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12話 ボロいアパート

ピンポーン。外からも聞こえた。足音がメシメシと少しずつ聞こえて来る。ドアがギーッと開いた。

「ん?何の…様だ…」

大柄で目つきが悪過ぎる男性が出てきた。暗いので体が大きいという事ぐらいしか分からなかった。

(えぇぇ。大家さん人相悪ぅ……)「あの…ここに住みたいんですけど…」

「入居希望者か…?」

「まぁ…そんな所です…」

「ほら」

男が手を出してきた。その手には包帯がグルグルに巻かれていた。

「?」

「1000円」

(え!?いっ…いきなり!?!?)

とにかく財布をポケットから出して開けた。なんかあまり関わってはいけない気がしたので、急いで渡して終わらせようとしたのだが

「あっ…あれ?」

明らかに1万円札がかなり減っている。まさかと思い後ろを見ると、手を振るさっきの男性がいた。

「あんの野郎…!!」

「どうした?」

「いえ…」(クソぉ…10万ぐらいになってやがる…。アイツいつの間に20万持っていきやがった…)

取り敢えず1000円札を渡した。すぐに手を引っ込めると、暫くして鍵が渡された。

「201号室だ。昨日空いたばかりのところだ」

「は…はぁ。分かりました…」

大家さんはドアをすぐに閉めた。

(不審者過ぎるぞ…。ここの大家…。まぁ家も一応見つかったし…。ここで暫く暮らす事にするか…)

取り敢えず2階へ上がり201号室と書かれたドアを見つけた。鍵を挿して回したが、ガチャという開ける音がしなかった。

「あれ?もう開いてたのか?」

ドアを開けると、キィーという鉄の錆びた音が聞こえた。メンテナンスしてないんだろうと、すぐに察して部屋に入り鍵を閉めようとした。だが…

「あれ…」

なんと鍵が閉まらない。カチャッと鍵の取手の部分を横に回しても、ドアが開いてしまう。

「このドア…欠陥じゃないか……。ドアが欠陥は流石に駄目だろ…」

しかし1000円という家賃と、ここが貧困層区域である事を考えると、それも仕方がないと思えた。何せここは普通の生活すら困難になった者達が集う区域なのだから…。財布を取り出して、中のお金を取り敢えず床に置いた。そして10万円近くに減っている金を見てため息を吐きつつ

「油断するなと言ってたが…まさかこんなに早くやられるとは…。想像以上に危険だな…ここは…」

初日から所持金の半分以上を盗まれた。lol:これはかなり大きい。早めに仕事を見つけなければ、生きていけない。

「いくら貧困層区域とはいえ、仕事はいくつかあるはずだ…。来る途中にも店はあったし…まぁボロかったけど…」

とにかく初日は何も無い為、床にそのまま横たわり寝る事にした。風呂には入りたかったが、まず水が出ない為今日は我慢するしか無かった。


ーーーーーーーーーー


目が覚めた。体を起こして荷物を全て纏めて、部屋から出た。

「?」

下を見ると包帯を体に巻き付けている男が、男性と何か話をしていた。焉武は昨日の大家の特徴を思い出して、すぐに包帯の男が大家さんだと分かった。

「何の話をしているんだろう…」

少し気にはなったが、そんな事を気にするよりも自分の生活の事を考えなければならなかったので、何食わぬ顔で2人の横を通り過ぎた。その時男性の口からある単語が聞こえた。

「薬だ…」

(薬…?)

焉武は振り返り2人を見た。何かを渡しており、大家さんは金を渡していた。男性は金をポケットに入れると、そのまま離れて行った。

「ちょっと!!」

大家が振り返る。焉武は大家の手を握り締めた。正直関わらない方がいいとも思って、無視しようかと思ったが、咄嗟の判断で話しかけてしまった。

「なんなんですか!?これは!!」

「お前は昨日の…。薬だ…」

「それって覚醒剤とかじゃあ…」

焉武は薬が入っているポケットを見て恐る恐る呟いた。大家さんは身体中に包帯を巻いている。もしかしたら前々から、かなり薬を使用しているのかもしれない。だとしたら自分のすぐ近くに薬物中毒者が居るという事になり、そう考えると背筋が凍る思いだった。薬中はいつ何をして来るか分からない。

「……」

大家さんは包帯の隙間から見える目で、焉武の顔を黙ってジッと見た。

「な…なんなんだよ…」

「これが…覚醒剤に見えるのか…」

「ん?」

大家さんは薬を焉武に見せて、更にその場で腕の包帯を解き始めた。その腕は見るに耐えないほど、醜く腐っていた。

「なっ!これは!!」

「分かったか?じゃあもう良いだろ。体が痛いんだよ…俺は…」

そのまま黙って101号室に戻って行った。

(病気…?ここではあんな病気も流行っているのか…?)

恐怖しつつ、すぐに歩き始めた。

「取り敢えず別の宿を探した方が良さそうだな…。ドアも壊れてたし…。あのアパートには他にも危険が多そうだ…」

アパートからとにかく早めに離れたかった。顔を前に向けると男性にぶつかった。

「うっ!」

「おぉ。大丈夫かい?」

男性はすぐに手を伸ばして、焉武の左腕を掴んだ。おかげで転ばずに済んだ。

「あっ…はい。すみません。よそ見してて…」

「いやぁ。綺麗な顔だね。ハーフっぽいけど、どこの国なんだい?」

「…???」

突然のナンパに戸惑ってしまった。しかしどこかで見た事がある顔だった。しかし覚えていない。最近色々あったし、今もこれからどうしようか途方に暮れている状況だ。

「ん?」

すると男性が顔を近付けて来た。

「え!?なっ!なんですか!?」

「お前…その目…。赤色は赤色でも鮮やかな…赤色…だな…」

オッドアイに興味を持ったようだった。あの狂った研究者の件から、オッドアイに興味を持つ奴には関わりたくなかった。

「すみません!俺用事があるので!!」

そう言ってすぐに離れて行った。

「俺…?まぁ良いか。くっそー!結構可愛いかったのになぁ。そうだそうだ。大谷の家は…ここだな」


焉武はチラリと建物に隠れつつ、あの男の様子を見た。

「また大家さんに用事がある人か…。変な人だな…怪しい…。物凄く…怪しい」

前まで一般区域で暮らしていた普通の男子高校生だったが、昔からIPGが好きだった事もあり正義感は元からそれなりにある。更にミュータントになった事で、ある程度の事なら自分でも解決出来る様になってから、正義感は大きくなりさっきの薬の件もだが、関係ない事にまで無意識に首を突っ込んでしまう性格になってしまった。

「ん?」

いつの間にかあの男の横に女性が居た。

「いつからあそこに…?」

目は離していない。ずっと見ていた。なのに知らない女性が横に立っている。

「誰だ…。あの人もどこかで…」

人の顔を全く思い出せない。

「絶対アイツが俺に使った薬のせいだ…。苦痛のショックで記憶に障害が残ったか、副作用のどっちかだ。畜生!!あのクソマッドサイエンティストめ!!」

「ねぇ…さっきからあなた。どうしたの?」

横から話しかけられたが、研の事を思い出すと怒りでいっぱいになり、他に何も考えられない。

「あぁぁぁ!!!思い出しただけでも腹が立つ!!アイツ…もしかして…。俺の目に注目してたって事はそういうことか!?あのクソマッドサイエンティストの…」

「話聞いてる?」

「ちょっと静かに…あれ?」

目の前にはさっきまで男の横に居た女性だった。振り返ってあの男の方、つまりアパートの方を見ると、男は大谷さんと話をしていた。話している間チラチラとこちらを見ている。

「どういう…え?」

女性が焉武の顔を両手で挟んで、ジーっと顔を見てきた。

「なっ…なんですか…」

「オッドアイなんだ…。君…」

「え?」

女性は自分の右手で、顔の右半分を隠すように覆っている髪を上にあげた。よく見ると、女性の右目も黒みがかかっていて、気付きにくいが少し黄色が入っている。つまり同じオッドアイだった。

「君…。さっきクソマッドサイエンティストとか言ってたよね?」

「はっ…はい…」

女性は髪を元に戻した。

「少し話を聞かせてくれる?実は最近この辺の建物が爆発を起こして、崩壊したと聞いてるの。崩壊といっても、完全に破壊されたわけじゃなかったし、奇跡的に貧困層区域の中でも、人が少ない場所だったからその爆発による犠牲者は居なかったんだけど。今私はその事件について調べてるの。内部を調べて、enemyが使っていた事が分かったからね。マッドサイエンティストとして有名な千田研っていう奴がね」

「あなたは…というか、あなたとあの男性は一体…」

「ん?あぁ。私と彼は国際平和守護組織のメンバー。所謂IPGの。知らない?私達の事。一応最強格として名前は知られてると思うんだけど?」

「IPG!?」

「えぇ。この通り」

その女性はポケットからカードケースを取り出して、そこから写真が貼られているカードを見せた。そこには『International Peace Guardians〜国際平和守護組織〜 日本 クラス1st 志津野シツノ リョウ』と書かれていた。

「私はクラス1stの志津野 涼」

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