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Gluttony (暴食) 

 ヘレンは受話器越しからのモートの話を慎重に聞いていた。

「オーゼムがいうには、seven deadly sins (七つの大罪)のグリモワールというのは大変危険らしいから。だから、ぼくたちも行くよ。ヒルズタウンだったよね。だったら、この街で一番目立つ観光名所のグランド・クレセント・ホテルで待ち合わせをしようか」

 モートの声にヘレンは思わず吹き出していた。

「ぷっ、あははは! やーねー、モート……。じゃあ、私の今いるところまで直接来てくれるのね。助かるわ」

 ヘレンは受話器越しからモートの苦笑いする顔がいとも簡単に想像できた。

「ああ。そこなら安心だ。では、グランド・クレセント・ホテルで会おう」

 ヘレンは電話を終えると、ここ格調高いホテル。グランド・クレセント・ホテルのベッドからベルを鳴らし朝食と共に新聞を頼んだ。いつもはベルを鳴らさなくても朝食の乗ったカートとともに、朝刊がくるのだが。ヘレンは念を押したのだ。


 ヘレンは窓を開けた。


 シンシンと降る雪は、白という色で空から大地に彩りを与え続けている。

 外は眩しいくらいの白一色の世界。

 ヘレンは白い息を吐きながら決意をした。こんな場所が今ではドス黒い脅威に晒されているのだ。なんとしても、モートと共に防がなければならなかった。


………


 朝刊にはこう載ってあった。

 昨夜のイーストタウンの貧民街で起きた謎の商店街が破壊され、多大な犠牲者がでた事件は、どこからも犯行声明のない爆弾テロとだけ書かれていた。


 Gluttony 2


 受話器を置くと、モートはサロンからここノブレス・オブリージュ美術館を出ようとしたが。途中、回廊を渡り館内の玄関まで行くと、受付でアリスとシンクレアが待っていた。

 アリスもシンクレアも、周囲のおおよそ50年前の巨匠の絵画や威光を放つ古代の王家の指輪、貴族たちが喉から手が出るほど欲しがっている様々な珍しい美術品の鑑賞をしたがっている節だったが、受付の女性と愛想良く話している。二人とも新調したロングコートを着ていた。アリスがモートに気が付き手を振った。

 丁度、正面階段を降りているモートは、これからヘレンに会いに行くことをすぐに伝えるべきだったのだが……。


 その前にオーゼムも連れていかなければならない。

「モート! ミリーから聞いたわ! 私たちを悪漢から守ってくれたってね! ありがとう! 家では家族全員でミリーの反省会をやっている最中だけど、あなたがそんな良い人だったなんて、すっごく見直したわ!」

 モートは薄く苦笑いした。

「いや、ぼくはなにも……していないんだ。ただ匿っていただけさ」

「本当に良い人ですよね。モートって、付き合って良かったです」

アリスもシンクレアもしばらくは、モートを離そうとしなかったので、モートは困った。受付の女性もモートに好意的な目を向けている。

「アリス……シンクレア……。もうそろそろヘレンに会いに行かないと……いけないんだ」

 モートは困って周囲を見回した。お客の人々は皆、黄色か青の魂だった。

「あら、 そうなの?」

 シンクレアは見るからにがっかりとし、ショルダーバッグの位置を変える。

「これから大学の近くで、お礼にみんなで昼食をしようとしていたのですが、それなら仕方ないですね……」

 アリスは、残念そうな顔で頷き手を振ってモートを見送った。

 モートは急いでノブレス・オブリージュ美術館の正門を出た。オーゼムを探しにイーストタウン行きの路面バスを探した。

 正門から反対側のバスの停留所で、偶然、聖パッセンジャーピジョン大学付属古代図書館の館長のアーネスト・グレグスンに会った。アーネストはヘレンとも懇意な初老の男性だったことをモートは知っていた。

「やあ、モート君。すっかり立派になって」

 アーネストはモートのことを知っている風だった。

「こんにちは。アーネストさん」

 今年で63歳になるには、あまりにも頑健な身体を持つアーネストは、図書館の館長というよりも、歴戦のボクサーとも見えた。


 シンシンと降る雪の空からは、日差しがほんの僅かに射しこんでいる。

 白い息を吐いて、アーネストが言った。

「ヘレンさんから君の話を聞いたよ。モート君が追っているグリモワールは、実は七冊あるんだ……1589年に書かれたそのグリモワールは、それぞれ七つの大罪にちなんだ名前と強力な悪魔の眷属を召喚できると言われているんだ」

 アーネストの声は気のせいか微かに震えていた。

「七冊?! すぐにヘレンに知らせないと!」

 モートは慌ててバスの時刻表を見たが、けれども、まだ30十分以上も待ち時間があった。そこで、近くにある「ポット・カフェ」まで全速力で電話を借りに行った。


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