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Envy (嫉妬)

Envy 8

 

「さあ、来ましたね」

 ジョンが急に緊迫した表情を浮かべ。一人の女中から渡された一冊のグリモワールを持ち出した。青い炎の暖炉に手を差し伸べると。すると、暖炉の奥の炎から巨大な五匹の蛇がズルズルと這い出て来くる。その次から次へと現れてくる蛇の鎌首をジョンは撫で始めると、すぐさま全ての蛇を、この部屋のあらゆる出入り口に向かわせる。

「ジョンさん? 何を?! 何が起きているんです?!」

 ヘレンはその巨体から来る重さによって部屋全体を振動させる巨大な五匹の蛇に震え上がった。彼がここまで警戒する人物は、ここホワイト・シティでは一人しかいない……。

「私はね。今までずっと……深く考えていたんです。いや、悩んでいたのです……。自分は生か死かに。そのどちらに強い魅力を常に感じていられるのかとね。そう、それはこれからも生きていくために必要な原動力。そう、生き甲斐だ。……私はねえ。とても大切な人を亡くした日に、その答えがはっきりとわかったのですよ。私の生き甲斐はたった一つ! 人類とは真逆な衰退の道を歩むことだ!」

 ヘレンはジョンの顔の血色がみるみるうちに良くなっているのに気が付いた。

「私はね。ヘレンさんが凄く羨ましいんだ!!」

 突然、巨大な蛇が壁にめり込み何かに噛みついた。

「グッ……!」

 くぐもった声が壁から部屋へと木霊した。

 壁の方からバタンと大きな音がしたと思ったら、ヘレンは目を疑った。重厚な絨毯の上にモートが倒れていたのだ。

 何故、モートは壁や床を通り抜けられるのに?

 それが、モートは今では蛇に噛まれたせいか絨毯の上に、おびただしい血を広げていた。

 4匹の蛇もそれぞれの扉や窓付近から離れ、モートに大口を開けて向かって行った。

「モート!」

 ヘレンはありったけの声で叫んだ。


 どこからか男の柔らかい祈りの声がする。


 すると、倒れていたモートが起き上がった。

 すぐさまモートは銀の大鎌で自分を噛んだ一匹の蛇の首を刈った。

 それから、胴体に刈り込み。首と胴体を完全に切り離した。

 4匹の巨大な蛇がモートへ一斉に襲いかかる。だが、モートは銀の大鎌を投げつけた。

 大部屋の反対側の壁が破壊的な音を立てる。

 巨大な蛇の首が全部吹っ飛んだ。

 強烈な破壊音と振動で、ヘレンは頭を抱えて屈みこんだ。


 呼吸を整え恐る恐る向かいのジョンの方を見てみると。

 ジョンも女中頭たちも皆、その場で屈みこんでいた。

 天井のシャンデリアから幾つかガラスの凄まじい勢いで破片や埃が舞って来きた。

 ジョンはうすら笑いを浮かべヘレンに近づいた。

「ヘレンさん。あなたが羨ましいんですよ……。ああ、羨ましい。ずっと嫉妬してました。モート君をこの場で始末できなくてもいいくらいに……。あなたを殺します。ヘレンさん。もうしばらくは人質としてここにいてくださいね。このグリモワールはレビアタンのグリモワールといって、嫉妬の書です。あの蛇はこの本から召喚できるのですよ。私はねー。この世界を滅ぼすのです。そう人類の終焉を望むものなのです」

 ジョンは薄気味悪く笑った。

 ザンッ、ザンッ、かなり離れた場所で蛇の胴体から瞬間的に血が舞い上がる音がここまで聞こえた。

 ヘレンは離れた場所の首なしの蛇が真っ赤な血をまき散らしながらも、その胴体がモートを獰猛に襲っていることにある種の嫌悪感にも似た気持ち悪さと危機感を覚えた。大鎌を振るモートの身が危ないように思えてならなかった……。


Envy 9


 今は午後の11時20分。

 アリスはクリフタウンの「グレード・キャニオン」から人通りの往来が激しい大通りにでていた。

 アリスはモートとの別れ際に、とにかく人の多いところに居てくれと言われていたのだ。

 モートとの食事の後、アリスは「グレード・キャ二オン」に避難する前に、近くの喫茶店に寄り道して使用人の老婆に電話で警告をした。

「お願い! 猿の頭の人間に注意して!」

 老婆はすぐに受話器越しから「わかりました!」と答えてくれた。

 真っ白な雪の道を数人のグレード・キャリオンの生き残りの子供たちと踏みしめながら、アリスは徐々にその数を増やしてくる猿を避けようと、聖パッセンジャービジョン大学へと向うことにした。

 シンクレアも無事でいてほしいとアリスは心の底から願った。

 「グレード・キャリオン」はすでに猿の軍勢によって、占領され多くの命が散った。アリスは数人の子供たちと共に店の窓から大雪の降る外へと逃げて来たのだ。

 

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