやり取りをして、『無敵時間』を掛けた『女教皇』を手に入れた。

 そして……。

「じゃ、ちょっと通路確保してくる!」

 バカは、『来た時とは反対側のドア』を開け、『本来ならここにエレベーターが到着するのであろうエリア』へと入った。

「おー、やっぱりエレベーターの通り道がある!」

 そして当たり前のことだが、そこは本来エレベーターがやってくる場所であるので……その分、上に向かって道が続いているのだ。つまり、大広間に今あるであろう、海斗の個室の床がこの縦穴の天井になっているはずである。

 バカは、『ふむふむ』と頷きながら……もふん!と羽を出した。

 そして。

「よっこいしょ!」

 ばひゅん、と、飛び立った。

 ……そのままバカは羽ばたいて羽ばたいて、エレベーターの通り道をエレベーターでもないのに飛び抜けていく。

 そして。

「あっ!やっぱりこれ、海斗の個室の床だぁ!ってことは、このあたりを崩せばいいんだな!ヨシ!いくぞー!」

 バカは、バットにした『女教皇』を振りかぶり……。

「よっこいしょぉお!」

 メゴン!といい音をさせつつ、縦穴に横穴を掘り始めた!

 目標は……大広間!




「燕ー!真理奈ー!おまたせー!トンネル開通したぞー!」

「えええ……ほんとにやったのぉ……?」

「……まあ、いいけど」

 そうしてバカは、元気に『2』の部屋へ戻ってきた!ただいま!

 そこでデュオに『バットありがとう!返すな!』と女教皇バットを返却し、『いや、返却されても困るんだけど……』と言われてしまったので、『あ、じゃあもうちょっと借りてく!』と、女教皇バットを抱え直した。

 ……そして。

「じゃ、いくぞー!燕も真理奈も、しっかり掴まっててくれよな!」

「ええええええ!?樺島さん、ほんとにコレで行くのぉお!?」

「うん!大丈夫!俺、生コンの袋10個ぐらいなら飛びながら運べるからぁ!」

 バカは、真理奈と燕を小脇に抱え、ついでに女教皇バットも抱え……てってけてってけ、と足取りも軽やかに、来た道を引き返し……。


「わあー!すごい!飛んでる!飛んでる!」

「天使だから!えへへへ……」

 バカは、真理奈と女教皇バットを抱えて飛んでいた。

 ……そして。

「燕も飛べるんだなあ!」

「……悪魔だからな。飛ぶくらいはできる」

 なんと!燕も飛んだ!

 バカは、『飛べる友達が増えた!』とニコニコである!一方の燕は、『飛ぶのがそんなに嬉しいのか……』と何とも言えない顔であったが!

「燕は羽ばたかないんだねえ」

 尚、燕は羽ばたいていない。バカはバッサバッサやっているのだが……燕の、ドラゴンか蝙蝠か、といった様相のシュッとした羽は、時々ほんのり、『ぱたっ』とするだけである。

「羽ばたきで浮くわけじゃないから」

「……えっ?じゃあ、樺島さんはなんで羽ばたいてるの?」

「多分、気分の問題だろ」

「そうなの!?」

 バカは、『えっ!?何の話!?』と頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべているのだが……実際、バカは気分とやる気と雰囲気、あと筋肉で飛んでいるのである。色々と、燕とは事情が違うのであった!




「はい!到着!」

 そうして、バカと真理奈と燕、そしてバット状態の女教皇は、無事に大広間へ戻ってきた。大広間の、海斗の個室付近の床には穴が開いたが、気にしてはいけない。こういうのを気にするのは、デスゲームを主催する悪魔だけでいいのだ。

「えーと……じゃあ、次、どこ行く?樺島さん、色々な部屋知ってたよね?燕も全部知ってるんだっけ?」

「俺は全部知ってたはずだったけど、何部屋か仕様変更されていることは分かってる。アテにしない方がいいかもしれない」

「そっかぁ……。じゃあ樺島さん、どこがいい?」

 さて。バカ達は、さっさとカード集めをしてしまいたい。とにかく、燕は発表フェイズごとに持っているカードの数が大事なのだ。燕にいっぱい、カードを持たせてやらねばならないので、バンバン部屋を攻略していって、ガンガンカードを集めていきたい所存である。

 ……と、考えたバカであったが。

「えっとぉ……あの、あんまり、他の人に任せたくない部屋、あってぇ……」

「えっ、そういう部屋、あるの?」

「うん。えっと……五右衛門と一緒だったから……多分、『5』……?」

 バカが思い出すのは、五右衛門が『教皇』から、酷いことを言われる部屋のことだ。

 あの部屋は……人を傷つける部屋だと思う。だからバカは、あそこをさっさと攻略してしまいたいのである!




 ……ということで。

「うおおおおおおおお!お邪魔しまぁあああああす!」

「ああああああああああああ!?」

 そうして。

 バカは部屋に突入し、教皇は恐れ慄いた。

 それはそうである。何せ……バカは例の如く、『5』と書かれたドアを『バキイ!』と破壊して突入したし……その手には、バットにされた女教皇を携えていたのだから!

 ……ドアを破ってやってくるバカの衝撃と、同僚が何故かぶん回されていることへの衝撃、それらが合わさった衝撃たるや、想像に難くない。

 そして、バカは勢いよく……無敵の女教皇バットを、教皇に向けて投擲した!

「うおおおおおおおおお!」

 ぶん、とぶん投げられた女教皇は、真っ直ぐに教皇の頭へと向かっていき……。

「うわああああああああ!」

『5』の部屋には、頭を消し飛ばされた『教皇』の悲鳴が響き渡った。さながら、勝利へのファンファーレのようだ!おめでとう!ありがとう!


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― 新着の感想 ―
敢えてバッドの材料に女教皇をチョイスするデュオこそ本物の悪魔では…
教皇と女教皇が出会い頭に運命的な出会い(衝突)を果たしましたね! 今回は参加してる悪魔さんも多いので被害者の会は賑やかになりそうです。
バットを相手の頭にシュゥゥゥーッ!超!エキサイティン! どんな形でもいいから一直線にやることを繋げばバカドーザーが全部ならして解決していくの、やっぱりいいですね
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