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99話 その3

 ――刹那、結界を抜けて……私たちの前に守り人が接近してきていました。アヴィさんとロッドさんには一切構うことなく私に対し透明な力を伸ばしてきているのですけど、見たところ体は複数の理でできているみたいで、触られるだけで即死のようです。

 ……仕方ありませんね。今回はこうしましょう――。


『《葬環そうかんの理》』


 瞬間的に体が滅せられていく守り人に対して、魔力を込めたメアさんで攻撃してみるのです。……ですが、異様に硬い反応が返ってくるだけで、特になにも起こりません。……手が痺れてしまいました。


「主様、なにしてるんですか!」

「……んと、ピリピリします」

「――そうなんですね! 主様は可愛そうな子ですね!」

「はい、そうかもしれません」


 そう言うと、アヴィさんは私の頭を撫でてきます。そしてメアさんが『ますたー? まだ揺れてる』と教えてくれるので、私はアヴィさんにお願いしてメアさんの振動を止めてもらいました。……ピリピリも小さくなったのです。


「主様はほのぼのな子ですね! そんなところも可愛いです!!」

「……アヴィさん?」

「――なんですか!?」

「えと、私……気付いてしまったことがあります」

「――おぉぉ! 主様は偉いです!」


 そんな感じですぐに褒めてくれるのですけど、私はまだお話する前なので首を横に振ってみました。そして「そんなぁ……」と言って悲しそうになってしまうアヴィさんに、早速お話してみるのです。


「あのですね? 今戦った守り人も、最初の守り人よりも強くなってきている気がします。回数を重ねるごとに相手の使う理の量も増えてきていますし、物理的な攻撃が効きにくくなってきています」

「そうですね! 主様の認識通りで、時間が経つごとに敵も確実に強くなってきていますよ! これは遺跡の深部に近付くにつれてその分敵も強くなるということの他に、挑戦者に『時間』の制限を設けるという意味があります! もしかしたら、主様の時間魔法にちなんでかもしれませんね!」

「……それは、王が私の時間魔法のことも知った上で定めたということですよね……?」

「そうなります! それも全て『運命』なんです! ――でも安心してください! 主様には我が付いています! 絶対に大丈夫です!」


 ニコニコしながらそう言ってくれるアヴィさんに微笑むと、私は「ふふっ、ありがとうございます」とお礼を言ってから、一応一つ質問してみるのです。


「時間が経つことで敵が強くなるのなら、急いだ方がいいですよね?」

「はい! 焦る必要はありませんけど、あまり悠長にやっていると主様が練習台として使えないくらいには強くなりますよ!」

「……そうなんですね。……アヴィさんはまったりな子ですけど、敵がとっても強くなるのに急がないで大丈夫なんですか?」

「我からしたら大した差ではないので大丈夫です! それよりも我は主様と一緒の時間を楽しみたいんです! ――こんなに最高なんです!!」


 そう言いながらたくさんムギュっとしてくるので、私は少し歩きづらくなりながらも「そうですか」と頷いておきました。

 そして、建物の外に出てまた導かれる感覚に従って歩いていたところで、また一つ気になったことがあるのです。


「アヴィさん? 守り人は私のことを平気で殺害しようとしてきますよね。王は私のことを導いているのに、どうして会う前に殺そうとするんですか?」

「その理由は定かではありませんが、この地そのものが王の作り出した装置なので、もし死んでもなにかしらの方法で主様を回収できるのかもしれませんね! ただその線よりは、どのような攻撃をしても主様が死なないと分かっているからかもしれません! 我がいるので絶対に死なせることはありませんし、おそらく遺跡の番人たちの目的は主様以外を滅ぼし、主様を無力化することです! なのでそれを達成するために計算して動いてきてるんだと思います!」

「そうなんですか」

「はい!」


 頑張ってそう答えてくれたアヴィさんは、私に巻き付いてきていて必死な感じです。


「あの、アヴィさん、見てください。もう夜になるのに、空が明るいです」

「そうですね! この地では日が沈みません! 理によって光を取り込んでますからね!」

「はい、『空折の理』です」

「流石主様です! 賢いです!」


 そう言ってたくさん撫でてくれるので、私も「もう分かります」と答えておきました。

 そうしてまったりお話しながら次の遺跡に着いたところで、ずっと黙っていたロッドさんが突然口を開きます。


「姫様、敵の攻撃は私が引き受けます。姫様はご自由に攻撃をなさってください」

「えと、それだとロッドさんが大変ですよ?」

「いえ、姫様のお役に立てるのであれば本望でございます」

「……そうですか」


 ……その、どうしましょう。……ロッドさんが魔法の力で死という概念に対応できるとしても、無闇にそんな思いをさせてしまうのは……。

 そんなことを考えていると、アヴィさんが言ってきます。


「主様? ちょうどいいですね! ロッドには使い道が無かったので、提案通り盾にしましょう! どの道完全に死ぬことは現状の敵ではまずありませんし、問題ありませんよ! まあ完全に死んでも問題ありませんけど!」


 そう言うアヴィさんのことをじっと見つめてから、私はしっかり頷いてみました。


「……んと、それならロッドさん、お願いします」

「かしこまりました。姫様のご期待に応えられるよう努めさせていただきます」

「……? 期待ですか?」


 そう聞いてみても、ロッドさんは涼しい表情を向けてくるだけなので、私はそれ以上聞かないことにします。そして次の瞬間、体にレンさんの力が流れました。

 ――? ……体の崩壊ですね。……ホントにたくさん起こります。

 レンさんが守ってくれるので問題はありませんけど、起きる度に気にはなってしまいます。

 ……はあ、ふかふかな布団に包まりたいです。


「――主様? 今布団のことを考えてましたね?」

「……どうしてですか?」

「主様マスターの我には分かるんです! 主様は体の崩壊を受けてぼーっとしようとしてました!」


 そう言ってえっへんとするアヴィさんは、私が黙っていると少しずつしゅんとしてしまいます。


「えーん! 我は悲しいです! 主様に褒めてもらいたいです!」

「そうですか。それなら褒めてあげます。……でも、撫でてあげることはできません」

「えへへ! 我はこうしてるので大丈夫です!」


 私の体に巻き付いたままそう言うので、私もそんなアヴィさんに頷きながら「偉いです」としっかり褒めてあげるのでした。

 そしていい子なオルさんたちのお話を聞きながら次の遺跡に到着した私は、盾になってくれるロッドさんのことを見つつ中に足を踏み入れました。

 ……なんだか冷たい場所ですね。……見た目は普通ですけど、雪山みたいな感じです。

 息も白くなっていますし、ルアさんとメアさんが寒かったら可愛そうなので、いい感じに魔力を纏ってあげます。

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