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93話 その6

 とりあえず、アヴィさんがまたナブーさんに攻撃を当てて距離を離してくれたので、私も気を引き締め直して冷静にナブーさんのことを見据えます。

 ……詳しいことはなにも分からないままですけど、それでもこの方には……私も持てる力の全てを出すしかありません。

 一瞬で魔力を集中させると、私もナブーさんの出方を無視して攻撃を放ちました。


『――天剣・終型《界》……!』


 天剣の秘奥義にして、あらゆる存在を超越して葬る絶技です。距離も関係なく、回避不能の一撃ですが……。


「この程度では、ワタクシには及びませんねぇ」

「いえ、違います。いい感じでした」


 ナブーさんは余裕そうなことを言っているのですけど、しっかり私の攻撃は通っていて、ナブーさんの体に僅かですけど傷をつけることができました。これをさらに深く与えることができれば、私でも倒せる可能性が出てくるのです。……でも、悠長にそんな隙を与えてくれるはずはないので、私は一気に理を使ってナブーさんの元に接近します。


「アヴィさん!」

「――はい! 我に任せてください!」


 私が声を掛けた時には既に援護に入ってくれていたので、私も防御を全てアヴィさんにお任せして自分の攻撃に集中します。


『――《力の深淵を……より深く、未知の力を――》』


 そう強く想った時、私は意識の奥底からまたとても冷たく……どこか懐かしい、危険な力を感じました。ですが、私は躊躇わずにその力を使います。

 ――刹那、……さらに短い時の中で、私はアヴィさんが使ったような白い光の一撃を放っていました。それはナブーさんの体を深く貫くのですが、ナブーさんもそんな時間の中で私よりも速く鋭い反撃を打ち返してきます。


『――主様、我が全て防ぎます!』


 そんな声が頭に聞こえてくるのと同時に、私もさらに力を溢れさせて、ナブーさんに追撃を放ちました。本当は夜空さんの力も合わせたかったのですけど、それを考えるほどの余裕もなかったので、私は一心にこの不思議な理に集中して攻撃を撃ち込むのです。

 その最中に体の崩壊が幾度となく連続で起き始めるのですけど、レンさんの優しい力が私のことを守ってくれます。

 ――ナブーさん、倒れてください……。

 一撃一撃がナブーさんの体を穿ち、引き裂いていきます。ですが、しっかり効いているのか分からないまま時間が過ぎていき、私の放つ白い光を纏った攻撃は、ようやくナブーさんの体をほとんど完全に討ち滅ぼすのでした。

 そんなところで、私も体力の限界が来て……攻撃の手を止めてしまいます。


「……ぅ……はぁ……、……どう、ですか……?」


 そう聞いてみるも、アヴィさんはまだ戦闘態勢を崩す感じはありませんし、ナブーさんも体のほとんどが斬り離されて崩れている状態の中で、なぜか普通に立ちながら声を出します。


「流石は王の写し身……まだ不十分ではございますが、……ワタクシは終幕と致しましょうか。……んふふふふ――」


 そんな声が響くと、ナブーさんの体は突然霧散していき、完全に気配と共に消失しました。


「……? ……これは……? ……消えてしまいましたけど、倒せたのでしょうか……?」

「どうでしょうね! 微妙な感じです! ただ、ナブーは主様に敗北するために来たと言っていましたよね! 今の消え方を考慮するに、それが真実である可能性は非常に高いです!」

「……そうなんですか?」

「はい! 我が感じ取ったナブーの意図を表すのであれば、おそらく主様が強くなるための布石として自らを捧げに来た、という感じでしょうね!」

「……ナブーさんは、どうしてそんなことをするんですか?」

「真意はナブーのみが知ることです! 結果的に意図はそこにあるということくらいしか我にも分かりません! ナブーも他の『神徒』の意思と関係なくここに来たみたいですし!」

「……そうですか」


 アヴィさんが分からないのであれば、私が考えても分かる感じではありません。……それより、気になることがあります。


「……あの、王の写し身とはなんですか? 時間を遡った時に聞こえる声の方も、私に『我が写し身、我が分霊よ』と言っていました。……なにか、繋がりがあるんですか?」


 以前聞いた時は、真剣なアヴィさんに忘れても構わないし、気にしなくてもいいと言われたのですけど、それでも少し……気になります。


「……主様? それを知る必要はありません。優しい主様も我の幸せを願ってくれていますし、我も主様の幸せを願っています。なので、そこに王などという存在は必要ないんです」

「……んと、そうかもしれませんけど……アヴィさんでも説明するのは難しいんですか?」

「……ぐむむ。そうではありませんけど、知って得することでもないんですよ! どの道主様は主様ですし、王は王です!」

「……その、今更かもしれませんけど……王というのはどこの国の王なんですか?」

「……はあ、仕方ありませんね! 主様がそんなに知りたいんだったら、我が今教えてあげます!」


 アヴィさんはそう言うと、優しく私の体を支えてくれて、立たせてくれます。そして私のほっぺに優しく触れながら、お話してくれました。


「ここで言う王は、主様も聞いたことがある、アルカディアの王を意味します! そしてアルカディアというのは、オリヴィエ=ロイヤルオード・アルカディアの名からも国のことだと思ってしまいますが、……そうではなく、『理想郷』を意味します!」

「……えと、ということは……、アルカディアというもの自体が、理想郷を意味するんですか……」

「そうですよ! 主様はこれの真意が分かりますね?」


 そう言うアヴィさんの瞳をじっと見つめて、私も考えてみます。

 ……理想郷という言葉、そしてアルカディアという言葉は、私も何度か聞いたことがあります。それが同じものを指し示すのであれば、今までよく分からないままだったことが、結び付いてきます……。

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