17話 クラス10th A組
「ズルズル」
焉武はきつねうどんを食べていた。周りの人達は皆自分と同じIPGのユニフォームを着ている。
「あーー!いたいた」
緑髪の見た事のある女性が手を振りながら歩いてきた。手には何かを持っている。
「あっ薔薇さん」
「はい!これ」
「なんですか…?」
薔薇が突然紙を2枚渡してきた。
「これはなんですか?」
「あなたのクラスよ。昨日言ったでしょ?ここは学校のような物だって。あなたは新入りでクラス10thのA組に編入される事になったわ!!おめでとう!!」
「クラス…10th…」
「まぁ見習いってやつね。大丈夫!!君ならすぐにクラスなんて上がるよ!!!なんてったってA組なんだから!!」
「A…組?他と何か違うんですか?」
「まぁね!でも大丈夫!あなたの潜在能力を考慮した結果ここにされたらしいから!!」
「はぁ…なるほど…」
紙を開くとクラスへの道が描かれていた。もう1枚にはスケジュールが書かれていた。
「取り敢えずはそのスケジュール通り!!偶に特別授業とかあるけどね。私のようにクラス1stの人や2ndの人が講師となる授業。私も昔はよく勉強させてもらったなぁー。懐かしいー」
机に肘を突いて何かを思い出していた。
「涼ちゃん本当可愛かったなぁー」
「薔薇さんって勉強とか出来てたんですか…?」
気になったのでストレートに聞いてみた。
「意外とこれでも当時は1、2を争うレベルだったのよ?」
「そうなんですね…意外だな…」
「あっ!じゃあ私はこれで!!これから訓練生達に特別訓練させないといけないから、その準備をしておかないと!!」
薔薇は笑顔で伝えると、どこかへ走って行った。
「本当自由なんだなぁ…あの人…。大人しい人なのかと最初は思ったけど…」
もう1回紙を開いて、教室の場所を見た。
「ふむふむ。なるほど」
取り敢えず目の前のきつねうどんを食べ切って、教室へ向かった。
ーーーーーーーーーー長官室
「本当にA組に編入させて良かったのでしょうか?」
「どうしたんだ?真締?」
真締がとても不満そうな顔で話しかけてきた。
「彼女の身に起こった事件から考えると、このA組に編入させるのはかなり辛いのではないかと…」
「クラス10thのA組はすぐに5th…いや3rdに行けそうな才能ある奴らを集めてるんだ。彼女だって能力的にはすぐに3rdに行けそうだろ?素質もあるしな」
目の前の書類をめんどくさそうに眺めながら、寿はそう呟く。タブレットを机に置いて、画面を寿に見せつけるようにして真締は言った。
「しかしあのクラスには…この子が居ます!!」
「ん?あぁ。そうだな」
「私は彼女の内側を見たと言いましたよね?当然彼女の性格もある程度はあの時把握しました…。もしこの子の事が分かると、華山焉武は何をしでかすか…怒りのあまり大暴れする可能性があります!!」
「んー。じゃあ念の為に神山とかをA組の前に立っておくように指示しておこうか?ちょうど彼は今日空いてるらしいしな」
ーーーーーーーーーークラス10th A組
「ここか…ん?」
紙にはドアの前で待機して、講師が呼んだら中に入ると記されていた。しかしA組の前には神山竜次が立っていた。
「あなたは…」
「よう!」
「どうしてここに?」
「長官にお前を見張れってな」
「それって…どういう…」
「まぁ気にすんな。ほらそろそろ呼ばれると思うぞ」
「?」
何がなんなのかさっぱりな焉武はとにかくドアの前に立った。
「それじゃあそろそろ来ているかな?昨日言ったように今日から新入りが加わる事になった。じゃあ入ってきてくれ」
「は…はい」
ドアを開けて教室内に入った。目の前には想像していたより多くの訓練生達がいた。
「それじゃあまずは君の自己紹介から頼む。名前と能力があるのなら能力の性質。最低でもこの2つは言うんだ」
「お…俺は華山焉武といいます…。最近ミュータントになったばかりで、能力は『身体を炎に変える能力』です。よ…よろしくお願いします」
深くお辞儀した。人の前に立つ事など今まで無かったのに、50〜60人の前で自己紹介というのは、心臓が止まる思いだった。頭を腰辺りまで深く下げると、周りがザワつき始めた。
「新入りというから楽しみにしてたんだけど…」
「思ったより可愛いよな」
「胸も大きいしめちゃくちゃ髪長いし最高じゃね?」
「あの子の髪…真っ赤だけど…地毛なのかな?」
「地毛で赤色とか聞いた事ないけど…染めてるようには見えないよね」
「身体を炎に変えるだって…」
「変身系の自然型って事かな?だとしたら羨ましい…」
(うわぁ…なんかすごい目立ってるよ…怖いなぁ…)
膝が震え出した。顔を上げると講師も自己紹介を始めた。
「私は亀木 拓。能力は『亀に変身する能力で変身系動物型だ。よろしくな」
「は…はぁ…。よろしくお願いします…」
亀木が誰も座っていない席に指差した。
「あそこが今日から君の席だ」
「分かりました」
荷物を持って席の方へ歩いて行く。席に荷物を置くと、横に座っていた少女が話しかけてきた。
「ねぇねぇ!!」
「?」
「君って変身系自然型なんだよね?」
「ま…まぁそう言われてるな…。どうしたんだ?」
「うんうん!!確かにオッドアイだ!!しかも他の変身系自然型の人よりも、鮮やかで真っ赤な目をしてる!!」
「なんなんだ?」
「ねぇねぇ!!その赤い方の目って、左目と違う所とかあるの?」
「まぁ…視力が良いとか…それ…ぐらいかな?今の所は…」
「ふんふん!!」
少女は明らかに興奮した様子でメモを取っていた。
「君…名前は…?」
「私?私は…」
「おい!千賀!!またお喋りか?休み時間にしろ!!今は授業中だ!!」
「うっ…すみません…。あとで自己紹介するね」
「うっ…うん…」
ーーーーーーーーーー
「ふーっ。1時間目終わったー!!」
「千賀…」
「ん?」
突然別の子が後ろからやってきた。顔を見ると今朝ぶつかったマスクをしていた子だった。よく見るとマスクが替わっている。
「どうしたの?彩?あっそういえば数学苦手だったんだよね」
「うっ…うん…。そんな大にして言わなくても…」
「どれどれ?」
「あっ…」
焉武に気が付いた。
「私は阿護門 彩と申します…。よ…よろしくお願い…し…します…」
「もう少し自信持ちなよ。彩ー」
「えぇ…無理だよ…」
「この子の能力は…」
「いっ!!言わなくて良いから!!!それだけはお願い言わないで!!千賀ちゃん!!何でもするからぁ!!」
能力を言われそうになった瞬間少女は突然慌て出して、千賀という子の口を抑えた。
「えー。良いじゃん」
「うぅ…駄目だよ…絶対…」
「分かった分かった」
千賀は笑いながら謝った。仲が良いのはとにかく分かった。しかし…
「千賀…さん…?あなたの能力とかは…」
「千賀で良いよ!私?そうそう!自己紹介を忘れてたね!!」
ーーーーーーーーーー訓練場
「ほらほら!!皆頑張れー」
「「「「「はい!!」」」」」
グラキエスがクラス7thを訓練していた。
「おーい!!!グラキエスーー!!」
「ん?」
振り返るとサングラスをかけている女性が歩いてきていた。
「どうしたの?神蛇?」
「あんたが気になるって言ってた子の事なんだけど」
「焉武の事?」
神蛇 美代。彼女はクラス4thのメンバーでグラキエスの直属の部下にあたる。部下とは言っても上下関係はそこまで気にしていない。
「そうそう。あの子の編入先よ」
「どれどれ…クラス10thの…A組…A!?」
「そうよ」
「A組には…」
「この子って昨日グラキエスが言ってた子よね?んーっと…確か…千田研に人体実験の被検体にされて、ミュータントにされた代わりに女の子になったって」
「そう…。何を考えてるんだ……。このクラスに編入させるなんて…」
紙をグシャグシャに握り締めつつ、歯軋りをしながら呟いた。顔を見るとかなり汗を掻いていた。
「グラキエス?」
美代がそんなグラキエスを横目にして
「気を付けなさいよ?」
ほんの少しだけ頷いて
「わ…分かってる…わ…」
ーーーーーーーーーークラス10th A組
「そうそう!自己紹介を忘れてたね!!」
改めて体を焉武に向けた。
「私は千田 千賀!!能力は防御系になるんだけど『細胞分裂を使い体の一部を創ったり、また負傷した部位を……』」
ドゴン!と大きな音が教室に響き渡った。皆が一斉に音源の方向を見た。そこは焉武が立っていて、机が横に倒れていた。
「せ…せんだ…千田…だと…?」
「え…うっ…うん…そうだけど…どうしたの…?」




