18話 その5
まず最初に周囲の監視魔法具を壊しておきます。
『爆破魔法二型』
そう唱えると再び強烈な爆発音が響き、また少し驚いてしまいましたが、気にしないで私も集中します。ただ、この方は突然の爆発に周囲を警戒し始めました。
「……これはガールの仲間かな? 中々派手で面白いね。オレ様が全員殺してあげるよ」
独特な言い回しで周囲に呼び掛けますが、もちろん私一人なので意味はありません。そして、この方が近付いてきたことで、私も硬直の原因が分かったので、手早く終わらせることにしました。
「さて、どこから斬り裂い――」
『時間魔法三型』
私は視界に入っていた、お二人のことを……一応人形の方も含めて三人の時間を止めると、硬直を解くことにします。
『時間魔法二型』
自分自身の体を二分ほど戻すことで、硬直を解除しました。硬直の原因は最初に殴られてしまった時に、特殊な魔法具を発動されてしまったからなので、その前まで時間を戻せば大丈夫なのです。
……さて、どうしましょうか。時間を止めることはできましたけど、この方々の目的はまだなにも掴めていません。まずは聞き出すための準備ですね……。
そういうことなので、私は人形の方を消却魔法で消すと、腕を斬ってしまった方に回復魔法を使い、睡眠魔法五型を唱えて眠らせました。……まあ、時間が止まっているのでまだ寝てませんけどね。
そして、事情を知っていそうなもう一人の元まで行くと、即座に両腕と片足を斬り落とし、時間魔法を解除します。
「――ッ……!?」
突然血が吹き出し、私が目の前にいたことで理解が追いついていないようです。
「貴方はなんのために今回の騒動を起こしたんですか?」
「――拷問されても、絶対に言わないよ……ガール」
『心眼魔法』
私は瞬時に心を読み始めます。また無駄な思考は多かったのですが、その中でも気になる発言がありました。
『……あと五百人殺せば、オレ様は幹部になれたのに……。こんな所で……』
私はこれを元にさらに踏み込んだ質問をしてみます。
「貴方の組織の名前はなんですか?」
「――どうして、それを……?」
再び雑多な思考を無視して探していきます。ただ、この質問では答えに辿り着けそうになかったので、色々と形を変えて質問してみたところ、失血死寸前のところでようやく名前を出してくれました。
『――真我祝福の集い。――』
その前後の言葉はどうでもいいのですが、明らかに怪しい名前です。ひとまずこれ以上は望めないと判断して、私は睡眠魔法を使いました。それから回復魔法を使って体を治癒しておきます。このお二人には強力な睡眠魔法を使ったので、もう丸一日は目覚めません。一応最後に記憶魔法も使って、私と出会ってからの記憶を全て消しておきました。これで師匠に言われた通り、なに一つ証拠も残っていません。あとは、念の為に魔剣も壊しておきます。
「崩壊魔法」
瞬間的に壊せると思ったのですけど、数秒かかってしまったので、どうやら相当な魔力で作られていたみたいです。……壊しておいて正解でした。
とりあえず私は眠ったお二人のことは放置して、建物の入口に向かいました。さっき確認してはいましたけど、その近辺には残りの六人がいて、外の警察の方々となにやら怒鳴り合いをしています。
『加重魔法三型』
私が魔法を唱えた瞬間、六人全員が地面に叩きつけられます。べキッという音が聞こえてきたことからも、骨が折れたりしているのだと思いますけど、これは仕方ありませんね。おそらく外の警察の方々も返答がなくなったことから、一度様子を見ているはずなので、私は直ぐに六人に麻痺魔法をかけると、魔法で浮かせて外に向かいました。
ただ、私が外に出た瞬間に怒鳴りつけられます。
「――おい貴様、魔法使いか!? どこから来た! 元から中にいたのか!?」
それから必死に色々と聞いてきていたのですが、私は無視してその六人を地面に転がすと、一応回復魔法で治癒してから転移魔法を使いました。
私は再び師匠の用意してくれた部屋に転移しました。
「……はあ、なんだったんでしょうか」
よく分からないことに首を突っ込んでしまい、かなり疲労が溜まってしまいました。ただ、あの数百人の方を助けられたので良しとします。
……忘れてましたけど、結界を解いておかないといけませんね。
私は魔力を流して結界を解除すると、変身魔法も同様にして解除するのでした。そして、この部屋に来たのは師匠に先程のことを報告するためです。私は直ぐに報告書を追加で書き、机の上に乗せておきました。もちろん『真我祝福の集い』に関することです。多分師匠なら何かしら知っていると思うので、今後私が関わらないようにした方がいいのかなどを聞いておきました。書いている途中で、あのお二人の名前を聞き忘れていたことに気付いてしまいましたが、もう手遅れなので諦めました。……因みに、少し前に私が置いた報告書はまだ回収されていないようです。
そんな感じで、私はようやく寮に戻ることにしました。再度転移魔法を使い学院の前まで転移すると、寮に向けて歩き始めるのでした。
しばらくぼーっとしていたのですが、一応もう少ししっかりと『真我祝福の集い』について考えようと思います。それと、名前は少し長いので、もっと短く『集い』と呼ぶことにします。
……まあ、その集いの一番の疑問はどうして人を殺すことを目的にしているのかというところですね。単に頭のおかしな方々なのかもしれませんし、他に理由があるのかもしれません。ただ、これに関しては現状よく分からないので、別のことを考えることにします。そうなると、次の疑問は……あの方は捕まえた方々をどうして生かしていたのか、ということです。目的が集いの幹部になることなのは明白で、あと五百人殺せば幹部になれたと言っていたので、本来その目的を達成するには生かしておく必要なんてなかったはずです。……分かりませんけど、もしかしたらその組織の上層部の方に、殺しているところを見届けられる必要があった……とかでしょうか?
そんなことを考えても全然得がないので、私はため息をつくと再びぼーっとすることにしました。
〇
そうして私は寮の部屋に着きました。一応部屋を出てから一時間は経っていませんけど、アヴィさんは私が帰るなり直ぐに駆け寄ってきます。
「主様! 帰りが遅いので心配しましたよ!」
「……ただいまです」
「なんですかその返事! 適当すぎます!」
元気なアヴィさんのことは放置して、私は寝室に向かいました。中に入ると、レンさんがこちらを向いてきます。
「おかえり、結構遅かったな。大丈夫だったか?」
「はい、大丈夫です。……あの、お腹空きました」
「あ、ああ。ユノは相変わらずだな」
「……相変わらず?」
「いや、気にしないでくれ。もう夕食は準備してあるし、食べれるぞ」
私は頷くと、ダイニングに向かいました。
それからお二人と一緒にごはんを食べて、三日ぶりのお風呂に入りました。アヴィさん曰く「我が寝ている主様にシャワーを浴びさせていました!」とのことなので、シャワー自体は昨日浴びたらしいです。
適当にお風呂でまったりしたあとに私は湯船から出ると、また適当に体を拭いてベッドの上に横になりました。
……布団が最高です。もふもふしていて偉いです。
私が布団に包まっていると、アヴィさんもベッドに横になって私と一緒に布団に包まり始めます。
「アヴィさんは布団が好きですか?」
「主様のことの方がよっぽど大好きです!!」
会話ができないアヴィさんのことを少し見つめると、私は寝ることにしました。
「……はあ、おやすみなさい」
「主様? ため息はおかしいです! でもおやすみなさい!」
電気は消えていますが、レンさんはまだ魔剣作りをすると言っていたので起きています。
まあそれはいいのです。今日は病み上がりにしては中々疲れることをしてしまいました。流石にまた熱になるわけにはいかないので、明日の朝は少し頑張ってみるつもりです。……多分忘れてますけどね。
私は弱い決意を固めると、布団の感触を味わいながら眠りにつくのでした。




