エルフの里と世界樹/ヒメルの名前はどこから?
72「エルフの里と世界樹/ヒメルの名前はどこから?」
その後俺たちは涙を浮かべながらも笑顔でいる
自称女神と話をしていたのだが・・・
「という事はお前には名前がないのか?」
「そうよ、私は何千年も前に生まれたけど
誰からも名前を呼んでもらった事はないもの
みんなから、エルフたちからは"精霊さま"とか
"女神さま"って呼ばれてたもの」
うーん、確かにこいつは黙っていれば
絶世の美女だし、さっきまで頭にあった天使の輪
もあればそれはもう神の使いにでもみえるだろう
しかし名前がないというのも何とも呼びづらい
というわけで俺たちみんなでこいつの名前を
考える事にしたのだ
それで話し合っているのだが・・・
「エンジェルさまというのはどうかしら?
神の使いとしても、とてもいい名前だと
思うのよ」
そんな風にエイダが言い出し
「いえ、それでは只の天使というだけ
になってしまいませんか?
私はちゃんと女神さまとしてビーナスさま
というのがよろしいかと思います!」
といった感じでマリーダが反論するのだった
ていうかこの2人はこいつの事を未だに
女神だと信じてやまないらしい
まあ、それまでそういう風に教えられていた
のだから、いきなり普通の人のように見ろ
と言っても無理な話だろう
それを横で聞いていた自称女神も微妙な顔
をしていた
やはり女神、そう言われる度に距離を感じる
のだろう
そんな彼女を見ていてふと思いつく
「ヒメルってのはどうだ?
響きも良くてカッコいい感じなんだが」
俺がそうみんなに言うと
「いいわね!それ!
ヒメルさまって響き、お姫さまみたいで
いいと思うわ!」
「私もそう思います!ヒメルさまって
呼びやすくてとてもいいと思います!」
といった感じで概ね好意的だ
そして名前をもらう本人はというと・・・
「っ!?おい!どうした?」
俺が女神、ヒメルを見ると収まったはずの涙を
再びポロポロと流していたのだ
なんかこいつに泣かれると調子が狂う
俺は慌ててヒメルに尋ねると
ヒメルは涙声で話し出す
「・・・ぐす、嬉しくて
ちゃんと名前を貰えた、ちゃんと仲間として
見てくれるんだと思ったら嬉しくて・・・」
そう涙声で話すヒメルを見て
マリーダとエイダは2人して顔を見合わせて
「大丈夫よ、ヒメルさん
あなたはちゃんと仲間よ」
「そうですよ、ヒメルちゃん
これからはみんなで頑張って行きましょうね?」
とヒメルの手を握り2人笑い合う
ヒメルも2人と仲良く話し出したので
これで良かったのだと心から思った
そうして俺たちは世界樹を離れ、エルフの里に
みんなで戻るのだった・・・
その後俺たちはエルフの里に戻り、世界樹の
変化について報告していた
そこではヒメルの存在も含めてちゃんと
エルフたちに伝えたのだった
そして俺はずっと疑問に思っていた
エルフたちの昔からの掟について尋ねてみたんだが・・・
「えっ?なにそれ?そんな掟
作ってた記憶ないけど?」
という至ってシンプルな回答が返ってきた
「「「「「は?(え?)」」」」」
俺たちとエルフたちの全ての声が被った
ていうか、掟を作ってないってどういう事だ?
「えっと、お前がエルフはこの森の
動物を殺傷してはいけないって掟を作ったん
じゃないのか?
そのせいで世界樹の問題にエルフたちが
何も出来なかった訳なんだが・・・」
俺が確認のために尋ねてみたところ
ヒメルは少しうーんと考えた後、「あっ!」
と何かを思い出した
そしてヤツはとんでもないことを言い出した
「ああ!そういえば確か何百年か前に
絶滅しそうになってる鳥がいたのよ!
その鳥、私の部屋からよく見てた鳥だった
からその鳥をよく狩っていたエルフに
動物を狩るな!って注意したんだったわ
でも、その時はメンドくさかったから
世界樹から直接エルフたちの頭に伝えたような?」
と悪びれる様子なく、「どうだったかなぁ?」
などと言っている
その時俺は思った、やっぱりこいつの性格
は昔からこんなんだったのだと
そしてエルフたちの
「「「「「それのせいだ(です)!!!」」」」」
というツッコミが一斉にヒメルに炸裂した
のだった
そりゃ声だけが聞こえてそんなことを伝えられ
たら、神さまか女神さまの信託とでも思っちまうわ
しかもその理由が自分の部屋から見てたいから
とは・・・
しかしこの場の空気に気づかないのか
ヒメルは能天気に
「でもあの鳥、渡鳥だったから
そのあとすぐ何処かに行ってしまったのよね
その事もあって、今の今まで忘れてたわ」
と笑い話のように、とんでもない話を話し
出したのだった
俺はとりあえず、エルフの皆さんの気持ちを
代弁して、ヒメルの額に思いっきりお仕置き(デコピン)をかましてやるのだった・・・
ーーーーエルフの里への道中・後方2人ーーーー
俺とエイダは、エルフの里への道中2人で
後ろからヒメルとマリーダの雑談の様子を
微笑ましいものを見る目で見守っていた
そうしていると隣のエイダが俺に尋ねてくる
「そういえばカルラ
ヒメルって名前はどこから取ったものなの?
何かからの繋がりでその名前にしたのでしょう?」
ああ、そういえばそのまま決定になったから
誰にもまだ言ってなかったな
「ああ、それは勿論ある
ヒメルっていつもあんな感じだが、結構
本音は心の中に隠してる、心に秘めてるだろ?
例えば俺に絡んできた時、あの時だってホント
は寂しかっただけなのに、それはあえて伝えず
俺を成長させるためにとか言ってただろ?
ああいう所から、思いを秘める『ヒメル』って
名前を思いついたんだ
あと・・・」
俺はそこまで喋ったタイミングで
前にいるヒメルがマリーダの話を中途半端に
頷いているだけであるという事に気がついた
あいつ隠れて、自分の名前の由来を聞こうと
していたみたいだ
するとエイダは俺が続きを言わないことを
不思議に思ったのか、「続きは?」と催促して
くる
地味に前のヒメルがうんうんと頷いているのが
腹立たしい
「そうだなぁ、あとはユリヤス王国にいる
姫さまと母がちょっと似てないか?
まあ、顔が似てるだけで、頭の方は姫さま
の方が断然賢いんだろうけどな」
俺はテキトウな理由を考えて、それを話すと
前で聞こえてないフリをしていたヒメルが
「聞き捨てならないわ!」と言って、俺に襲い
掛かってくる
まあ、勿論俺はデコピンで応戦したが・・・
まあ実際には、ヒメルの名前はドイツ語から
来ている
ドイツ語でヒメルは神を表す
俺はあの後1人で世界樹の根元に行き
女神さまの力を使って、直接世界樹と話をしたのだ
すると世界樹が言うには
「彼女は、私が世界樹として生まれた時から
私の隣にいた
私が雨の日も風の日も、どんな時でも私の
成長を見守ってきた
彼女は私にとって母のような存在なのだ
だから、彼女に自由を与えてほしい
私はそのために彼女なしでも世界樹としての
成長をコントロール出来るようにしたのだ
もう私は母から旅立つ時だ、そして母も子からな
母の事を母の子としてよろしく頼むぞ」
と伝えられたのだ
世界樹はきっとヒメルの事をずっと心配
していたのだろう
いつでも自分を見守ってくれる存在であるが
そのせいで自分から離れることが出来ない彼女を
だから、俺がまた来る事に合わせて
ヒメルがいなくても大丈夫なように、成長を
自分でコントロール出来るようになるまで頑張って
いたのだろう
俺はその話を聞いて、ヒメルの事を世界樹の母
生命の象徴とも言える世界樹という存在の母
それは本当の神、女神と言えるだろうと思い
あえてドイツ語で神を意味するヒメルという名前
を名付けたのだ
まあ本当の事をヒメルに伝えれば
調子にのるか、世界樹の元、子供の元に
帰ってしまうかも知れないから・・・俺は言わない
何だかんだ言って俺は結構こいつとのやり取りが
気に入っているのだ
そうして俺は今もぎゃあぎゃあ騒ぐヒメルの額にデコピンを1発かますのだった・・・
やはり一筋縄ではいかないヒメルちゃんでした
人が多くなって色々忙しそう
次話、次の街へ?




