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95話 その2

 料理ができる頃には一度寝てしまったメアさんもなんとか起きられたので、私たちはみんなで美味しいごはんを一緒に食べることができました。

 そしてしっかり後片付けなどを済ませて服を着ると、私は名残惜しくもリタさんとお別れをします。


「リタさん、今回の用事はきっと今までで一番危険なものになります。……生きてまたお会いできると信じてますけど、どうなるのか分かりません。……でも、待っててください」

「……うん、私お姉ちゃんのこと待ってる。……お姉ちゃんだって我慢してるんだもん。私だって頑張るの」

「ふふっ、リタさんはとってもいい子です。――大好きです」


 そう言ってリタさんのことをギュッとすると、リタさんも「……大好き。お姉ちゃんのこと、ずっとずっと大好きだからね」と言ってくれます。そして頷く私にキスをしてくれるので、私もリタさんのほっぺにキスをしました。


「……リタさん、行ってきます」

「……行ってらっしゃい、……お姉ちゃん」


 そう言い、リタさんは悲しそうな瞳をうるませながらも、私に優しい笑顔を向けてくれました。私もそんなリタさんに応えるように一度微笑み、リタさんの頭を撫でます。

 こんなに優しく穏やかな時間を過ごせて幸せなのですけど、それでもずっとこうしているわけにはいかないので、私も覚悟を決めて体を離しました、そして、アヴィさんが差し伸べてきた手に触れるのです。


「さあ行きましょう! ――主様!!」


 そんな言葉と共に、私はアヴィさんと一緒にマキア国へと転移するのでした。







「……ここは、どこなんですか?」

「首都レイドラシルです!」

「……そうですか。首都なんですね」


 周りを見回してみても、高く大きな建物は少なく、そんなに工業が盛んなわけではありません。私もマキア国に来るのは初めてで、旅客機や列車で通過したことはあってもこうして降りたことはないのです。


「まずは、なにをしましょう……」


 そう考え始める私に、アヴィさんがすぐに答えてくれます。


「主様の好きなところに行きましょうね! 我は付いていきますよ!」

「……えと、分かりました。それなら……首都を少しお散歩してみましょう」

「えへへ、そうですね!」


 ニコニコなアヴィさんを一度撫でると、私は早速歩き始めます。私たちが突然転移してきたということもありますけど、道行く人はかなり軽蔑したような視線を送ってくる方が多いです。……ただそんなことはどうでも良く、しばらく歩いていると気付いたことがありました。

 ……なんだか、明らかに他の国と比べて、銀髪の方が多いですね。……これも血と言うのなら、やっぱり元々マキア国は魔族の国だったのでしょうか。

 そう思いつつアヴィさんのことを見てみても、アヴィさんは嬉しそうに私のことを見返してくるだけなのです。なので私は、少し首を横に振ってから聞いてみます。


「アヴィさん?」

「なんですか? 可愛い主様」

「あの、そうじゃないです。マキア国は元々魔族の国だったんですか?」

「はい! ほとんどその認識で合ってますよ! 魔族の国は三千年前に滅びたので、文化や領土も含めて今と形は大きく異なってますけどね!」

「そうですか。……もちもちなお店が少ないです」

「――!? 流石主様です!!」


 そう褒めてくるアヴィさんは、たくさん私に絡み付いてきながらもすごい発見をしてくれました。


「主様、見てください! あそこに主様の求めるもちもちなドーナツの店があります!」

「……ホントですね。食べてみたいです」

「我に任せてください! いくらでも買ってあげます!」


 そう言ってくれるアヴィさんに頷いてみると、アヴィさんは「朝食後なのに主様らしいです!」とよく分からないことを言ってきたので、適当に「そうですね」と答えておくのでした。




 それからまったりと食べ歩きを楽しんだ私たちは、なんとなく首都にある観光地を巡ってから、また別の場所に移動することにしました。


「アヴィさん、そろそろ行きましょう」

「……むぐぐ、分かりました! 我はいい子ですからね!」

「そうですね。アヴィさんはとってもいい子です」


 そう言うと、私は理に命じてみます。


『《指定の場所へ転移です》』


 そう告げた瞬間、目の前の景色が変わりました。

 ……ここがお母さんとレティシアさんの過ごした、マール村ですか。お話に聞いていた感じとは違いますね。

 元々村だった場所は、今はもう大きな街になっているみたいです。ただ、衛兵のような方々が私たちの方を見るなり近付いてきます。


「――おい、お前たち。どこから来た?」

「白髪の者は立ち入り許可証を出してもらわんとな」

「えと、それは持ってませんけど、レイドラシルからです」

「ならば話にならん! 立ち去れ!」

「そうだ立ち去れ! 消えろ!」

「「――立ち去れ!! 立ち去れ!!」」


 ……? ホントになにも知らないんですね。……まあいいです。

 レティシアさんのお話でも、お二人が過ごした記憶は村の方々から消えているみたいなので、依然として白髪を忌む文化が根付いていても不思議ではありません。


「アヴィさん、行きましょう。他にも行きたいところがあります」

「そうですか! 主様は頑張ってて偉いです!」


 そう言ってくれるアヴィさんと一緒に、私は空を飛んで別の村に向かいます。ただその途中、理の力を使ってみるのです。


『――《痕跡。この地に眠る、二十六年前のお母さんとレティシアさんの手掛かりを調べます》』


 そう命じた瞬間に、当時のお二人の軌跡が強く感じられました。全てを知るには莫大な記憶を見る必要があるのでやめておいたのですけど、それでもどんな風に移動してきたのかは分かりました。

 ここから数百キロメートル以上離れた土地で、お二人は生まれたみたいです。そして幼くして両親を失い、お母さんとレティシアさんは二人だけで、安住の地を探してこんなに離れた場所にまでやって来ました。そこに至るまでにどれだけの災いがあったのか、考えるまでもありません。

 悲しい気持ちになってしまいつつも、私たちはお二人が通った道を遡っていくことにしました。

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