18話 その1
体をベタベタと触られ、私は目を覚ましました。
……なんですか。鬱陶しいです……。
私は触ってくるそれを掴んで力いっぱい捻ります。
「主様、痛いです! 離してください!」
アヴィさんの声が聞こえたのでそちらを見てみると、嬉しそうに微笑むアヴィさんがいました。
「……あの、なにしてるんですか……」
「主様、おはようございます! もう微熱程度まで熱は下がってますが、今日はまだ授業には出てはいけませんよ!」
「……熱……そうですか。今何時ですか?」
「大体九時頃です!」
……ならもう仕方ありませんね。眠いので良かったです。
「主様はもう少し休んでてください!」
「……そうですね、まだ眠いので寝ます。おやすみなさい」
「おやすみなさい!」
そういうわけで、私はもう少し寝ることにしました。
〇
それから数時間寝て、私は目を覚まします。
「……ふあ~……」
少し伸びをすると、声が聞こえました。
「マスター、おはようございます」
「……あれ、オルさん? おはようございます」
そう言ってオルさんの方を見てみると、少し微笑むオルさんが映ります。
「マスターの熱が引いて良かったです」
「……そうなんですね。たしかに体もいつも通りな気がします」
そんなことをお話していると、布団の中からアヴィさんが顔を出しました。
「主様、おはようございます! もう体調は大丈夫ですか!?」
「はい、もう元気です。アヴィさんのお薬が効いたようです」
「それは良かったです! お腹が空いてたら言ってくださいね!」
「……分かりました。今はあんまりです」
私はそう言うと、ベッドから降りて立ち上がってみます。丸二日も寝たままだったので、魔力をしっかり纏わないと、ろくに立つことができないくらい力が落ちていました。
そんな感じで若干戸惑いながらも時計を確認してみると、今は十三時前です。まだまだ時間はたくさん余っているので、熱になってしまってできなかったことはまた後でやるとして、今はもう少しまったりと過ごすことにします。
というわけで、私はもう一度ベッドに腰を下ろすと、収納魔法を発動して本を出しました。アヴィさんとロッドさんがおすすめしてくれた本です。
「主様!? もしかして今から読んでくれるんですか!?」
「はい、せっかく時間もあるので、読んでみます」
「おぉぉ! 我のを先に読んでくださいね!!」
「……えと、今読んでいるのを読み終えたらアヴィさんのを読み始めますね」
「なら我のおすすめの順番は――」
元気なアヴィさんのことは放置して、私は本を読み始めます。ロッドさんに選んでもらった『名前のない王国』という本です。
それから私はじっくりと楽しみながら読んでいきました。
そうして読み始めて、三十分と少しで最後まで読み終えます。期待していたタイトル回収が割とあっさりだったので、あまり好みではありませんけど、それまでが面白かったのでそれなりに満足できる一冊でした。私が本を閉じると、それを待っていたかのようにアヴィさんが本を選んで渡してきます。
「主様、まずはこれを読んでください!! 感想をお願いします!」
「分かりました。読んでみます」
私はそれを受け取ると、またじっくり読むことにしました。……因みに、オルさんは私が本を読み始めると最初の方は私の横で一緒に本を眺めていたのですが、途中で飽きて収納魔法に戻ってしまいました。仕方ありませんね。
さて、『恋の楽園~絶倫ドSな彼は、今日も私を拘束する~』ですか。……まったく面白くなさそうです。
私は渋々本を開いて読み始めました。
それから五分と少し、私はあまりのひどさにじっくり読むことを諦めて速読に切り替えました。私が本を閉じると、アヴィさんは早速話し掛けてきます。
「どうでしたか!?」
「アヴィさん、これのどこがおすすめだったんですか?」
私がそう聞くも、まったく関係のないことを言い始めます。
「主様は体が熱くなってきたりしましたか?」
「……? 本を読んで体が熱くなることなんてありませんよ?」
「そうじゃないです! 興奮しませんでしたか?」
「……興奮って、運動してるわけじゃないんです。読書で興奮状態になるわけないです」
私が少し呆れながらそう言うと、アヴィさんも私のことを呆れながら見てきました。……なんなんですか。
「主様ぁ! 違いますよ、まったく!」
「……なにが違うんですか。……この本は予想通りつまらなかったですし、こんなに主人公に感情移入できなかったのも久しぶりです。主人公はどうして苦しがっていたのに、同時に喜んでいたんですか?」
「主様……。まあ主様向けはもう一冊の方なのでいいです! あと、本の中の男が主人公にしてきたようなことを我にしてもいいですからね!」
……どういうことですか? アヴィさんは体を縛られたいんですか? 意味が分かりません……。
とりあえず、また私はアヴィさんに渡された本を読んでみることにしました。今度は『ドMな彼の育てた方』というタイトルです。多分さっきと同じでつまらないと思います。ですが、一応最初は真剣に読んでみようと思います。
私はまた短い時間で読み終えると、アヴィさんに言います。
「……読み終えました」
「どうでしたか? 主様にはハマってたんじゃないですか?」
「……? なにがですか?」
「メインの男はどうでしたか?」
「なんというか、気持ち悪かったです」
「ええ!? そっちの反応ですか!?」
むう、なに驚いているんですか。こんなにつまらないのをおすすめしてきたのに、まったく……。
私は不満に思いながらも、一応感想を伝えてみます。
「えと、男の方が主人公にあんなに冷たい対応をされているのに、まったく嫌いにならないのが凄いと思いました。それと、主人公が男の方に対して意図的にひどい扱いをしていたので、読んでいて少し嫌な気持ちになりました」
「……むぐぐ。主様の優しさが裏目に出てしまったようですね……」
アヴィさんは悔しそうにしながら、また次の本を渡してきます。私はそれを受け取ると、タイトルを見てため息が出ました。『神のギフトで最強料理スキルを手にした俺は、神と約束した魔王討伐を無視して最強料理無双~SSSランクの冒険者、転生してSSSSランクの料理人になる~《1》』というものです。
これは本当に本なんでしょうか……。タイトルで喋っています。よく分かりません……。
まったく理解できないまま、頑張って読み始めるのでした。
私は読み終えると、またアヴィさんに話し掛けます。
「この長いタイトルのも読み終えましたよ」
「どうでしたか?」
「最初は設定が複雑でよく分からなかったんですけど、途中から分かりました」
「他にはなにかありませんでした?」
……んー、なんでしょう。特にありません。文章のレベルが低かった、くらいでしょうか? ……いえ、一応ありましたね。
「最後にユウトの料理を食べて喜んでいたフードの方が、実は魔王だったというのは予想がつきます。……それと、全体的に面白くなかったです」
「主様!? 直球すぎますよ!? でも、魔王予想は正解です! 6巻で出てきますよ!」
「……これが6巻まで出ているのは驚きです」
「もういいので、次のを読んでください!」
自分から感想を求めたのに、なんなんですか。ただ、まだまだ時間があるので、もう一冊読んでみましょう。




