18話 その2
私はまた本を受け取るとタイトルを見てみます。『俺だけが持つ外れスキル『小麦粉操作』が結構強い《1》』と書いてありますが、また喋ってます。ある意味タイトルが生き生きしていて新鮮ではありますね。
私は再び頑張って読み始めました。
数分で読み終えると、私は本を閉じていくつか気になったことを聞いてみます。
「……あの、アヴィさん? どうして小麦粉で作った剣が金属の剣を砕いたり、龍を斬ったりできるんでしょうか? ……不思議でした」
「主様? しっかり読みましたか!? そこは外れスキルの『小麦粉操作』で耐久値を+1したって書いてあるじゃないですか!」
「そこの辺りの設定がよく分からなくて……。あの、粉塵爆発で敵を倒したのはいいのですけど、近くにいた主人公が無傷だったのはどうしてですか?」
「それは爆破耐性の小麦粉を作ったって書いてましたよね? それで小麦粉の鎧を作ったからです!」
えぇと、終始全然意味が分からなかったです。小麦粉を操作できるのがどうして色々と……って、もういいです。
「なんというか、小麦粉である必要性がなかったです」
「主様は文句ばかりですね! ひどいです!」
「ひどくないです。……主人公を嵌めようとしてきた敵を、最後小麦粉で縛り上げていたシーンも別に小麦粉じゃなくてもいいですし、申し訳程度にパンとパスタを作るシーンはなんというか……」
「いいから2巻も読んでくださいね!」
「嫌です」
私が即答すると、アヴィさんはしゅんとしながら最後の本を渡してきました。タイトルは『創造神の俺がすごい世界を創ってみた《1》』です。
私はそれを見てアヴィさんに言います。
「あの、これは読まなくてもいいですか? 多分つまらないです」
「ダメです! 読んでください! 感想を聞きます!!」
アヴィさんは私の体をギュッと掴んで目に涙を浮かべながら頼んできたので、仕方なく私は読み始めることにしました。
そしてまた数分で読み終えると、なんだか疲れた私はため息をつきながら言います。
「……はあ。アヴィさんのおすすめの本は全部読み終えました」
「ため息はやめてください! どうでした? 面白かったですか!?」
「そんなわけありませんよね。全部まったく面白くなかったです」
「……むぐぐ。ただ、そんなこと言って、『こむつよ』は結構気に入ってたんじゃないですか? 質問も多かったです!」
……こむつよ? そんな本ありましたっけ?
「……えと、私はロッドさんのおすすめの本も読むので、また静かにしててくださいね」
そう言うと、アヴィさんはロッドさんの本まで順番を決めてきて、「まずはこれからです!」と、私に選んで渡して来ました。『愛の吐息《上》』というものです。私はそれを受け取ると、直ぐに言います。
「アヴィさん、これは面白くなさそうなので読みません。あと《下》もあると思うので、もちろんそれも読みません」
「なんでですか! 唯一ロッドと気が合う本なのに!」
……そうなんですか。なら絶対面白くないですね。先にそれを聞けて良かったです。
私はアヴィさんが勝手に選ぶのを無視して、自分で適当に取って読み始めるのでした。
〇
それから数時間経ち、レンさんが帰ってきました。寝室に入ってくるなり、私のことを心配してきます。
「ユノ、もう大丈夫なのか? 熱は下がったか?」
「はい、もう大丈夫です。アヴィさんのお薬のおかげです。……それに、お二人が気遣って色々としてくれたのには本当に感謝してます。……オルさんにもですけどね」
私はそう言うと、立ち上がって問題なく動けることを見せてみます。それを見ると、レンさんも流石に安心したようです。
「良かった。これからもこういうことがあったら、いつでも俺たちを頼ってくれ。必ず力になるからな」
「おい、レン! お前の働きなんて一割にも満たんぞ! 調子に乗るな!」
「いやまあ、たしかにそうだけどな……」
レンさんはそう言い、少し残念そうな顔をします。ただ私は、お二人にしっかりと感謝を伝えることにしました。
「……あの、レンさん、アヴィさん。本当にありがとうございます。できるかぎり今回みたいなことは起きないように気を付けますけど、また起こってしまったらその時はお願いします」
「ああ、任せてくれ」
「主様をお守りするのが我の使命です!! ……レン、お前は我より先に口を開くな!! 滅ぼされたいのか?」
急に物騒なことを言い始めるアヴィさんを無視して、私はレンさんに話し掛けます。
「ノエルさんたちにはレンさんがお話してくれたんですよね?」
「ああ、今朝会った時に、明日にはもう大丈夫だと思うって伝えたら喜んでたぞ」
「……そうですか。良かったです」
「とりあえず俺は魔剣作りをするから、なにかあったら声を掛けてくれ」
「分かりました」
私がそう答えると、レンさんはベッドに座って剣を取り出し、作業を始めてしまいました。そういえば、私に魔剣をくれると言っていたので、それを作ってくれているのかもしれません。……楽しみです。
一応、この後外に出かけようと思いますけど、まだこの時間だと下校中の生徒が多そうですし、もう少し経ってから出るつもりです。そういうわけなので、私はベッドに戻ると、再び本を読み始めました。
そうしてさらに数時間が経ち、いつの間にか夕方を過ぎて夜になっていました。ロッドさんのおすすめの本はホントに面白いので、つい惹き込まれてしまいます。
私はそんな本を仕舞うと、ベッドから立ち上がりました。レンさんとアヴィさんは少し前にごはんの支度のためにキッチンにいるので、私は今一人です。このまま何も言わずに出てもいいのですけど、お二人を心配させても嫌なので、一応出ることは伝えておきます。
私は早速キッチンに向かうと、お二人に声を掛けました。
「あの、レンさん、アヴィさん。私は今から外に出てこようと思います」
「ん? 今からか?」
「主様! 我も行きます!」
「……えと、私一人で行きます。病み上がりで心配かもしれませんけど、大丈夫ですからね」
「いや、ホントに大丈夫か? アヴィも行った方がいいんじゃないか?」
「いえ、私一人で大丈夫です」
私がそう答えると、レンさんは心配そうな顔をしてきます。アヴィさんは即座に私の前まで来ると、腕を掴んでニコニコしてきました。
「主様? 我はいつでも一緒です!」
「……いえ、一緒じゃないです。それと、ホントに心配しないで大丈夫です。もしなにかあったら、この魔法具で分かるんですよね? その時は駆け付けて来てください」
私がそう言って、魔法具のブレスレットを見せると、アヴィさんも渋々納得して腕を離してくれます。
「……主様、分かりました! なにかあったら直ぐに向かいますね! 絶対に死なないでくださいね!」
「はい、大丈夫です」
「ユノ、本当に無理するなよ? 外は気を付けてくれ」
「そうですね」
そんな感じでお二人は一度料理を止めると、私を玄関まで見送ってくれました。
そして私は寮を出ると、少しまったりと街に向かうのでした。




