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19話 その2

 ……お菓子を自分で作って食べるというのは初めてです。家にいた時はせっかくリタさんと一緒にお菓子を作っても私は食べちゃダメでしたし、リタさんがわざわざ私に作ってくれた時も食べちゃダメでした……。なので、今回は私も食べられるので楽しみです。学院に来てからはアヴィさんとラファエルさんにお菓子を色々と買って食べさせてもらいましたけど、それとは別の美味しさがあると期待しています。

 私たちはそれからお菓子作りを始める時刻を決め、作り方やどんな味にするかを話し合いながら校舎に向かいました。




 校舎に着いてノエルさんたちと別れると、私たちは教室に向かいました。そして、珍しくアヴィさんは大人しくしていて、ベタベタしてくることなく教室に着きます。

 私たちが席に座って授業の準備をしていると、ミハエルさんとラファエルさんがやってきました。


「ユノ、おはよー。熱大変だったね……。もうめっちゃ心配したよ!」

「私も本気で心配した。この数日間、ユノのことしか考えられなかった」

「……そうですか。あの、心配してくれてありがとうございます」

「ユノは僕たちがお見舞いに行ったの知ってる?」

「……え? 知りません」


 私がそう答えると、ミハエルさんとラファエルさんはため息をついて首を横に振ります。


「実は僕たち何度もユノのお見舞いに行ったんだけどね? オルタヴィアのやつが絶対入れてくれなくてさ~。ホントさいてーだよ。……それをユノに伝えてないとか、もう色々と終わってるじゃん」


 ラファエルさんもうんうんと頷きます。

 ……アヴィさんはノエルさんたちにだけじゃなくて、ミハエルさんとラファエルさんにまでそんなことをしてたんですね……。

 私はアヴィさんに色々と言うのは後にして、ひとまずお二人に返しておきます。


「私も気付かなくてごめんなさい。……でも、おかげさまで元気になりました。ありがとうございます」

「まあ、ユノが元気になったから良かった」

「そだねー。……ってそういえば、僕たちこの前は結局出かけられなかったしさ、また今度出かけよーね」

「……そうですね。また空いてる日があったら教えてください」

「おっけー! ほら行くよ、ラファエル」

「――分かっている! ……またなユノ」


 ラファエルさんは優しく微笑みながらそう言いますが、ミハエルさんに引っ張られて直ぐに自分の席の方に戻っていきました。

 私はアヴィさんの方を向き直ると、ほっぺをムギュっと掴みます。


「あの、アヴィさん? ミハエルさんとラファエルさんにまでそんなひどいことをしたんですか?」

「いえ、ひどいことはしてません!」

「嘘をつかないでください。せっかくお見舞いに来てくれたのに、門前払いはひどいことです」

「……むぐぐ。主様は優しすぎるんですよ! そんなこと気にしないでいいです!」

「なんですか、それ。……ダメに決まってます」


 私がムッとしていると、アヴィさんは「えへへ、主様ぁ……大好きです!」と喜んできます。そんなどうしようもないアヴィさんに呆れていると、先生方が少し神妙な顔をして教室に入ってきました。

 生徒が全員席に着くと、コスタンティーノ先生がお話を始めます。


「皆さん、おはようございます。……えぇ、非常に残念なお知らせがあります。昨晩、ルートン・クリスタルモールで約六百人の人質を取った立てこもり事件が起きました。襲撃犯と治安部隊の間で二時間ほど銃撃戦が行われるも、幸い死者は出ることなく襲撃犯はみな確保され取り押さえられたのですが、その襲撃犯の中からコンクラーヴェ王立学院の一年生が二名確認されました」


 先生は一度そこで区切ると、私たち生徒を見回します。

 ……二名ということは、おそらくあの魔剣を持っていたお二人のことでしょうね。まさか同じ学院の生徒だったとは思いもしませんでした。……しかし、二人も『集い』に入っているとなると、他にも入っている方がいるかもしれませんね……。

 私が昨晩のことを思い返していると、先生は再び口を開きました。

「……えぇ、一人目は神聖ヴァレンシア帝国の七大貴族の、カーティス・ラングフォードさんです。同国内での事件ということで、このような場合は事件に関与したことが揉み消されるのかと思いましたが、特にそういうこともなく名前が公表されています。そして、二人目は大栄アドラス連邦王国のノア・オリオールさんです。このお二人に関してはもちろん昨日の晩、情報が入った時点で退学処分となりました。……また、襲撃の目的は現状分かっていませんが、なにかのテロ行為の一環だったのかもしれません。詳しいことは、ヴァレンシアの公安警察が調査中とのことなので、いずれ分かることでしょう。……とりあえず皆さんに言いたいことは、この学院内で暮らしているだけで、どの方もある一定以上の危険があるということです。目の前にいる相手がどのような危険思想の持ち主か分からない以上、特に他国の生徒と接する際はよく注意してください」


 先生はそこまで言うと、ベルティネッリ先生と小声で何かを話し始めました。どうやら一度私たち自身にこのことをよく考えさせるために、時間を取っているようです。

 ……少しお話を聞いていて不安でしたけど、何者かが突然現れて事件を解決したということは伏せられていたようで安心です。無駄にそのことが知られれば、妙に鋭いレンさんやアヴィさんは怪しんでくるかもしれませんからね。それに、意図的ではないにしても、こうも呆気なく退学になるんですか。私もよく気を付けないといけません。……そして、私にとっては非常に残念なことがあります。捕まったお二人のうちの一人、カーティス・ラングフォードさんは剣術大会の一回戦でシンさんと戦うはずの方でした。……つまりです。私が一回戦を突破することができた場合、必ずシンさんと戦うことが決定してしまいました。いわゆる不戦勝ということです。最悪ですね……。まあ、これに関してはあとで先生に抜けた分の穴埋めが行われるのか聞いてみようと思います……。

 私が少し落ち込んでいると、アヴィさんはじっと私のことを見てきました。これもいつものことなので、私は適当に視線を逸らすと先生の方を向きます。

 それから程なくして先生お二人は会話をやめると、再びコスタンティーノ先生が喋り始めました。


「では、お知らせは以上です。……授業を始めていきます。まず昨日配ったプリントを――」


 私はプリントをもらってないのでレンさんに見せてもらいながら、しっかりと授業を受けていくのでした。

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