93話 その4
「我はアヴィです! メア様、これからたくさん可愛がってあげますね!」
「……あびーはますたーの魔剣?」
「――!? 違いますよ! 我は主様の家族です!」
「……? すごい」
「――なんですかこの子は! すごい子です!! 可愛すぎます!!」
そう言ってアヴィさんが褒めてくれると、メアさんもよく分かっていないながらにアヴィさんの服をキュッと掴んで微笑んでくれます。オルさんたちもすぐにアヴィさんに乗っかって遊び始めるので、私はしっかりベッドの上に行って座ると、とっても優しいいい子たちを一人ずつ抱き締めていくのでした。
そしてふとした所で、私はあることに気が付きます。
……あれ? そういえば、メアさんはラピスさんの性格にあまり似ていませんよね……? 私が知らないだけで、ラピスさんもメアさんみたいな感じなのでしょうか……?
そんなことを不思議に思いながらもメアさんのことを抱き締めていると、もう一つ気付いたことがあるのです。どうやら、メアさんは覚醒できないみたいなのです。ホントにラピスさんが、擬人化の部分だけを空けて残しておいてくれた感じです。
「メアさんには、どんな力があるんですか?」
理を使ってもまったく調べようがないのでそう聞いてみると、メアさんも少し首を傾げてきます。
「……? わたしの力?」
「はい、メアさんの力です。なんとなくな感じで分かりませんか?」
「わたし、分からない」
「そうなんですね。可愛いです」
メアさんもこんなにいい子なので、自分の力が分からなくても不思議ではありません。それに、ラピスさんの作ってくれた魔剣なので、きっとなにか特殊なものなのだと思います。
「流石主様です! ゆるゆるで最高ですね!」
「んと、アヴィさんは分かりませんか?」
「……むぐぐ。残念なことに我にも分かりません! ただ逆に考えれば、今後戦うことになる全ての相手にもその力を悟られることはないでしょうね! それに、きっとラピスは主様なら分かると踏んだ上で渡したはずです! なのでそのうち分かってきますよ!」
「そうですね」
ラピスさんは『……お前なら、その魔剣を正しく使えると信じている』と言ってくれました。なので、その言葉のままに力を使うこと自体も決して簡単なことではないのだと思います。それでも、しっかり使えるように頑張ってみます。
そんな風に考えた私は、もちもちで可愛い四人をたくさん抱き締めながら、まったり過ごしていくのでした。
〇
とっても穏やかな時間を過ごして、あっという間に夜になりました。メアさんもすぐに三人と一緒に遊べるようになったので、ふかふかな布団に包んでもらったりしてはしゃいでいます。……因みに、メアさん用の『アヴィさん人形』も作ってもらえました。
「主様、ここは天国ですね! なにもかもが癒されます!!」
「良かったですね。アヴィさんが優しいからです」
「えへへー! 我は主様には優しいんです! 大切な家族です!」
「はい、そうです。アヴィさんはとっても大切な家族です」
そんなお話をしていると、少ししてオルさんたちがうとうとし始めたので、アヴィさんと私はしっかりベッドに寝かせてから撫でてあげました。
「おやすみなさい。私たちも近くにいますからね」
「……うれし……です。……ねます」
「……わたしも……ねる」
お二人がそう答えながらあっという間に寝てしまうと、頑張って起きているルアさんも布団と一緒に私の髪を握りながら寝てしまいました。メアさんもかなりうとうとしていて今にも寝てしまいそうな感じなのですけど、アヴィさんにほっぺをむにむにされながら遊んでもらっているので、なんとかまだ起きているみたいです。
「メアさん、たくさんのふかふかです。寝ても大丈夫です」
そう言ってみると、メアさんは頑張ってこくっと頷き、隣ですやすや寝ている夜空さんの服をキュッと掴んで目を閉じました。そして数秒で寝てしまうのです。
「主様、見てください! 我の服も掴んでくれてます!!」
「ホントですね。メアさんもとっても賢い子です」
「えへへ、主様みたいです!」
「そうですか?」
「はい! 主様はそういう子です!」
そんな感じのアヴィさんに首を傾げると、私はもう一度すやすや寝ている四人のことを見てみます。
……ふふっ、可愛すぎます。いい子たちです。
今日はメアさんの歓迎会で美味しいお菓子をたくさん食べさせてあげることもできましたし、穏やかで平和な一日でした。
「アヴィさん、ナブーさんは今日来なかったので、明日には来そうなんですよね?」
「まあそうなります! 我の考えではまず間違いなく明日来ますよ!」
「……それなら、今日は寝ずに起きてますね。いつでも戦えるようにしておきます」
「やったぁ! 我と一緒に起きてましょうね!」
「はい、そうします」
そんな風にお話したあとは、私もアヴィさんに巻き付かれながらまったりと本を読んでいくのでした。
〇
それから夜が明け、朝になりました。アヴィさんと楽しくお話して過ごしていると、ルアさんが最初に目を覚まし、続いて夜空さんとメアさんが目を覚ましました。オルさんは三人が遊び始めてから起きたのですけど、頑張って布団から出ると、私にムギュっとしてきたあとに、「早く起きられて偉いです」と言って夜空さんたち三人のことを撫でてあげるのです。そんな優しいオルさんのことを私たちも撫でてあげると、またまったりと四人を見守ることにしました。
そうして穏やかに時間は過ぎていき、今日も危ないことはなく一日の終わりに差し掛かります。もう既に二十三時を回っていますし、あと三十分もすれば明日になります。
……えぇと、中々来ませんね。……でも、油断はできません。
私たちはいつナブーさんが現れても大丈夫なように、もう空間収納魔法は閉じてアヴィさんの作ってくれた空間で待機しているのです。魔剣は夜空さんとメアさんを握っているのですけど、『終天剣エイル』の身体無限強化は理を使って持つことなく行っておきました。そして、夜空さんの覚醒も済ませているので準備はできています。……ただ、それだけでなく、アヴィさんもしっかり真っ白な魔剣を握っているのです。
「アヴィさんもその魔剣を使うんですね」
「はい! 主様にもらった魔剣です!」
……むう、また別の方のお話ですね? まったく、アヴィさんは……。
「えーん! 我は可愛そうです! ……でも、主様が殺されてしまう可能性があるので、今は我も気を抜けません!」
「……えと、そうですね。気を付けます」
夜空さんの覚醒で守られているとは言っても、流石にアヴィさんも心配してくれているみたいです。……それほどまでに、これから戦うナブーさんは危険ということですね。
『夜空さん、メアさん、頑張りましょうね。オルさんとルアさんも、いい子で待っててください』
『応援してます』
『……我もです。たくさん応援します』
『……頑張る』
『わたしも戦う』
そんな子たちの声を聞いているとつい微笑んでしまうのですけど、アヴィさんが「――主様!? そんなにほのぼのしてたらダメですよ!?」と言ってきたので、私も一度集中し直して頷いておきました。




