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98話 その1

 十一月十日、今日もオルさんたちと遊んだりしながら、マキアを散策して過ごしました。相変わらずなにか得られた情報はないのですけど、アヴィさんとのお散歩なのでとっても楽しかったです。

 そして夜になり、美味しいごはんを食べてお風呂に入ったあと、可愛い四人のことを寝かし付けて、アヴィさんと一緒にふわふわなクッションの上に座りながらぼーっとしていました。……ただ、日付の変わる時刻が近付くにつれて、考えることは増えてしまいます。

 ……その、いよいよ明日が私の誕生日ですね。レンさんに運命を変えてもらったので大丈夫なはずですけど、どうなるのでしょう。……普通の一日と同じになるのでしょうか? それとも、なにかあるのでしょうか……。

 そんなことを考えていると、優しいアヴィさんが私のほっぺをむにっと押してきました。


「……主様? なにも心配はいりませんよ。我が隣にいるかぎり主様を死なせることはありませんし、レンの力が主様を守っています。主様は主様の思うがままに生きればいいんです」

「アヴィさん……」


 私はそれ以上なにも言わずにアヴィさんのことを見つめていたのですけど、アヴィさんは少し真剣な表情になって、私に聞いてきます。


「――それでも、全てを受け入れる覚悟はできてますか?」

「……覚悟、……なら、できてます。……本来の私が、レンさんが運命を変えてくれていなければ、明日死んでしまうということも分かっています。……今はもうなにも不安はありませんけど、なにが起きても受け入れる覚悟はできてます」


 そう言う私のことを、アヴィさんは優しく抱き締めてくれました。


「主様はこんなに可愛いのに、偉すぎます。最高です! 我の天使です!!」

「……アヴィさん、いい子にしてください」

「えへへ、我はいつでもいい子ですよ! 主様の大好きな家族ですからね!」

「……そうですね。アヴィさんは大切な家族です」

「――わーい! 主様は単純な子なので流されやすいです! 可愛すぎます!!」


 そんな感じの元気なアヴィさんに頭を撫でられていると、なんだか少し眠くなってくるのです。

 ……うぅ、……もう少し頑張りましょう。……せっかくぽかぽかを耐えたのですから、これくらい大丈夫です。

 そう思いながら待っていると、アヴィさんの光の魔法で作られた時計の針が、二十三時五十九分を回りました。そして静かに針の進む音を聞いていると、アヴィさんが口を開きます。


「……主様、我は主様と二人で明日あすを迎えられることが、心から嬉しいです」

「……私も嬉しいですよ。アヴィさんと一緒に誕生日を迎えられて」

「ホントはレンも一緒が良かったですか?」

「……そうかもしれませんね。でも、レンさんは私のためにたくさん頑張ってくれています。……それに、アヴィさんが隣にいてくれるので、私はとっても嬉しいです。……ふふっ、アヴィさんと私の誕生日は同じなので、一緒にお祝いしましょう」

「そうですね! あと十秒です!」


 そう言うアヴィさんに頷くと、私たちは心の中で時間を数えました。そして時計の針が明日あすを示した瞬間、お互いに声を掛け合うのです。


「――アヴィさん、お誕生日おめでとうございます」

「――主様、お誕生日おめでとうございます!」


 そう口にした瞬間、私は真っ白な世界にいました。

 ――? ……これは、……いえ、ここは……『白き空間』ですね。……でも、どうして……。

 状況がまったく分からないのですけど、今は焦る必要もありません。アヴィさんが私の隣にいてくれるので、現実でなにが起きても守ってくれるのです。

 ……んと、一つずつ考えましょう。……まず私は、十七歳の誕生日を迎えたことで、この空間に来たというのは間違いありませんよね。日付が変わった瞬間にでしたし、ラピスさんのお話通り、今日という日を迎えることが大きな意味を持っているのです。……どうして十七歳なのかは分かりませんけど、それは考えても答えが見つかりそうにありませんね。

 ……そして一番大事なことは、今も私は『運命』を強く感じているということです。……このなにもない空間の中で、私はどこに進むべきなのかを知っていますし、……導かれるままに、『座』に座るべきだと感じています。……でも、私には――。


「レンさん。……レンさんが信じてくれるように、私もレンさんのことを信じてます。だから、大丈夫です――」


 そう強く決意を固める私は、白い世界を導かれるままに進み、不思議な模様の描かれた大きな扉の前にやってきました。

 それに手を向けると、今度は触れることなく勝手に開き始めます。世界に重く沈んだ音が響き渡り、私の視界に見覚えのある、どこかのお城の玉座の間が広がりました。

 ……ここはホントに、……世界の時間が止まったように、初めて訪れた時となにも変わらないんですね。



 ……強く、とても強く……あの玉座に座るように、……そうするために私は生まれてきたかのように、……『運命』を感じます。



 ……でも、今は以前とは違います。全てを失ってしまうような気もしませんし、ただただレンさんに守られているということが分かります。



「レンさん、恐れはありません」


 そう口にし、私は一歩一歩座に近付いていきます。


「不安もありません。大丈夫です」


 そう言って私は、一度頷きます。


「これに座ることで、私の『運命』は前に進むと思うのです。……なので、私は『座』に座ります――」


 そう告げ、私は大きな玉座を……複雑な模様の施された巨大な椅子を見つめました。

 当たり前かもしれませんけど、理の力をもってしてもそれがなにであるのか分かりません。ただ、私の『運命』に関係しているということだけが分かります。

 ……魔族の王家と、このお城の玉座は、きっと深い繋がりがあるのでしょうね。……それがなにであるのか、これから分かるはずです。



 代々魔族の王家の血に従い、運命魔法を継承してきたお母さんとリタさん。その想いも、今の私を導いてくれたはずです。



「……決して、無駄にはしません。……私が必ず、成してみせます――」


 そう言い、……私は『座』に手を触れました。



 ――その瞬間、時間を超えた……止まった時の中で、私の体に数多の記憶が流れてきました。



 ――それは、遠い過去の……『運命』の軌跡です。

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