95話 その3
そうして一日を掛けて、アヴィさんと私はお二人の生まれた場所にやって来ることができました。今はもうなにもないのですけど、当時は小さな集落があったみたいです。
「主様? 今日はここで休みますか?」
「……そうですね。……静かな場所です」
古びた石の塊がいくつか散見できるので、石造りの家が多かったのかもしれません。
私たちはそのまま地面に降り立つと、静かに集落があった場所一帯を歩いてみました。とても小さな集落だったみたいで、数分と経たずに元の場所まで戻ってきてしまったのですけど、それでもお母さんとレティシアさんの生まれた場所を巡れて嬉しい気持ちでいっぱいです。
「……アヴィさん?」
「なんですか?」
「……マキアの人々は、今はもう魔族と言われずに、平和に暮らしているんですね……」
「……そうですね。全て主様のおかげですよ」
「……? 私はなにもしてません」
「そんなことないです。主様がいなければ、今頃世界から魔族は本当の意味で淘汰されていました」
「……? ならアヴィさんのおかげです」
「――!? どういうことですか!?」
アヴィさんが適当なことを言うので私も適当なことを言ってみたのですけど、アヴィさんは少し不満なのか私のほっぺをたくさんむにむにしてきます。
「アヴィさん、やめてください」
「えー! 我はもっと主様を堪能したいです!」
「それならギュッとしてください」
「……ぐむむ、なら仕方ありません! 我はそれで我慢します!」
そう言い、アヴィさんは「えへへー!」と嬉しそうに私にギュッと抱き付いてきました。私もそんなアヴィさんを撫でながら、静かに空を見上げます。
……綺麗ですね。……穏やかで、平和な空です。……あれ? ……こんなにたくさん……不思議ですね。
一際輝く白い星が空に散りばめられたように見えるのですけど、……思い返してみれば、この星に手を伸ばしたことで私は白き空間に行きました。偶然なのかもしれませんけど、あまり長く見てはいけない気がします。
「……アヴィさん、もう夜ごはんを食べて寝ます」
「――可愛すぎます!! 我が食べさせてあげますよ!」
「それは大丈夫です。ルアさんとメアさんに食べさせてあげてください」
「ならそうしますね!!」
そう言う元気なアヴィさんは、早速新しい空間を作り出して中に入っていきました。私も静かにその白い星々を一瞥すると、アヴィさんのあとを付いていくのでした。
美味しい夜ごはんを食べたあとは、ぽかぽかなお風呂に入ってからベッドに横になるのです。
「……マスター、ふかふかです」
「そうですね。包んであげます」
「マスターは優しいです」
そう言ってくれるオルさんを布団に包んで撫でてあげていると、夜空さんも「……包まる」と言って私のことを見てきたので、同じようにふかふかな布団で包んであげました。ルアさんとメアさんのことはアヴィさんが撫でてくれているので、私はオルさんと夜空さんのことをたくさん撫でてみます。
「お二人はとってもいい子です。ゆっくり休んでくださいね」
「……マスターも一緒です」
「……そう。……一緒に寝る」
「ふふっ、ならそうします」
お二人にそう言われたので、私はオルさんと夜空さんの間に横になってみました。すると、お二人はすぐにムギュっと抱き付いてきます。……可愛いです。
「……オルさん、夜空さん、おやすみなさい。この先も、ずっと一緒にいてくださいね」
「……はい、一緒にいます」
「……私も一緒」
そう言うと、お二人は安心したのかすぐにうとうとし始めてしまい、あっという間に寝てしまうのです。そしてそんなタイミングで、アヴィさんにギュッとされたルアさんとメアさんが、布団と一緒に私の元に抱き抱えられてきました。既に眠そうです。
「……主様、……われもです……」
「……わたしも……ずっと……」
「そうですね。ルアさん、メアさん、これからもずっと一緒です」
「……よかった……です」
ルアさんは頑張ってそう言うと、私の上にそのままぽふっと乗っかってきました。そして、私の髪をキュッとしながらすやすやと眠ってしまうのです。メアさんはアヴィさんに抱き付いたまま寝てしまったのですけど、同じように私の上に乗っけられると、優しいアヴィさんに布団を掛けてもらえました。
「――えへへ、最高の光景です!」
「……んと、すごいです。動けなくなりました」
「そうですよ! 主様を動かさないつもりです!」
「……そうなんですね。でもぽかぽかでもちもちしてます」
そう言う私のことをアヴィさんは目を輝かせて見てきます。そしてそのあとは寝ている四人の子たちを撫でたり突いたりして忙しそうにしているので、私も少し見つめてから目を閉じるのです。
「……アヴィさん、おやすみなさい」
「はい! おやすみなさい、主様!」
……ふふっ、アヴィさんは頑張ってて偉い子です。……でも、もう眠くなってきました……。
今日は大きな手掛かりを掴めたわけではありませんけど、お母さんとレティシアさんの通ってきた道を知ることができて良かったです。明日からは、いい感じに探していきましょう。
そんなことを考えつつ、私は穏やかな眠りにつくのでした。




