謝るは恥だが、役に立つ(誠意って大切)
89「謝るは恥だが、役に立つ(誠意って大切)」
その後俺たちは、呆然と王の前を後にしていた
そして城を出て、酒場に入り、2人で息を吐くと
「「こんなはずじゃなかった」」
と言って、2人して同時にため息をついたのだった
マジでなんでこんなことに!俺は婚約の話を無かった
ことにしようとしてただけなのに・・・
するとエイダが不満げに俺に言ってくる
「なんであそこで了承しちゃうのよ!
あそこで違うと言っておけば何か変わったかも
知らないのに」
「いやいや、そこは悪かったけど
あれはもう無理な流れだろう、あそこでなんか
言おうものなら、どうなってたか分からなかったぞ!」
俺たち2人は周りを少し気にして、コソコソと
話し合っていた
だが、ここは俺も一つ物申したい!
「エイダだって、止めてくれなかったじゃないか!
あんなに任せてみたいに言ってたのに!」
「それは仕方ないでしょう?あのときあなた以外
話せる感じじゃなかったんだから!
はぁ、でもどうするの?カルラ
このままじゃ、メリルさまと結婚していずれ
旅どころじゃなくなっちゃうわよ?」
エイダは、俺の一番危惧していたことをズバリ
尋ねてくる
そうなのだ、王の娘と婚約してしまったというのは
それだけでも重荷になる事なのだ
メリルのことは嫌いではないが、結婚となると
今は厳しい
だから俺は・・・
「よし!ちゃんとメリルに謝って、婚約をどうにか
してもらおう!
流石に今結婚となるとヤバイし、その気持ちも今は
俺にもないからな」
ここは非難覚悟になるが、素直に謝ってメリルに
どうにかしてもらうしかない
俺がそう言って、どうだ?とエイダを見ると
「そ、そうね、それがいいと思うわ
・・・やった!まだ私にもチャンスが・・・」
やはり今日何度目かのゴニョゴニョした声で
俺の提案を了承してくれたのだった
そうして俺たちは、気が重いが謝るために
メリルの待つ、離宮へと足を進めるのだった・・・
ーーーーガロス王国離宮・メリル視点ーーーー
「えっ!?なんでカルマさんとそのまま婚約
しちゃダメなのぉ?
いいオスには早めに結婚を申し込みなさいって
お母さんも言ってたよぉ?」
ボクは商談の報告で城から帰ってきたアイナが話があると言っていたので、別室で2人で話していたのだが・・・
「はい!メリルさまは獣人で在らせますので
が存知ないかも知れませんが・・・
人間界では、ただ好きなだけであれば、そのとき
の、一瞬の感覚で好きになるものなのですが
将来の相手となると、長い時間一緒にいた者との
方が、選ばれるし、長く付き合っていけるものなのです!
ですから、メリルさまが本気でカルマさまとご結婚
されたいのであれば、婚約からではなく、友人から
始めた方が、より深い絆で結ばれると思うのです!」
と、言ってきたのだ
もちろんボクはカルマさんと婚約して、そのまま結婚
したいと思っているから無視できない話なのだが・・・
「それだと、婚約者からでもいいんじゃないのぉ?
一緒に婚約者としていれば、いずれ絆や関係も・・・」
ボクは、そういう話を王族関係者や貴族から
聞いたことあるので、そう返したところ
「いけません!それではメリルさまのことを
カルマさまは『婚約者』のメリルさまとしてしか
見てくれません
それでは、その関係に嫌気がさしてしまうかも
知れないのです!
ですから!『友達』から始めるのが一番いいと
思うのです!」
アイナは不自然なほどに熱く、『友達』からの
関係を勧めてくる
だが、アイナの話は一理あるのだ
たしかに婚約者からの始まりだと、カルマさんも
嫌気がさしてしまうかも知れない
それに対して友達から始まれば、自然に婚約者にシフトしていき、長く続けられる関係でいられるかも
知れないのだ
うん!そう考えると友達からも全然悪くないかも?
そう考えたボクは、アイナの手を取り、その意見を採用した事を伝える
「そうだねぇ!それがいいかもぉ!
ボクはカルマさんと友達から始めることにしてみるよぉ!
ありがとねぇ〜、カルマさんに好きになってもらえるように、頑張ってみるよぉ〜」
ボクは感謝を伝えアイナを見たんだけど・・・
なんでだろう?ちょっと複雑そうな表情?
まあ、とりあえずはカルマさまにその事を伝えて
から、お父さんにも手紙で伝えないと!
ボクはその事を考えて、手紙の準備をしようと
していると
「め、メリルはいるか?2人で話したいことがあって
ちょっと来たんだが・・・」
突如扉がガチャっと開き、話の主題であった
カルマさんがボクを探して入ってきたのだ
ボクに話ってなんだろう?
どんな内容なのか疑問に思ったが、聞いてみれば
わかるよね
そうしてボクはカルマさんの話について聞くために
アイナに出て行ってもらい、2人きりの空間を作り出した
ああ、でも僕からもさっきの話を伝えなきゃ!
そうして2人が落ち着いたタイミングでボクは話し始めるのだった・・・
「ごめんなさいメリルさま・・・
私も本気になっちゃったんです・・・」
私はメリルさまの命令によって、部屋から出たのだが・・・
先程の自分の提案について、メリルさまに心の中で
謝罪していた
実際のところ、時間の長さが伴侶を決める決め手になるなどの習慣などは人間界にはない
それでも、私の私情、カルマさまとメリルさまが
婚約されるのは困るからという理由で、それらしい
意見を提案してみたのだ
そして私の目論見通りに、メリルさまはカルマさまとの婚約を諦めてくれた
その事に罪悪感を覚えながらも、どこか喜んでいる
自身の心うちを私は理解していた
「だって・・・、あんな姿を見せられたら
誰だって、好きになっちゃうのです・・・」
私はここにくる前、王城に商談の報告をしに行った際、偶然見かけたカルマさまと国王さまとの会話を
思い出した
今でこそ、国王さまと対面しても、敬意こそ感じるが、畏怖はしないけれど
初めてそのお顔を拝見した際には、体が恐怖で震えて、うまく喋れなかったことを覚えている
しかし、カルマさまはそんな様子は一つも見せずに、あの国王さまと目をしっかり合わせて話し合っていた・・・
物怖じしないその姿勢、自らを曲げないその信念
それらもカルマさまをより好きになった理由の一つだ
しかし、それらよりも何よりも本気になってしまった理由は・・・
「一緒にいることに必要なものなんてない
一緒にいたいと思う、ただそれだけで十分か・・・」
カルマさまはメリルさまと共にいることに理由など
必要ないと言ったのだ
普通は自らの能力やその容姿、地位などで、人は誰しも相手との距離や関係を定義付けてしまう
しかしカルマさまは、そんなものは関係なくて、
自分が相手と一緒にいたい、そんな純粋な気持ちが
あればそれでいいと考えているのだ
平民だとか貴族だとか言って、同じ食事をすることが出来なかったり、そもそもお話をすることも許されない、そんな今の世界の考えにうんざりしていた私には、その言葉をそのまま体現してしまう、カルマさまの存在がとても眩しく見えてしまったのだ
「私もそんな風に生きていけるのかしら?」
私もカルマさまのように、普通に平民の人と会話
や食事をしたり、王族の方々と普通にお話を出来る
日々、そんな風になればどれ程素晴らしいことだろうか?
そしてそんなことになった時には、私もカルマさまにお供して・・・
「どうなさいましたか?アイナさま?」
私が扉の前でボーとしていたのを不審に思ったのか、たまたま通りかかったバローナさんが私に声をかけてきたのだ
「い、いえ少し考え事をしていただけです・・・
私、そろそろ客室にもどりますね?」
私は少し逃げるようにして、自室の客室に戻って
行く
後ろでバローナさんが何か言いたそうだったけれど、申し訳ないとは思うが帰らせてもらう
「はぁ、私もどうしたものかしら」
この後のカルマさまとメリルさまへの接し方に
ついてあれこれ考えながら、私は部屋のベッドに
転がり込むのだった・・・
メリル視点と言いながら、ほとんどなかったような?
まあとりあえず、次話、メリルとの婚約破棄?




