99話 その2
「主様はどこに向かってるんですか?」
「えと、いくつもの導かれる感覚があるので、それが示す建物の一つ一つに入ってみようと思います」
「そうですか! 危険なものも多いので気を付けましょうね!」
そう言うアヴィさんをじっと見つめていると、舗装された道を進んだ先に目的の建物がありました。
相変わらず光の文字を纏っているのですけど、アヴィさんが意味を教えてくれるのです。
「これより先に進む者は、選ばれた者でなければいけないと書かれていますね!」
「そうなんですか」
「まあ文字に従ってロッドを置いていくのでも構いませんし、無視するのでもいいと思いますよ!」
「なら文字は無視してみます」
「分かりました!」
そんな風に答えるアヴィさんに頷き、私はしっかり警戒しながら大きな建物……遺跡の中に入ってみました。
……ふむ、こんな感じなんですね……。
遺跡は外も中もまったく廃れることなく綺麗な状態を保たれていて、とても五万年以上も昔の建物とは思えません。
そして特になにもない通路を進んでいくと、多重の結界に阻まれた扉の先に、広い空間があることが分かりました。
「……アヴィさん? この奥になにかいますね」
「はい! この建物の守り人ですね! 正体は物質として現れた理なので、生物ではありませんよ! 手加減不要です!」
「そうですか。なら準備しますね」
そう言い、早速オルさんたちに話し掛けます。
『えと、起きてる子はいますか?』
『……マスター、起きてます。夜空さんもルアさんもメアさんも寝てます』
『そうなんですね。ならオルさん? メアさんを起こしてもらっていいですか?』
『分かりました。頑張ります』
そう言ってくれたいい子なオルさんにお礼を言ったりしていると、少ししてからメアさんの声も聞こえてきました。
『……ますたー、おるが呼んでた』
『はい、オルさんにお願いしてメアさんのことを呼んでもらったんです。今からきっと危険な戦いがあるので、オルさんと一緒に魔剣の姿で出てきてください』
『わたし、ますたーとおると一緒にたたかう』
『メアさんは偉いです』
『ふふっ、オルさんもですよ』
『マスターはとっても優しいです』
『それはオルさんたちが可愛いからです。こんなに可愛い子たちには誰でも優しくなります』
そう伝えてみると、オルさんは魔剣の姿で出てきてから、すぐに白い光をたくさん放ってくれました。とっても可愛いので微笑んでいると、メアさんも頑張って出てきてくれます。
「アヴィさん、いい感じです。行きましょう」
「はい! 気を抜かずに頑張りましょうね!」
私たちがそう言って歩き出すと、ロッドさんは無言なのですけど、しっかりと魔剣を出して手に握ります。ですが、アヴィさんはまったくそんな素振りは見せずに、なにも持っていません。
……えぇと、この感じならきっとこれから戦うかもしれない方は、『神徒』のナブーさんよりは弱い方なんですね。……それなら私でも十分戦えそうです。
そんなことを思いつつ結界を抜けていくと、開けた空間の中央に女性の見た目をした理がいました。それは同じように剣を出すと言葉を発します。
「ここは巡礼の地。今は亡き理想郷。王の器を捧げ給え。汝らの意思を響かせよ。それは終焉を辿る」
「――?」
一瞬で私たちの前に迫った敵は、ただ単純に手に持つ剣を横に振るいました。私はアヴィさんに腕を引かれて咄嗟に後ろに回避したのですけど、斬られた空間が余波を起こして、斜線上の地面を大きく穿ちました。
……っ、……これを受けていたら即死です。
「主様、言葉の意味を理解する必要はありません! 王の作った偶人に過ぎませんし、どの道大した意味はありませんよ!」
そんな言葉を聞きつつ、私は瞬間的に理で身体能力と強度を向上させて、守り人に接近します。そして躊躇うことなくオルさんに極限の力を込めて振り抜くのですが、それは触れる前に拒絶の理で弾かれてしまいます。ただ、私もそれを読んで時間を超えた一撃にしたことで、拒絶される一瞬前を撃ち、守り人の剣を持つ腕を斬り離しました。
――次の瞬間、ロッドさんの魔剣から放たれた莫大な光が守り人の全てを飲み込み、そのほとんどを壊滅させていました。
「……咎を……汝……」
「滅びなさい」
そう言い、呆気なく二撃を放って終わらせてしまったロッドさんですけど、相手が私に気を向けて理を切り替えた瞬間を狙った、かなり力業の攻撃だったと思います。それでも隙をついたいい感じの攻撃でした。
「主様はしっかり感じ取れて偉いですね! ホントに力以外はつよつよ主様です!」
「はい、そうです。全ての理を師匠に教えてもらったので、しっかり使いこなせます」
「まったく主様は……! 我もですからね!?」
「そうですね。アヴィさんもです。この身体で始めから理を扱えるのはアヴィさんに教えてもらったからです」
「わーい! 褒めてもらえました!」
「ふふっ、可愛いです」
いい子なアヴィさんにお礼を言ったあとは、もうこの建物から導かれるような感覚は消えているので、そのまま外に出てみました。先程あった結界はなくなっているのですけど、建物が帯びる光は相変わらずあります。
「これは主様が近付いたら出るものなので、守り人とは関係ありませんよ!」
「そうですね。周りの建物にもあります」
「えへへ、癒されます!!」
そんな風に喜んでくれるアヴィさんを見つめつつ、私はまた次の遺跡に向かうことにしました。
〇
それから数時間で八つの遺跡の守り人を倒したのですけど、メアさんの力は依然として分からないままです。
『マスター、次は我が頑張ります』
『そうですね。夜空さんと交代です』
『……ルアも頑張って』
『はい、頑張ります』
そう言って夜空さんと入れ替わりで出てきてくれるルアさんは、たくさん光を放って頑張ろうとしてくれます。きっともふもふでたくさん準備を済ませてくれたのです。
『オルさんも夜空さんも、しっかり休んでてくださいね。また四つの遺跡が終わったら交代します』
『はい、応援してます』
『……ふかふかで待ってる』
『ふふっ、いい子ですね』
今は力を知るためにもメアさんには一人残ってたくさん戦ってもらっているので、オルさんたち三人もその分負担を減らそうと頑張ってくれているのです。
「アヴィさん、行きましょう」
「はい! 我はまたサポートに回りますね!」
「お願いします」
そんな感じでお話をしつつ、また一つの遺跡に入ってみました。
……むう、眩しいですね……。
建物の中だと言うのに、天井が真っ白な光を放っていて異様に明るいです。ただ、そんなことに気を取られていてはいけないので、私もしっかり集中して進んでみました。するとまた、結界の先に守り人の存在を感じ取れます。




