13話 IPGメンバー
「クラス…1st…」
「名前は?」
「え?」
「名前」
「華山…焉武です」
「焉武…ねぇ。それであなたはミュータントなの?」
「え?」
涼はグイッと顔を近付けた。そのキリッとした目に威圧され、正直に首を縦に振った。涼は手の平を焉武に見せた。
「ほら。ミュータントなら持ってるでしょ。ミュータント身分証。それを見せて」
困惑した。聞いた事の無い単語が出てきたからだ。
「え…?身分…証…?」
「分からない?ミュータントの疑いがあったら病院に行って、検査してもらって、ミュータントって分かったら発行されるやつ。ほら。出しなさい。一応確認しないといけないから。あなたの名前と能力を」
(そんなのあるとか知らねぇよ!!俺はついこの前までミュータントとは無縁だったんだから!!!)
ミュータント身分証を初めて聞いた焉武は、当然そんな物持っていない。
「あなた…ミュータントなのよね…?」
「いやぁ…これには…深い訳があってですね?」
涼が右手の親指を上げて、人差し指を焉武に向けた。指鉄砲の形だ。
「問答無用よ。ミュータントなのに身分証を持っていない者は、即危険人物とする」
「えぇぇぇぇ!?」
危機を感じた焉武はすぐに体を炎に変えた。
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「本当に戻らないんですか?IPGに…。大谷さん」
アパートの大家である大谷 義達は、涼と一緒に来ていた男と話していた。
「分かるだろ?…俺はもう…戦える体じゃ…ない」
「そうですか?結構元気に見えますよ?」
「竜次よ……。世代は交代したのだ…」
「……」
「俺達創設メンバーの多くはもう新しい世代よりは強くないし、戦える体だったらまだしも…」
義達は腕の包帯を解いた。かなり腐敗していた。正直普通に体の一部として動いているのが不思議なぐらいだ。
「俺はもう戦える身体じゃないんだ……」
「別に前衛に立たなくても、教官としてあなたの経験などから新入り達に指導することは出来るでしょう?能力の使い方や戦い方など」
「生憎だが……。俺は教えるのが…苦手でね…」
義達は目を瞑ってフフッと笑った。顔も目以外は包帯で覆っているが、少し口角が上がったので、ニヤッとしたのが分かる。
「俺が居なくても……君達が居れば大丈夫だろう?……特に神山 竜次。お前の実力なら…既にクラス1stに行ってるのではないか?」
竜次はIPGカードを義達に見せた。
『International Peace Guardians〜国際平和守護組織〜 日本 クラス1st 神山 竜次』
「やはりな……。お前ならすぐクラス1stに行くと…思ってたよ」
「まぁ殆ど能力のおかげですがね」
竜次は謙遜した。
「能力もその者の力だよ……。そして君は…その力を使いこなせている…。立派な実力だ……。他の者達もそうだ…。涼や…」
その時2人は壁に目をやって、すぐに後ろへ移動した。その瞬間エネルギー砲が飛んできた。
「これは…」
「涼の奴か!?誰かに見られていると言った後、どっかに消えて遅いと思ったら、敵と出会していたのか!?」
すぐにエネルギー砲が飛んで来た壁を見た。壁は無傷だった。
「やっぱりこれは涼の技だな」
「相変わらず…変わった能力だ…。まぁ良かった…。彼女の能力なら……俺達にも無害だろう…」
「そうですね。アイツなら1人で何とかしてくれるだろうし」
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「どう?腕を奪われた気分は…」
焉武の右腕が消えていた。しかし後ろを見ると、何もなかったかの様に全て無傷だった。
(危なかった…。炎に変えるタイミングが少しでも遅かったら…)
奪われた箇所から血ではなく、炎が出ているのを見て涼は呟いた。
「やっぱり…変身系自然型能力か…。性質は炎…」
焉武は右肩から火炎放射機の様に炎を出した。炎が消えるとビームにより消えた右腕が、服ごと元に戻っていた。
「ふぅ…何とか助かっ…」
目の前には涼の足があった。
「え…?」
「吹っ飛びな。死にはしないよ」
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「分かりました。では今日の所は帰ります」
「あぁ…。何度来ても変わらないがな……。まぁ…今回みたいに…お茶ぐらいなら出すよ…」
竜次が立ち上がったその時、ドガァン!!という大きな音と共に女の子が壁を突き破って飛んで来た。女の子は2人の間でちょうど止まった。
「い…たいな…」
「おぉ。また会ったな。お嬢ちゃん。壁を突き破ってまで会いに来るとは、大胆な子なんだね」
「え…?」
「さっきの子だろう?その右目」
「あ…あなたさっきの…」
壁の穴を見ると涼が立っていた。
「竜次。その子は変身系自然型のミュータントよ。たぶん能力は『炎に変身する能力』」
「なるほど。まぁミュータントでオッドアイだったら、変身系自然型…あの子の言っていた事は本当だったんだな」
「……?」
とにかく逃げようと思った。IPGとは戦おうなんて思わないし、そもそもさっきの食らってわかった。自分には到底敵わないと。ゆっくりと手と足を動かして、その場から離れようとした。
「!?」
包帯が足に巻き付いている。しかもかなりキツめに縛られていた。
「君は…取り敢えず……大人しくしていろ…」
「お久しぶりです。大谷さん」
「久しぶり…だな…。涼」
「大丈夫ですか?体の方は」
「まぁ…な…。当時よりは…だいぶんマシにはなっている」
焉武は取り敢えず右足を縛っている包帯を燃やした。包帯が燃えると同時に、縛っていた包帯の力は一気に緩んだ。
「……炎か…やはり俺とは相性が悪い…」
立ち上がり、逃げようとすると前に竜次が立ちはだかる。
「俺の名前は神山竜次。よろしくな」
「ぐっ!」
「ほら。攻撃して来い」
「!?」
すると涼は床に座って、目の前のお茶に手を付けた。
「美味しいですね。やはりここのお茶は」
「そうか…?なら…良かった」
焉武は戸惑っていた。後ろでは先程攻撃してきた女性が、急にお茶を飲み出すし、前では大きな身体をした男性が目の前で、「攻撃して来い」と言ってくる。
「どうかしたか?」
(絶対何かある…。多分この人も変身系自然型…なんだろう…あれ?)
目を見たがオッドアイではなく、両方ともブラウンという普通の色だった。
「どうかしたのか?ほら」
「くっ!」
焉武は右腕から大きな炎を出して、竜次の身体を攻撃した。
「暑いですね」
「全く…俺の部屋を…滅茶苦茶にするなよ…。そうだ。涼。弁償代は…ちゃんと払えよ…。というか…壁を直せ…」
「うっ…すみません…」
炎となった拳を竜次の腹目掛けて放ち、完全に命中したのに、後ろの2人はかなりのんびりしていた。その時、炎の中から手が出てきた。竜次の手だ。
「ふう。なるほど。まだ能力を使い慣れていないんだな」
「え?」
炎が消えると、そこには無傷で立っている竜次が居た。
「それじゃあ俺の体に擦り傷もつけられないな」
「くっ!もう1発!」
しかしやはり無傷。全くダメージが入っていない。
「能力は強くても、使いこなせなくては意味が無い。いくら変身系自然型でも、使いこなければ雑魚能力に負けるぞ?」
「うっ…」
「そうだなぁ。可愛いし見逃すのもありかなぁと思ったんだが…」
再び竜次に攻撃を当てる。だが全く効かない。何もガードしている様子も無いのに、全然効かない。
「そこまでだ。残念だが…。君には1度IPGの日本の本部へ来てもらおう」
「!?」
竜次が焉武の腹にパンチを食らわせた。
「ぐっ!」
その時視界が一気に真っ暗になった。気絶してしまったのだ。
「ではコイツを連れて行くので」
「早く行け…。涼に関しては、用事が済んだら……すぐにうちの修理をしろ…」
「うっ…」
「仕方ないな。壁を破壊したんだから」
竜次は大笑いしながら、気絶している焉武を担いで、大谷のアパートから出た。涼も続いてアパートから出て、富裕層区域にあるIPG日本本部へと歩いて向かった。




