14話 面接…?
「ん…」
焉武は目が覚めた。しかし再び手足は固定されており、今度は椅子に座らさせられていた。
「今度はなんだ…?」
あのIPGの男性に腹パンされた後の事は全く覚えていない。周りの光が付いた。そこには椅子が11個あった。
「何処なんだよ…ここは…」
この感じは前にも味わった。千田研に捕らえられた時だ。だがあの時には無かった力がある。焉武は手足を炎化させて、脱出を試みた。が炎化が出来なかった。
「え…?」
全く変わらない。手足に幾ら力を込めても、何も変化がない。
「なんで!?こんな時に!!」
もしかして体が元に戻ったのかと思ったが、胸の膨らみや前髪の色からして、まだ女だというのが一瞬で分かった。とにかくこれ以上ジタバタしても意味が無いと判断して、落ち着く為に一旦身体の動きを止めた。深呼吸しつつ、まず状況を確認する事に集中した。
(落ち着けー落ち着けー。まずここはどこだ…?あの人達がIPGのメンバーで、捕まってしまったと考えると…ここは…IPG本部か?いや…わざわざ本部へ連れてくる必要性はあるのか?ただ1人の身元不明なミュータントの為だけに、わざわざ富裕層区域のIPG本部にまで連れてくるか?)
しかし目の前のIPGと書かれているマークを見ると、ここが少なくともIPGの建物である事が分かる。椅子が複数ある事から、これから尋問的なのを受ける事になるのだろうか。そう考えていると後ろからドンっと、ドアが開く音が聞こえた。
「!?」
「それで?涼。この子がそのミュータントなの?」
「はい」
「可愛いじゃないの。はい。これをあげるわ」
何故か薔薇をポケットに入れられた。そして更に左から、顔を近付けてくる人も居た。
「心臓の音が凄い。この人緊張してるみたい」
「そりゃそうだろう。いきなり連れて来られたんだからな」
「竜次と涼姐が連れて来た」
「だってこの子は変身系自然型なのに、ミュータント身分証を持ってなかったのよ。連れてくるしかないでしょ」
「だからっていきなり連れて来られても、私達だって対応に困る…。いきなり呼ばれたから」
続々と部屋に入って来た人達は、目の前の椅子に座って行った。中にはあの2人も居る。真ん中の1つの椅子だけ誰も座っていなかった。
「長官はどこ?ファー?」
「また遅刻でしょう。どうせ」
「ジーッ」
「どうした?厚頭」
「彼女の目オッドアイだよ?」
「あぁ。さっき涼が言ったように、変身系自然型能力らしい」
「へぇ…」
10人の目線を一気に浴びせられ黙ってしまう。明らかに10人のオーラは尋常じゃない。見ただけで分かる。今の自分には勝てない。焉武は冷や汗をかきながらそう感じた。
「お待たせしたね。いやいやーすまん!」
「長官?そろそろ遅刻癖治してくれません?」
「仕事が大変でね」
「それは私達も一緒。長官だけ忙しいは駄目。それに長官には秘書だって居る。私達には居ない」
長官と呼ばれる男性の後ろには眼鏡をかけた女性が立っていた。長官と呼ばれている男性は真ん中の椅子に座った。女性は横でタッチパネルを持って立っていた。
「えぇと。この子が涼と竜次が言っていた身分証を持っていない女の子なのかな?」
「「はい」」
「そうかそうか。なるほどね。それで君の名前を教えてくれるかな?」
「俺の…?」
「早く言いなさい。長官からの指令よ」
「いや…。真締…そこまでは言って…」
「早く!!長官を待たせるな!!」
「相変わらずだね。真子ちゃん」
「華山…焉武です」
「かやま…えんぶね…。次!漢字は!!」
美人ではあるが、口調がかなり怖い。というかほぼ恐喝に近い。
「『華やか』という漢字に『山』で…下は…」
すると長官と言われていた男が、秘書に向かって
「最近同姓同名の男子高校生が行方不明になってたよな」
長官が秘書に向かって話しかける。秘書がタッチパネルの画面で調べ始めた。
「はい。『華山焉武』という男子高校生が数日前に消息不明となっています。あとそのご両親にも行方不明届が出ています。父親の『華山縁夜』が働いている会社の方から、警察の方へ通報があったらしいです。そして最近の事件の事から、ミュータントが関わっている可能性が高いという事で、私達IPGの方にも連絡が来ました」
「それです!!そこの家の息子が俺なんです!!」
焉武は大声で叫んだ。だが周りからは冷たい目線を向けられた。確かにこの姿を見たら、息子なんて言えない。『その縁夜の隠し娘なんです!』と言った方が、まだ信憑性がある。
「へぇ?その姿で君は男子高校生だと…?」
「信じてはくれないと思いますが…事実なんです!!俺は千田研とかいうマッドサイエンティスト野郎に人体実験されて、ミュータントにされたんです!!そして副作用か何なのかは分かりませんが、こうして体も女の体に変化したんです!!」
「にわかには信じ難い話ね」
髪の色が銀色で、両目が少し青めの色をしている、ポニーテールの女性が反論してきた。
「まぁまぁ。真締に調べさせれば簡単に分かる話だ」
長官が秘書の顔を見る。すぐに頷いて、秘書は焉武の方へ歩いて行った。そして焉武の右腕を掴む。
「今から私の質問には『はい』か『いいえ』で答えなさい。良いわね?」
「え?」
するとギュッと右腕を強く握られた。何故か炎化が出来ないので、普通に痛い。
「『はい』か『いいえ』って言ったわよね?」
「は…はい…」
「じゃあまず1つ目。単刀直入に聞くわね。あなたは本当に失踪した『華山焉武』?」
「はい!!」
自信満々に答えた。秘書の女性は少し驚いた表情を見せた。そして長官の顔を見る。
「続けてくれ」
「あ…あなたは本当に元男子高校生なの?」
「はい!」
「…」
「どうしたんです?真締さん?」
緑色に髪を染めているおっとり系のお姉さんで、さっき薔薇をポケットに入れてきた女の人が、側に居る秘書の女性に話しかける。しかし秘書は質問を続ける。
「あなたは千田研の仲間なの?」
「いいえ!!」
「なるほど…」
秘書の人は手を離した。そして振り返り、10人の方へ体を向けた。
「彼女…いや彼は間違い無く『華山焉武』です。嘘は吐いていませんでした」
「そうか」
「……」
「どうしたの?グラキエス?」
「ん?いや。なんでないわ。薔薇」
「さて。君が焉武君だって証明されたから、今回はこれで終わりだな。千田研に人体実験でミュータントにされたとなったら、身分証を持っていないのも納得出来る。何か質問はあるかい?」
焉武がずっと疑問に思っていた事を聞く。
「ここは何処なんですか…?」
長官が上にあるIPGのマークを指差す。
「見ての通り。ここはIPGの本部だ」
「なぜ…俺をここに…?犯罪者扱いするのなら、そのまま刑務所へ連れて行けば…良かったのでは?」
「あぁ。それに関しては色々と理由があってね。神山竜次とグラキエス・ファーが、刑務所に入れる前に1度話を聞きたいと言ってきてね。ここに居る者達も同じだ。それでこういう形となった。そうだそうだ。これは言わなくちゃな。涼が変身系自然型のミュータントと言っていたから、君の身体にミュータント抑制薬という物を注入させてもらったよ。そうだな…時間的にあと10分程で、薬の効果が切れるはずだよ」
「ミュータント…抑制薬…?」
すると竜次の向かって左側に座っている男が、こちらを見てきた。なんか物凄く目つきが悪かった。
(enemy…じゃないよな…」
「その薬。そこの私の兄さんが作った。効果抜群。ミュータントの能力を一定時間抑制。つまり使えなくする。すごく便利」
「兄さん…?」
すると目つきの悪い男性が、物凄い眼光でこちらを睨み付けてきた。少し恐怖を感じた。
「安心して。彼は怖い顔をしてるけど、良い人ではあるから。まぁ喋れないけどね」
「はっ…はぁ…」
「そうだなぁ…。これから君はどうしたい?」
「え…?」
突然長官側から質問が来た。
「これからだよ。君の言っている事が本当だというのは、真締のおかげで君は無実というのが証明されたからね」
すると長官が立ち上がり、焉武に近付いて行った。
「君はIPGに入りたいかい?」
「へ…?」
「このInternational Peace Guardiansに入りたいかい?と聞いているんだよ。住む所が無いだろう?竜次と涼から貰った君の情報を見てね。どうやら貧困層区域のボロいアパートに住んでたみたいじゃないか。一般層区域に君の家はあるのに」
「……まぁ…。こんな体になったので…。住む所というか…自分の居場所が無い…というか…」
すると男性でずっと黙っていて、関わって来なかった男が突然喋り出した。
「その秘書の真締 真子の能力は知っている。だが本当に真締真子の能力の判断を鵜呑みにして、信じるつもりか?長官」
「相変わらず厳しいなぁ。時政くん。大丈夫だよ。俺は真締を1番信用している。だからいつも側に居させているんだ」
「長官!!ありがとうございます!!!」
さっきまで怖い顔は何処へやら。真子は顔を赤くしながら、深々と頭を下げた。腰が綺麗な90度を描いている。
「長官はいつも大事な事を勘で決める所があるよね」
「いやぁ。だって深く考えなくて良い事は、深く考えない方が良いだろ?無駄に頭を働かせる行為は、効率を低下させるだけだからな。ハハハハ」
「今回の事は深く考えるべき。長官は楽観的過ぎる。責任感持って」
「大瀬音 静奈さん…?長官に向かってその様な口は、いくらクラス2ndの方だとしても、許しませんよ…」
「グラキエス。守って」
「真締さん。落ち着きなさいよ」
「はい。ファーさん」
「話がかなりズレてしまったが、改めて聞こうか。君はIPGに入りたいかい?」
「……」
周りの人達が焉武を一斉に見てきた。




