18話 その4
ひとまず全員の治癒を終えた私は、結界を抜け出して拘束を始めます。一応私が治癒をして回っている間もこの五人は銃を撃ち続けてきたわけですが、それが終わった今もひたすら撃ち続けてきています。弾のかぎりはないのでしょうか……。
『――消滅魔法一型』
私は眼前に迫る弾を全て消却すると、足に魔力をまとって加速し、まず一番近い方に接近します。
「――っち、クソが! 死――」
銃口を向けられた瞬間に重心を落として銃の下に滑り込み、その勢いのままにふくらはぎを蹴りつけます。
「――っ! てめぇ!」
この方の腰を落とすために蹴りつけましたが、特に効果はありませんでした。まあそれは良く、この方が動き出す前に私は指を頭に向けます。
『――衝撃魔法一型』
刹那、この方は頭から弾けるようにして後ろに吹き飛びました。もちろん殺すようなことはしませんけど、強い衝撃を受けて気絶はしているはずです。他の四人が思考を巡らせ必死になって銃口を向けてくる間に、私はまた別の魔法を唱えます。
『――爆破魔法二型』
その瞬間に、残りの四人が持っていた銃とこの広間の監視魔法具の全てが爆破します。耳をつんざくような音で魔法を唱えた私自身も一瞬びっくりしてしまいましたが、とりあえず気にせずにやることをやっていきます。
「麻痺魔法五型」
そう魔法を唱えると、残りの四人も体の自由を失って倒れていきました。
これでこの広間は終わりですね。結界魔法を解くのは他の方も無力化してからにしましょう。それと……。
私は念の為に最初に吹き飛ばした方の銃を拾い上げます。
……ふむ、一応魔法具なんですね。構造自体は簡易なものですし、安物で玩具みたいに適当な感じです。ただ、威力はそれなりにありますし、魔力を必要としない分、母体の装置があるはずです。さっき投影魔法で見た感じは、あの人が持っていそうですね……。
それっぽい方がいたので間違いないと思います。そういうわけで、私は銃を消却すると、急いでその方の元に向かいました。
広間を抜けて入口の方に向かうと、ある部屋の前に二人の護衛が待機していました。私に気付いた瞬間に声を上げて銃を向けてこようとしますが、もう遅いです。
『――浮遊魔法』
私はある程度加減しながらも、勢いよく天上に突き飛ばします。お二人は「――がぁ……」「――かっ……」と似たような声を発しながら、だらんと体を崩します。気絶したお二人のことは適当に廊下に転がして、私は部屋の中に入りました。
――瞬間、拳が私の目の前に迫ってきます。
『――防衛魔法三型!』
私は咄嗟に魔法を唱えて威力を軽減したのですが、それでも鈍い音と共に体を十数メートル後方に吹き飛ばされました。その間に硬い壁を二枚は貫いています。
「……うぅ、……いたいです」
私が顔を押さえながら立ち上がっていると、ゆっくりと二人の方が私の方に歩いてきました。
「ねーねー、兄さん。僕が殺していいかなあ」
「ダメだよ、ボーイ。二人で殺そうね」
……さっきの速度からしても、強化魔法は必須ですね。
『強化魔法壱型』
私は脳内でそう唱えると、お二人の出方を伺います。ただその瞬間、突然異常な速度で私に向かって走り出してきました。……どうやらお二人も強化魔法を使っているようです。
「あー、使っちゃおうかなあ。――来い、『カラミティ・エンダー』」
「なら、オレ様も。――『ディロングラーズ』」
各々魔剣を握ると、なんの躊躇いもなく私に斬りかかってきます。
……この感じは、間違いなく殺人鬼でしょうね。私も容赦はしません。
『物質生成魔法一型』
お二人は無詠唱で出現した剣に一瞬驚きながらも、関係なく剣を振り抜いてきますが、私は片方の剣を躱して、もう片方の剣を受け流します。そして、その瞬間に剣全体に魔力を纏わせ……その剣から手を離します。予め作っていた魔力の流れに引っ張られることで、この方が体を一瞬動かせなくなった隙に、私は再度物質生成魔法を唱えて剣を作ると、魔剣を持つ腕に向けて振り抜きました。
「え、嘘だ――」
驚愕した瞬間に、私は両腕を斬り離します。
「――ッッ!! ――ッぐぅぅぅあああ!!」
血が吹き出て崩れ落ちるこの方のことは一度放置して、私はもう一人の方を向き直ります。
「ガール、もしかして強いのかな?」
そう言いながら首を傾げてきますが、こんな方々とお話することは何一つありません。いえ、最終的になにが目的なのかは聞き出しますけど、それ以外はどうでもいいです。
私は瞬間的に体を動かし、懐に入り込みます。そして、同様に両腕を斬り離しました。
「あれ、いつの間に?」
そんなとぼけたことを言いながら、私を見てきます。
……なぜだか分かりませんけど、この方は危険な気がします。先程の反応といい、今の反応といい、感情が感じられません。ですが……。
『拘束魔法』
ひとまず私はお二人を縛り上げると、周囲に問題がないことを確認してから話し掛けます。
「目的はなんですか? 誰の命令ですか?」
「……言うから、解放して……」
私はそんな言葉を無視して魔法を唱えました。
『――心眼魔法』
とりあえず、私はお二人の心を読んでいきます。人間は一人だけでも思考が多いので、まずは片方ずつです。隙が多そうな最初に腕を斬り落とした方の方から見ていきます。私を憎む無駄な思考が多かったのですが、一応それっぽいことは言っていました。『兄さんがこんなこと言わなかったら……』とのことなので、あまり知らなさそうなこの方は放置して、もう一人の方を見ていきます。
『――――――――』
……? なんでしょうか? こんなの初めてです。まったく思考がない方なんているんでしょうか?
私はもう少し頑張って確かめてみますが、結局なにも変わらず読み取れません。ただどういうわけか、心の方はなにも言わないのに、口では「つまり、投影魔法で覗いてきていたのはガールか」なんてことを言ってきます。……よく分かりません。
――刹那、私の体が硬直します。
……なんですか? 硬直魔法の効果ですね、これは……。でも、魔法の発動は感じませんでした。ということは……。
私が魔法の解除を試みていると、前から誰かが近付いてきます。
「ボーイ、念の為に仕込んでおいて正解だったね」
「……兄さん、早く助けて」
「――なら、オレ様も本気を出してあげようかな」
そう言いながら、私に向かって猛接近してきました。瞬間的に私も思考を回転させていきます。
――えと、どういうことですか? 私が戦っていたこの方は、魔法で操作されていただけの人形だったのでしょうか? ……まあ、よく分かりませんけど、舐めすぎです。本気で私のことを仕留めたいのなら、そんなに喋らずに直ぐに殺しにくるべきでしたね。硬直していたら呼吸もろくにできませんし、もちろん魔法も唱えられませんけど……。それも無詠唱なら関係ありません。




