トーラス=アイナという女性
77「トーラス=アイナという女性」
その後俺たちは、あのままではあまりに目立ち過ぎるという話になり、トーラス家の馬車の中でみんなで話をする事になった・・・
なったのだが・・・
「あの・・・お嬢さま、少々彼に近づき過ぎでは
ないのでしょうか?」
女騎士ことバローナがアイナに向かってそう言ったのだが、当のアイナはというと・・・
「はぁ、まさかこんな所であの時の勇者さま
にお会いできるなんて・・・
これは運命と言わざるを得ないですよね?」
といった様子でうっとりした顔で俺の方に
ジィっと熱っぽい視線を向けてくる
かくいう俺はというと・・・
「カルラの1番は私なんだから・・・」
「カルラさま・・・、またなのですか?」
「これがハーレムってものなのね?
あれ?でもこれって私もちゃんと入ってる?」
といった感じで、仲間の女性陣から小声で
圧力?を掛けられていて、ちょっとゲンナリしている
そしてその俺の隣にはアイナ嬢が、ピッタリと引っ付くように座っている
また、そのアイナを心配そうにバローナが見つめているという状況だ
どうしてこうなった?
俺は先程の事件の収束について思い出すのだった・・・
「お会いしたかったです!名も知らぬお方!」
彼女は、何やら見覚えがあるような無いような
少女が、突然俺の胸に飛び込んで来たのだ!
なんだ?なんだ!?
俺は突然の事態に何も出来ず、彼女に押し倒されて
しまう
一生懸命、彼女が誰なのかを俺が考えていると
「お、お嬢さま!?おやめください!
こんな往来でその様な行動は!
ほ、ほら!そこの者たちも早く馬車に
入りなさい!」
俺と戦っていた女騎士、バローナが率先して
俺たちを、後方に留まっていた馬車の中に案内する
そして俺たちは馬車の中に入ったのだが・・・
「うお!広いな!この馬車!
ここに生活できるレベルじゃん」
俺が驚いて声を上げると、バローナがふん!
と言いながらも、律儀に説明してくれる
「それはそうだ、この馬車はユリヤス王国
筆頭領主の一人娘である、トーラス=アイナさま
の馬車なのだ
それくらい広くて当たり前だろう
それで貴様・・・、いやあなたは一体何者
なのだ?
あれ程の剣技、そして先程のお嬢さまの行動・・・
可能な限り教えて貰いたいものだ」
バローナは疑い半分、疑問半分といった顔で
俺に尋ねてくるのだった
しかし俺が答えるよりも先にお嬢さまと言われていた少女が話し出す
「この人は私の命の恩人なの・・・
私が裏路地で賊に捕まりそうになったとき
彼は私の事を、自らの危険を顧みずに助けに来てくれたのよ
そしてお礼をするという言葉を断り、その賊
の一味を追って行ってしまわれたわ・・・
まさに正義の味方、勇者さまのような方だったわ」
という説明を、色々脚色を加えながらしてくれた
のだった
最初は誰かと思ったが、まさかの家探しの途中
裏路地で助けた女の子、町娘がこの子だったとは
俺は完全にただの町娘と思っていたから、この
姿だと全く思い出せなかった
彼女、トーラス=アイナは赤色のフリルがあしらわれた、とても豪華なドレスを着ていたのだ
それではいくらなんでも町娘とは結びつかなかった
のだ
でも彼女はその時の俺のことを覚えていた
というか、すごい捜索、調査していたみたいだ
しかし、名前はおろか、何をしているのかさえ
わからない状態で諦めていた所だったようだ
そしてその相手が奇跡的にまた自分の前に現れた
という事で、冒頭のような、俺にピッタリと引っ付く
ようにしているという訳だ
バローナも最初は本当なのか?と言った顔で
俺の方を見てきていたが、アイナの熱い、それは
もう熱い説明?というか語りによって、その話が
本当であるという事を信じてきたようだ
最初の探るような視線から少し柔らかい視線
に変わってきている
それは嬉しい、嬉しいのだが・・・
「それにしてもその若さであそこまでの剣技
一体どこで誰にあのような技を教わったのだ?
是非ともその事についても話し合いたい」
アイナの事が一通り分かったら今度は
俺のトンデモ剣技パワーについて詳しく聞きたい
と、身を乗り出して俺の方に擦り寄ってきたのだ
うお!結構な谷間が!
そうやって乗り出すバローナの胸の谷間が
色んな意味で凄いことになっていたのだ
質問的にもヤバイし、谷間的にもヤバい!
俺は色んな意味で動揺を隠せないでいると
「こら!バローナ!
このお方は隠れた、影の英雄さま、勇者さま
なのです
ですから、そのように無闇に聞き出そうとしては
いけません!」
なんとそれまで惚気ていたアイナがまさかの
渡り舟を、俺に出してくれたのだった
乗るしかないこの舟に!
俺はそう思ったが、影のとか隠れた英雄とか
いう言葉が気になり尋ねてみると
「えっ?あなたさまは今ユリヤス王国中で
噂になっている、"影の英雄さま"なのでしょう?
その功績を誇らず、その存在自体が謎に包まれて
いるというあの
先程の戦いによって気がついたわ
あなたさまは最初からバローナに勝てたのに、一度も
攻撃を仕掛けて勝とうとはしなかった
それは女性を大切にしようとする"英雄さま"として
の行動なのでしょう?
あれ程までの圧倒的な技量があるにもかかわらず
知らずとはいえ無礼な態度だったバローナを思いやる
その優しさ、そしてその力を誇示しないという謙虚さ
間違いなくあなたさまが"英雄さま"であるという
証拠でしょう」
何やら盛大な誤解があるようだがどうしよう
ここで否定しようものなら、色々都合の悪いこと
まで聞かれてしまうかもしれない
そう思った俺は、曖昧な笑みを浮かべて
肯定も否定もしないという姿勢でいることしか
出来なかったのだった・・・
またしても誤解の連鎖が・・・
カルラではなくカルマ(偽名)が有名に
とりあえず次話で獣の国に到着予定?




