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94話 その4

 突然多くの情報が入ってきたこともそうですけど、その一つ一つが複雑で……とても今どうにかできる感じではありません。なのでとりあえず私は、少し悩んだ後に師匠の家に戻ることにしました。……ホントはお友達にもお会いしたいのですけど、私にはまだ解決しなければいけないことが多く残っていますし、これからより危険な戦いに身を置くことになるかもしれないのです。そんな私が、平和に暮らす方々に会うのは良くありません。……お手紙を残すのでもいいのですけど、……いつか私が直接会いに行きます。師匠から解放されて自由になれたのです。きっとそうできる時が来るはずです。


『……《師匠の家の前に転移です》』


 そう告げると、私は一瞬で玄関の前に到着します。大して時間も掛からずに用事は済んだので、まだアヴィさんも大人しくしているはずです。

 そんなことを思いながら家に入ると、私はリタさんとアヴィさんのいる部屋に向かいました。


「リタさん、アヴィさん。帰ってきました」


 そう言ってみると、すぐに扉が開きます。


「――お姉ちゃん! 早かったね~!」

「はい、早く済みました」


 そう言いながらリタさんのことを撫でていると、部屋の中からアヴィさんも出てきます。ただ、アヴィさんは出てくるなり私に顔を擦り付けてくるのです。


「……主様ぁ、我はいい子にしてました。……たくさん褒めてください……」

「……? 分かりました」


 ……えと、どうしてこんなにしょんぼりアヴィさんなんでしょう。……まあ、いい子なので大丈夫ですね。

 そんな感じで納得しつつ、私はリタさんに言ってみます。


「えとですね? 私、『アリアとトラキア国物語』を書いた方にお会いしました」

「――え、そうなの!? ……むー、私も会いたかったよ?」

「その、私も会えるとは思っていなかったんです。でも、運良くお会いすることができました。……不思議な方だったんですけど、リタさんの落書きを見て微笑んでいました」

「ふふっ、そう? 私の落書きを見て喜ぶなんて、かなりのセンスだよ~」

「はい、そうだと思います。それと、美味しい紅茶をもらいました」

「えー、お姉ちゃんだけずるい~」

「ふふっ、リタさんの分まで飲んでおいたので大丈夫です」

「――お姉ちゃん? 可愛すぎるよ?」

「……? リタさんの方が可愛いです。こんなにいい子です」


 そう言ってリタさんのことを抱き締めてみると、リタさんも嬉しそうに私のことを抱き締め返してくれます。アヴィさんは「……むぐぐ」となってしまうのですけど、すぐにしゅんとなってしまったので、私も少しそのままで置いておいてから、仕方なくリタさんから手を離してアヴィさんのこともギュッとしてあげます。


「……アヴィさん? 今はリタさんのことをギュッとしていたかったんですからね?」

「……はい、我はいけない子です……。主様を求めてしまいました……!」

「……そうなんですね」


 よく分かりませんけど、アヴィさんもなんだか嬉しそうにしているので良かったです。

 そういうわけなので、私はそれからしばらくリタさんに癒してもらいながらまったり過ごすことにしました。







 そうして穏やかで優しい時間をたくさん楽しんでいると、あっという間に夜になってしまいました。オルさんたち四人にもお手伝いをしてもらいながら、リタさんとアヴィさんと一緒に料理をして夜ごはんを食べたあとは、そのままみんなでお風呂に入ってみるのです。


「ふふっ、ぽかぽかですね」

「……はい、ぽかぽかします」

「……そう。……ぽかぽか……」


 そう言ってお湯をぽちゃぽちゃして遊ぶお二人の隣で、ルアさんとメアさんもお二人と同じように小さくぽちゃぽちゃしています。ただ、メアさんは昨日と同じでルアさんの白く半透明な髪を見て、「氷みたい……」と口にするのです。そんなメアさんに、オルさんがお話してくれます。


「メアさん、ルアさんは溶けないので大丈夫です。安心です」

「……おる、わたしは?」

「メアさんも大丈夫です」

「よかった……」


 そう言って安心するメアさんのことを、夜空さんが優しく撫でてくれます。そしてそんな夜空さんのことをオルさんが撫でてくれるので、とっても仲良しです。


「お姉ちゃんは可愛すぎだよね。だからこの子たちもみんな可愛いんだよ?」

「リタさん? オルさんたちが可愛いのは、私とは関係なくです。元からとっても可愛いんです」

「……はあ、お姉ちゃんはホントに……。でも私、そんなお姉ちゃんのことも大好き~!」

「……? 私もリタさんのことが大好きです」

「ならキスして?」

「分かりました」


 そう言ってリタさんのほっぺにキスをすると、リタさんも嬉しそうにギュッとしてきます。私もそんなリタさんのことを撫でながら、少し目を閉じました。

 ……リタさん、……この先どんなことになるのか分かりませんけど、それでも……どんな時でもリタさんのことが大好きです。それだけは変わりません……。

 そんなことを思いつつ、私は平和で優しい時間を送るのでした。




 それからお風呂をたくさん堪能したあとは、うとうとな四人を寝室のベッドに寝かせてあげてから、リタさんに言うのです。……因みに、思い返してみるとベッドは私が朝起きた時からオルさんたちと一緒に寝られる大きさになっていました。アヴィさんが頑張ってくれたのだと思います。


「えと、リタさん? 私はこれから師匠の部屋に行ってくるので、先に寝ててください」

「そうなの? なら寝ずに待ってるね」

「ふふっ、分かりました」


 いい子なリタさんのことを撫でると、私はベッドから下りて寝室を出てみました。アヴィさんも付いてきてくれるので、私は廊下を歩きながらお話します。


「アヴィさん?」

「――えへへ! なんですか?」

「あの、今日はアリアさんにお会いして、気になるお話をいくつも聞きました。その中の一つに、マキア国のお話があったんです。……よく分かりませんけど、私の生まれた理由と、私の本当の役目がマキア国に眠っているというお話でした。……アヴィさんは、どう思いますか?」

「アリアの言葉をそのまま鵜呑みにするのは本来良くありませんが、今回に限っては十分その価値がありそうですね!」

「そうですか。……アヴィさんはいい子です」

「はい! 我はいい子です!」


 そう言ってえっへんとするので、私はそんなアヴィさんのことをじっと見つめてみます。すると、アヴィさんが少しずつしゅんとしてきたので、私は優しく頭を撫でてみました。

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