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04.思想つよつよおねえさん(4)

 などと話をしていたら、2階のロビーに到着した。このロビーの先が最初の目的地であるはずのジムだが、備え付けの大型テレビを前にふとフリアがその足を止めた。

 テレビにはプシュケー製薬に関するニュースが流れている。新薬の開発がどうの、と代表者が会見をしている様子だった。何を言っているのかはさっぱり分からない。


「寧子ちゃんはプシュケー製薬とセラフの関係性について、予習をしておいた方がいいわね」


 また不穏な話題だったのだろうか、イデリナの表情がピクリと引き攣る瞬間を見てしまった。が、意外にもその意見にセオドアは賛成だったようだ。基礎知識を丁寧に教えてくれる。


「これに関してはフリアさんの言う事が正しいかな。避けては通れないからね、この人達との接触は……」

「そうなんですか?」

「うん。まずプシュケー製薬とセラフは廃晶病に関する薬品類について共同で研究を行っている。アーディ先生なんかはよくプシュケーとやり取りしているし、研究室にも何人か派遣された人たちがいるよ」

「へえ……」

「寧子さんやエリアスさんを救うのは、このプシュケー製薬かもね……。このインタビューは異能力者のシンクロ率を底上げする薬品の開発を始めた事、それをセラフと共同で行うって話を発表している所だ」

「今まで開発? 研究? してなかったんですか。シンクロ率周りの薬品って」


 反対派が多くてさ、とイデリナが肩を竦めた。呆れたような表情さえ浮かべている。


「非異能者のお偉いさん達が恐がって着手できなかったんだよね。シンクロ率は異能を操る為の重要な機能。非異能者にはこれが上がると異能が恐ろしいものになる、って思う人がたくさんいるんだよ。実際にはコントロールにしか影響は出ないはずなんだけどね」

「という事は、私の0%とかいう最低値からちょっとでも上げられるようになるかもしれないって話ですか?」

「そうだね!」

「へー、これは良い知らせ」


 ふふ、とフリアがどこか小馬鹿にしたような笑みを零す。


「寧子ちゃん、あんまり真に受けてはダメよ」

「え?」

「だって、私達のこれは身体機能だもの。そもそも後天性の異能者達が定めたシンクロ率なんて私達に適用されていると思う?」

「そうなんですか!?」

「彼等のそれは『病気』による後遺症。我々のこれは身体機能。忘れないで、後天的に異能を持ったものと、先天的に異能を持つ私達は違うのよ」

「急に思想強くないですか? ああでも、薬とか飲んでも意味ないって事もあり得るんですね……。あ、いや、待って。フリアさんも廃晶病にかからずに異能を持っている人なんですか!?」

「ええ」

「わあ、私と同じですね!」

「ええ、そうよ。この施設の中で私とあなただけが同じ。困った事があったら言ってね。おねえさんが何でも聞いてあげる」


 彼女は前から少しばかり選民思想が強い所があるが、それさえ目を瞑れば面倒見がいい上に要領も良いスーパーなお姉さんなのである。

 だがしかし、双子からどことなく遠巻きにされている理由もわかった。

 よくこの状況で後天性だの先天性だのと分断を生みかねない発言ができるな。素直にそういう所は感心してしまう。


 などとやっているうちに、テレビの中の会見が終了した。


「あら、みんな足が止まっているわ。寧子ちゃんに施設の紹介をするんじゃなかったの?」

「どの口が……」


 割とうんざりしたようにイデリナが呟いたが、フリアはものともしなかった。ギスギスした空気が胃腸にあまり良くない。

 ただしもうこれは意地の張り合いなのだろう。

 何事も無かったかのように、セラフ内ツアーは再会。その全てにフリアも同行するという恐ろしい時間が3時間も続いた。

 ――明日はエリアスさん、体調が良くなっていますように。

 この日ばかりは機能しているか怪しい異能に向かって願わざるを得なかった。こんな気まずい空間、2日連続など耐えられそうにない。エリアスさえいればフリアと揉めたりもしないし、双子が気を使って連れ回してくれたりもしないのだ。


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